019 弊社
『突然のお電話申し訳ございません。先日は弊社主催の大会にご参加いただき、ありがとうございました。重ねまして優勝と全国大会出場おめでとうございます。』
―――弊社主催…?あ、インテグラルってあのインテグラルか!
数学用語ではなく、会社名の方。インテグラル社は、FPSの開発運営を手掛ける巨大企業だ。
「あ、ありがとうございます。」
『今、お時間よろしいでしょうか?』
「はい。」
『突然のお願いで大変恐縮なのですが、弊社の方へお越しいただくことは可能でしょうか?もちろんご都合の良いときで構いませんし、交通費等も弊社で負担させていただきます。』
交通費まで出してもらえるとは、何だか変な申し出だ。何か問題でもあったのだろうか。
「あの…どういったご用件で…?」
『はい。大会でのゲームプレイにつきまして、少しお話をお伺いできればということでして。保護者様とご一緒にご足労いただけるとありがたいのですが…。』
確かに未成年一人を呼び出すわけにもいかないのだろう。
「あ、えっと。両親、共働きでして…。しばらく都合がつかないんです。」
おそらく月単位で予定がつかないと思う。
『左様でございますか…。そうしましたら、弊社から書類をお送りさせていただきますので、そちらにお目通しいただいてもよろしいでしょうか?』
「はい。すみません。」
『とんでもございません。お忙しいところお手数をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。』
「はい。」
『では、失礼いたします。』
何だか背筋が伸びている。こういう電話は緊張するのだ。
「うん?何かあったのかい?」
「おっちゃん。実は今電話があって…かくかくしかじかで…。」
こういうときは相談。俺一人で考えていても、結論は出ないし解決もしない。まさかチートを疑われているとか、そういうわけではないと思うが、あんまり気分の良いものではない。
「なるほど。まあ、何かあったらこのお店に来てもらえば良いんじゃないかい?俺がいるし。」
なんと心強い。とりあえず父に連絡してみよう。母にかけると国際電話になるため、いろいろと大変なのだ。
「ありがとうございます。ひとまず父に連絡してみますね。」
「うん。あ、康ちゃん…じゃなかった、お父さん元気?」
父とおっちゃんは同い年で、小中高と同じ学校に通っていたそう。そんな事情もあって、俺はこのゲームセンターに入り浸る日々を送っているのだ。
「はい。日本中飛び回ってます。」
文字通り、飛び回っている。
「相変わらず忙しそうだな。まあ、無理せんようにって伝えておいてくれ。」
「あはは…ありがとうございます。伝えておきます。」
いずれにせよ、この時間はまだ仕事中のはず。家に帰ってから電話してみよう。




