地道にコツコツと
道場に着いた朝陽は自分の中に宿っているというシュオンに語りかけるようなイメージで胸に手を当てた。
「まだどうしたらいいのかよく分からないけど…本当に俺の中にシュオンが居るならそれを証明してくれ…頼む。」
_何か用か、人の子よ。
あまりにもあっさり返答が来て朝陽は思わず驚いてしまった。
「うおっ!?え、どこから声が!?」
_はぁ騒がしいのう。
シュオンはため息を付き朝陽の体から外へ出て、朝陽自身の目の前に現れた。
_こうすれば見えるじゃろ。
「え!?出てこれんのかよ!!?って…初めて姿見た…」
シュオンは銀色に輝く長い髪、水色で透き通っている綺麗な目、華奢でしなやかな体をしていた。
触れると消えてしまいそうな危うい気配を纏っていた。
_お主の体に宿っては居るが自由に行動する事も可能だからな
「…」
あまりの美しい姿に朝陽は目を奪われてしまった。
_…聞いておるのか?
シュオンのその一言でハッ!!と我に返った。
「え?あ、そ、そうなのか。」
_証明にはなったか?
「まぁ…うん。こんなの目の前で見ちまえば流石に…嘘だと思う方が難しい気もする…。」
_フッそうであろうな。
シュオンは軽く流すように答えると思い出したように言葉を続けた。
_そんな事より特訓とやらはしなくて良いのか?
「しようにも何したらいいかわかんなくて…」
_そんなの簡単ではないか。強くなれば良い。妖気を自在に操る事が出来るようにまですれば、まぁ上出来じゃろ。
「そんなん言ったってなあ…」
弱気になっている朝陽を目の前にしシュオンはお手本を見せてやる事にしたようだ。
_例えばこういう風にするんじゃ
一言そう言うと腕を胸の前へとのばし手を開き少し体に力を入れた。
その動作と共に妖気であろうモヤを掌サイズにギュッと縮小させた。
_妖気というのは慣れれば操ることは容易い。…爆ぜろ。
最後の「爆ぜろ」と言葉を放つと妖気は軽い爆発音を鳴らし消えた。
「すっげぇ!!!」
朝陽はシュオンにキラキラとした憧れの眼差しを向けた。
_何を言っておる、お主も出来るはずじゃ。やってみるが良い。
「俺にもできるのか!?や、やってみる!」
シュオンがした動作を真似し胸の前へ手を伸ばした。
掌に妖気を集めるイメージを強く念じた。
すると妖気がゆっくりではあったが確かに集まってきた。
「お!お?…む、難しい…んんっ!!!」
強く念じたが妖気は縮小されることはなく、フワフワと散らばってしまった。
「あ、あれ?…なんでだ?もう1回!」
さっきよりは集まった様な気がしたが、それもまた縮小されること無く散らばってしまう。
_まぁ最初はこんなものかもしれぬな。特訓に励め人の子よ。我は少し疲れたから寝る事にする。
シュオンはそれだけ言うと朝陽の体の中へ消えてしまった。
「え!?ちょ、えぇ!?」
朝陽の特訓は地道にコツコツという感じになりそうだ。
又、シュオンとの関係性を上手く築いていく事が出来るだろうか。