018 旅費
俊の彼女は藤瀬亜美さんという人。他人行儀な紹介をしてしまったが、亜美は俺のおさななじみ。俊と俺もおさななじみなので、昔から一緒によくあそんだなか。三人のなかで唯一の常識人と言っても良いと思う。そして俊が有名…まあ、お金持ちになっても変わらずに付き合ってくれる数少ない人だ。
お金は人を変える、という言葉があるが、あれはお金は「他人も」変える、が正しいと思う。俊が自分の正体を秘密にし続けているのも、そういった過去が影響している。亜美の存在は、俊のなかでとてつもなく大きいのだ。
「俊は今日、用事があって。…って、FPS入れてくれるんですか!?」
「うん。まあ、結構頑張ったけど、大樹が優勝したんなら、買わないわけにはいかないでしょう。」
とってもありがたい。筐体がいくらするかなんて見当もつかないが、おそらく何十万ではすまないと思う。桁が違うだろう。
「ありがとうございます!頑張ります…ん?頑張る…善処します!」
おっちゃんには申し訳ないのだが、とりあえずゲーム機を入手できたので満足している。もちろん出場するからには勝ちたいし、せっかくFPSゲーム界隈が盛り上がっているので、多少の爪痕は残したいと思っている。
「うん。休みの日でも言ってくれれば開けるから。そうそう、世界大会もあるらしいけど、その時は俺もついていくから!」
「あはは…サーフィンですか?」
おっちゃんのサーフィン好きは、かなりのレベル。お店の利益は旅費に消えていると言っても過言ではないらしい。
「もちろん!」
やっぱり。おっちゃんは高らかにそう宣言した後、通常業務へと戻っていった。
サーフィンの話はさておき、世界大会まで行けたらどうなるのだろう。さすがに想像すらできない。現実的な問題として言語の壁が立ちふさがるとは思うが、ゲームは国境をこえる。そう、信じてる。
―――あ…電話だ。…誰だろう?
見たこともない電話番号だ。固定電話っぽい番号だが、知らない番号からの電話は少し怖い。
―――ん…。結構なってるな…。
電話というのは不思議なもので、とらないと変な罪悪感が襲ってくる。加えて父や母に何かあったのでは…という不安感も襲ってくる。
―――とるか…。ま、ヤバそうな電話なら、切れば良いし。
「もしもし。」
『お忙しいところすみません。私、インテグラル広報の坂崎と申します。香坂大樹様のお電話でお間違いないでしょうか?』
―――インテグラル…?父さんの会社じゃないよな。
「はい。本人です。」




