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鋼鉄の獣と、砕かれた固定

「ここが先頭車両……!」


 次々と襲い来るドローンを撃ち落とし、俺たちはついに列車の最前部、動力室を兼ねた指揮車両へと辿り着いた。  分厚い装甲扉をアリアが炎の斬撃で焼き切り、蹴り破る。


「お邪魔するわよ!」


 中に踏み込んだ俺たちは、その異様な光景に息を呑んだ。


 そこは、無数のモニターと計器が並ぶ制御室だったが、中央に鎮座していたのは椅子ではなかった。  天井まで届きそうなほど巨大な、培養カプセルだ。  そして、そのカプセルを内側から食い破るようにして、一人の巨漢が立っていた。


「……遅かったな、オリジナル」


 男が振り返る。  身長は二メートル半を超えているだろう。丸太のような腕、盛り上がった筋肉。  だが、その体の半分以上は、黒光りする機械に置き換わっていた。  右腕は巨大なパイルバンカー、左目は埋め込まれた三つの赤いセンサーアイ。口元には拘束具のようなマスクが嵌められている。


「貴様が……No.08(エイト)か」  俺は警戒を強め、前に出た。  No.13が「魔法使い」タイプだったなら、こいつは間違いなく「戦士」タイプだ。それも、理性を犠牲にして力を求めた化け物だ。


「そうだ。俺は13号のような出来損ないとは違う」


 エイトが低く唸るような声で言う。 「あいつは空間魔法の適性を求めて作られたが……俺に与えられたのは『肉体』の最適化だ。始祖の細胞が持つ無限の再生力と、帝国の機械技術、そして『虚無』による身体強化ブースト。これこそが最強の兵士だ」


 ブォンッ!  エイトが軽く腕を振るっただけで、その風圧が俺たちの頬を叩く。


「理屈はいい。列車を止めろ」  俺は『王家の鍵』を構えた。「さもなくば、力ずくで止める」


「ククク……止めてみろよ。俺ごと粉砕してな!」


 ドォンッ!!


 床を蹴る音と同時に、エイトの姿が消えた。  いや、速すぎて消えたように見えただけだ。巨体に似合わない爆発的な加速で、一瞬にして俺の目の前に肉薄していた。


「速いッ!?」  アリアが反応できない。


「『空間固定』――三重障壁トリプル・シールド!」


 俺はとっさに、自分の前に三枚の空間の壁を展開した。  戦車の砲撃すら防ぐ絶対防御だ。


 だが、エイトは止まらなかった。  右腕のパイルバンカーが唸りを上げ、赤黒いスパークを纏って突き出される。


「『重撃・空間粉砕グラビティ・ブレイク』ォォォッ!」


 パァァァァンッ!!


 耳をつんざく破砕音が響いた。  俺の目の前で、一枚目の障壁がガラスのように砕け散った。  続いて二枚目、三枚目も――。


「な、空間固定を……力技で割った!?」


 俺は驚愕しつつも、バックステップで衝撃を殺す。  防御を破られた余波だけで、俺の体は後方の壁まで吹き飛ばされた。


「ぐっ……!」 「レン!」


「ハハハハ! どうだ! 空間を固定しようが、それを上回るエネルギーで叩けば割れる! 単純な物理だ!」


 エイトが哄笑こうしょうしながら迫ってくる。  確かに理論上はそうだ。俺の『固定』には魔力による強度限界がある。それを超える質量と運動エネルギーを一点に集中されれば、耐えきれない。  No.13が空間ごと切断するテクニックタイプなら、こいつは空間ごと叩き割るパワータイプだ。


「アリア、ミリス! 正面からやり合うな! あいつの右腕、触れたら即死だぞ!」


「わかってるわよ! でも、狭すぎて避けきれない!」  アリアが炎の斬撃を放つが、エイトは左腕の装甲でそれを弾き飛ばす。


「……ん。凍らせて動きを止める」  ミリスが床を凍結させるが、エイトは足裏からスパイクを出し、氷を砕きながら突進してくる。


「無駄だ無駄だぁ! 俺の装甲はあらゆる魔法を拡散させる!」


 エイトが暴れるたびに、制御室の機材が破壊され、火花が散る。  このままでは列車が脱線するか、動力炉が爆発するのも時間の問題だ。


「チッ、なら外でやるか!」


 俺はエイトの攻撃を紙一重でかわし、制御室の天井を見上げた。


「『空間固定』――アンカー射出!」


 俺はエイトの足元に見えないフックを引っかけ、その反対側を天井のハッチに繋いだ。  そして、固定を一気に収縮させる。


「ぬおっ!?」  足元をすくわれたエイトが浮き上がる。


「アリア! 天井をぶち抜け!」 「了解! 『爆炎昇竜ライジング・フレア』!」


 アリアが上段へ斬り上げると、炎の渦が天井装甲を溶断し、大穴を開けた。  俺はその穴へ向かって、エイトごと自分たちの体を『重力反転』で放り出した。


 ゴォォォォォォッ!!


 凄まじい風切り音。  俺たちが飛び出したのは、時速数百キロで疾走する列車の屋根の上だった。  足場は悪いし、風圧で立っているのもやっとだ。だが、ここなら障害物はない。


「いい度胸だ、オリジナル! この暴風の中なら、貴様の細い体など吹き飛ぶだけだぞ!」  エイトが屋根に爪を食い込ませて着地し、獣のように吠える。


「あいにくだが」  俺は涼しい顔で、屋根の上に仁王立ちした。  足裏を完全に『固定』しているため、どんな暴風でも1ミリも動かない。


「足場の悪さなら、俺の方が有利でね」


 暴走列車の屋根の上。  落ちれば即死のデスマッチが幕を開ける。

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