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兄弟×鬼  作者: テンマル
10/21

きっとまた

「…母さん……」


とても懐かしい記憶だった。

幸せで楽しかったあの時の夢。

もうあの頃には戻れない…。

皆が揃って笑い合っていた...それなのに...。

それなのに突然...母さんは姿を消した。


まだ幼かった朝陽と時雨。

喧嘩など全くなかった、むしろ家の中は笑い声が絶えないそんな空間だったのだ。

神主である父は朝陽と時雨に向かってしきりに

「母さんは...お前達を捨てて出ていった訳じゃない。愛していた、いや...本当に...本当に愛してるんだ...。」

そう言っていた。

突然居なくなった母さんの事を、きっと何処かに居るんだと呼び続ける時雨。

そんな時雨を抱きしめ涙を堪えていた朝陽。


その晩母さんは行方不明として警察が捜索に出たようだった。


暫くしても居なくなった母さんの事を受け止められず、部屋に引きこもり泣きじゃくる時雨。

父は行方が不明なのか家を出ていったのか正直分からないようだった。

だけど朝陽と時雨に対しずっと

「きっとまた会える、大丈夫、母さんがお前達に向けていた愛は本物だ。」

と言い聞かせるように言っていた。


数日、数ヶ月探したが母さんは見当たらなかった。

目撃情報すら1つも寄せられなかった。

見つかったのはただ1つ、いつも髪に指していた簪の1つだけだった。



「最近はずっと見てなかったのに...今になってどうして母さんの夢を見たんだろう...今頃どこに居て何してるのかな.....母さん...。」

ポツリと朝陽は呟いた。

_雪乃がどうかしたのか?

「ッ!シュオン!?居たのか」

_居たのかとは何じゃ。失礼な奴じゃのう。

シュオンは朝陽の反応に少しムスッとした表情を浮かべた。

「あ、ごめん...。...ん?ゆきの?って?」

_何を言っておる。お主の母の名じゃないか。四季 雪乃。

「...え、母さん...?でも、なんで?...なんで母さんの名前知ってるの?」

_知ってるも何もあやつには我が見えていたからのう。我は声は出せなかったが雪乃はよく話しかけて来よった。そういえば...暫く見ていなかったが...?

「母さんに見えてたのか!?それは知らなかった...。母さんは...もうどれくらいになるかな...確かもう少しで4年になる...行方不明になったんだよ...」

_なんじゃと?あやつが?死んではおらぬのに姿は現さぬのか...。

そのシュオンの一言に朝陽はものすごく反応した。

「え?死んでない?じゃ、じゃあ生きてるのか!?!?何処に!?今何処にいるんだ!?」

_場所までは知らぬ。だがあやつは生きておるはずじゃ。雪乃の生気がまだ神社に残っておるからのう。死んでいるなら生気が消えるはずじゃ。大切に思っている場所には、大切に思っている人間の生気が残るのだ。まあ...ものすごく弱い生気になっておるから...無事とは言えぬ様に思うがな。

「そんな!!でもッ...だけどじゃあなんで...帰って来ないんだよ...。」

_体が物凄く弱って居るのじゃ。生きるか死ぬかの境目にずっと居るようなものだ。...何かに巻き込まれた可能性が高いやもしれんな

「そんな...母さん...」

_死んではおらぬはずじゃ、きっとまた会える!我が言っておるのだ信じよ!

「シュオン...!!そうだよな...きっと会えるよな!」

正直もうこの世に居ないと思っていた母さんが生きている...また会えるかもしれない...そう思うと嬉しくて早くまた会いたくていてもたっても居られない気分に朝陽はなった。

_勿論だ!さあ朝陽特訓を始めるぞ



朝陽はシュオンと共に道場へ向かった。


_まずは腕立て1000回!腹筋1000回!スクワット500回じゃ!

「え!急に!?」

あたふたしながらも言われた通りまずは腕立てをし始めた。

両手を着いて腕立てをする朝陽の横でシュオンは片手を着いて腕立てし始めた。

「1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16...」

朝陽は順調に腕立てをしていたが250回辺りから見て分かる程スピードが落ち始めた。

_スピードは落ちてきておるではないか、最初の内からそんなでは先が思いやられるのう

スピードが落ち腕がプルプルと震えている朝陽を横目に余裕綽々と腕立てをするシュオン。

「お、...俺だって.....ッ!」

何だかんだ300回を超えた所でガクンと力が抜け落ち、バタンと床に倒れ込んだ。

_もう終わりか?...仕方がない、5分休憩して良いぞ。休憩したらまた始めるからな。

「は、はい...」

当たり前かもしれないが体力的にもシュオンにまだまだ届かないと思い知った朝陽だった。

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