脇差 武尊
俺はずっと空を漂っていた。
何をするでもなく、ただひたすらに。
それしか出来ることが無かった。
俺は妖気の一種だった。
それを知ったのは天災抑神社の神主が妖気を操り、妖術を使う事の出来た者が俺を呼び込んだ事が始まりだった。
その時俺が呼び込まれたのは本当に偶然の出来事で…いや、もしかすると必然的だったのかもしれない。
呼び込まれた俺は初めての事に理解出来ず、ただ混乱していた。
俺を呼び込んだ当の本人である神主は心優しい人だった。
「急に呼び込んでしまってすまない。初めての事で驚かせてしまったよな…まずは説明させて欲しい。」
そう言うと色々な事を教えてくれた。
この島の事。
どうして俺達を呼び込んだのか。
俺の他にも似たようなのが居る事。
特別な力がある事。
その力は鍛える事により強くなる事等。
一通り説明を終えた神主は
「勿論…力を貸してほしい気持ちはあるが勝手に呼び込んでしまってその上に、共に戦って欲しいなどと図々しいと思っている…。だが…出来ることならそなた達の力をどうか…どうか貸してほしいと思っている。…どうだろうか…?」
心苦しそうにそう言った。
話を聞いた俺達は無論喜んで力を貸した。
共に戦い勝った時は大いに喜んだ。
厳しい訓練を重ね、武器としての役目を全うし主を支えたあの日々は俺の誇りとなった。
戦いの日々が終わり、島に平和が訪れ皆にこやかに過ごしていた。
だが、そんな日々はずっと続くわけではなかった。
時が経ち俺達を呼び込んだ神主の力がどんどん衰えていった。
衰えていくと同時に武器だった俺達は、1人、また1人と次々と消え武器ではなく妖気に戻ってしまった。
残った最後の武器は俺だけとなった。
「あと…そなたと居れる時間はどのくらいであろうか…。そう長くはないのだろうな…。楽しかったな。」
神主は消え入りそうな声でそう言った。
「そうだな…俺も楽しかった。色んな事沢山教えて貰って、皆で馬鹿して…幸せだったよ。」
俺がそう返すと神主は微笑しながら言った。
「そうか…幸せだったか…良かった。本当に良かった。私も幸せだったよ。最後に…私の願いを聞いてくれるか?」
神主はあまり何かをお願いしてくる人ではなかった。
きっとこれは最初で最後の願いだろうと悟った。
「きっとこの島はまた災いが襲うだろう。その時はまた…力になってくれぬか…?私達の故郷であり、そなた達と共に過ごしたこの島をどうか…守って欲しいのだ。」
今にも泣いてしまいそうな、それでいてどこか愛おしそうな、そして真剣な眼差しで神主は言った。
「なーに、そんな事は言われずとも守るさ。神主の故郷であるこの島は俺たちにとっても故郷みたいなものだ。もしまた災いがこの島を襲うとなったら駆け付ける、いくらでも力を貸してやる。だから…安心しろ。」
そう返すと、良かった…と安心したように言い永遠の眠りについた。
それと同時に俺の力は解けるように崩れ原型を留めることが出来なくなり妖気になってしまった。
あの時の事を今でも確かに覚えている。
何も分からずただ漂っていたあの頃とは違う。
妖気になった俺は島をグルグルと回り見回って過ごしていた。
どのくらいの時が経っただろう、もしかするともう災いは起こらないのかもしれない、そう思い始めていた矢先の事だった。
あの頃のあの神主と同じ気配を感じた。
それは俺にとって嬉しい事であり、それと同時に悪い事を予言しているように思えた。
神主と同じ気配がすると言う事は再びあの災いが起こるということだ。
いてもたってもいられず急いで神社へ向かった。
知らない少年がそこには居た。
神主とは比べ物にならないくらい幼く、力も微量しか感じられない。
俺の思い違いか?と錯覚する程だった。
離れようとしたが特にする事もないので、暫く様子を見る事にしてみた。
その少年はひたすらに力を求めていた。
考え実行しめげずに次へ進む。
その姿にかつての神主の姿が重なった。
神社を軽く回るとその少年が時雨と言う名前だという事を知った。
時雨は一人でひたすらに力を求めているように感じた。
力は確かに徐々に付いているがモタモタしているのがどうにも俺にはもどかしくてつい声掛けてしまった。
時雨は驚きオドオドとしていたが、声が聞こえるという事はきっとまた力になる事が出来るという事だ。
色々な感情が頭を巡ったが、まずは俺を擬人化させてもらわないと話にならない。
時雨に説明しながら何とか擬人化に成功した。
擬人化した俺は脇差だった。
ちょっとパッとしないなぁと思いながらも何だか嬉しかった。
『俺が初めてのお前の相棒だな!』
そう言うと時雨は嬉しそうにしていた。
だが時雨は妖気の事もそうだが妖術の事さえ知らない事が多い様だった。
軽く説明をするとすぐに理解してくれた。
そして俺は【武尊】と言う名前を時雨から貰った。
オドオドしてまだ頼りない時雨だが、きっと俺が力になると心に決めた。
初めまして、この物語を書いているテンマルと申します。
まず初めにこの物語をここまで読んで下さったこと、ありがとうございます!
不定期投稿の為、話を出すのが遅くなってしまいました。
この物語を読んでくださっている方がどのくらい居るのか正直分かりませんが、また定期的に続編を書いていきたいと思っていますのでどうか気長に待っていただけると幸いです。




