8/27「昔のことを、夢に見ていた」
ジョン・レノン「Jealous Guy」を思い出す。
ピアノの音が柔らかすぎると思っていた。6度の音が変だなと思っていた。
改めて思い出すと、彼の曲はみんなどこか変だった。
彼自身がそういう、誰も聴いたことのない響きの音楽を作ることに執心していて、なぜかそれを創り出す技量をもっていたからだと思う。
愛と平和の人だとか、狂気の天才だとかの評価は彼の人となりにかすりもしていない。
それはかまぼこ板にマジックで書いたたたき文句のようなものだ。
生い立ちの不幸もあるがそれだけではなく、彼自身の中からこぼれ出すものがあり、誰にも説明できないと本人はわかっていて、その苛立ちを吐き出していた。
少なくとも音の中にその片鱗を示すことができただけでも奇跡のようなものだ。
それを天才というのなら、それはそうだろうと思う。
私は長年ジョンの曲を聴いていて、そこらへんのことは理解しているつもりだったが、「Nobody Loves You」のギター一本のデモを聴いた時、いくつか感想が追加された。
この悲痛な叫びみたいな曲を、一幕もののドラマとして最初からほぼ完成させていて、あとはわざとハリウッド風の大仰なアレンジをかぶせて内容を際立たせるだけだ。
たしかに苦悩する人ではあったが、それを演出するプロでもあった自分への、ゼツボー(笑)みたいな感覚。
若い世代はネットでビートルズを聴いて「どこがすごいんですか」などと言う。
時系列関係なしに聴いているから「音が悪い」「テクニックは大したことない」という感想になるのは無理ないのか。
ラジオでビートルズを耳にしたり「Please Please Me」の低いパートを歌ってみたりする楽しさを理解することがないのはかわいそうな気もする。
それは年寄りの繰り言で、知らなければ悔やむこともないだろう。
昔の人たちも「お前らはロックなんか夢中になって勿体ない、ビング・クロスビーもナット・キング・コールも知らないで」とか考えていたに違いない。
節操がないと言われても、いまはベートーベンからグレン・ミラー、エルヴィスからツェッペリンまで何でも、聴こうと思えば聴けるのは幸せといえなくもない。




