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固定スキル『固定』はゴミだと言われたが、敵をその場に固定してタコ殴りにできると気づいた件 〜追放された荷物持ちは、物理法則を無視して最強へ至る〜  作者: 冷やし中華はじめました
王都防衛戦(スタンピード編)

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Sランク昇格試験!?

 王都へ戻った『銀翼』を待っていたのは、割れんばかりの歓声と、ギルド本部からの緊急呼び出しだった。


 冒険者ギルド本部、最上階。  普段はSランク冒険者しか立ち入ることが許されない特別応接室に、レンたちの姿はあった。


「……単刀直入に言おう。君たちをCランクに留めておくことは、もはや不可能だ」


 重厚なデスクの向こうで、白髪の老紳士――王都ギルドを統括する総ギルドマスター、オルガンが告げた。


「スタンピードの鎮圧、国家反逆者ボルットンの討伐、そして古代遺跡での魔神討滅……。これらは本来、国家戦力レベルで対応すべき事案だ。それをたった一パーティで成し遂げた功績は計り知れない」


 オルガンは手元の書類に目を落とし、眼鏡の位置を直した。


「よって、当ギルドは『銀翼』に対し、Bランク及びAランクを飛び越え……『Sランク』への特例昇格を提案する」


「えっ……Sランク!?」


 アリアが素っ頓狂な声を上げた。  ミリスも口をパクパクさせている。  Sランク。それは冒険者数万人の頂点に立つ存在であり、国一つを単独で救える実力者にしか与えられない称号だ。現在、この国には数名しかいないと言われている。


「い、いいんですか? 俺たち、まだCランクになったばかりですよ?」 「形式上のランクなど意味はない。実力が伴っているかが全てだ。……ただし」


 オルガンの目が鋭く光った。


「Sランクはギルドの顔であり、最高戦力だ。その実力を客観的に証明する必要がある。……規定により、現役Sランク冒険者との模擬戦を行い、その『承認』を得なければならない」


 つまり、昇格試験だ。  レンは静かに頷いた。


「わかりました。相手はどなたですか?」 「俺だよ、坊主」


 聞き覚えのある、しわがれた声。  応接室の扉が乱暴に開かれ、ボロボロのローブを羽織った男が入ってきた。  右袖が空虚に揺れている、『隻腕の剣鬼』ギルバートだ。


「ギルバートさん……!」 「よう。遺跡じゃいいもん見せてもらったが……試験となれば話は別だ。手加減はしねえぞ?」


 ギルバートはニヤリと笑い、腰に差した錆びた鉄剣をポンと叩いた。


「試験内容はシンプルだ。俺と戦い、その実力を認めさせること。制限時間は10分。……死ぬ気で来いよ?」


 ◇


 場所を移して、ギルド地下の大闘技場。  観客席には、噂を聞きつけた高ランク冒険者や、騎士団のエリスたちまでもが詰めかけていた。  注目度は最大級だ。


 闘技場の中央。  レン、アリア、ミリスの三人は武器を構え、ギルバートと対峙した。


「へっ、まさかあの『剣鬼』とやれるなんてな……。武者震いが止まらねえよ」 「あの方の魔力……底が見えません。でも、負けません!」


 アリアとミリスの士気は高い。  レンも新装備『夜魔のローブ』の調子を確認し、前に出た。


「よろしくお願いします」 「ああ。……っと、その前に」


 ギルバートは不敵な笑みを浮かべ、小声でレンにだけ聞こえるように囁いた。


「この試験に合格したら、とっておきの情報を教えてやる」 「情報?」 「お前のその『異常なスキル』……そして、お前が探しているかもしれない『出生の秘密』についてだ」


 レンの目が見開かれる。  出生の秘密。孤児だった自分には関係ないと思っていた言葉。だが、ギルバートは何かを知っている?


「気になんだろ? だったら――力ずくで聞き出してみな!」


 ドォォォンッ!!


 開始の合図すらなく、ギルバートが地面を蹴った。  速い。  隻腕とは思えないバランス感覚で、瞬く間に間合いを詰めてくる。


「アリア、前衛! ミリスは撹乱!」 「おうッ!」


 アリアが魔剣『天覇』を振り下ろす。  ギルバートはそれを錆びた鉄剣で受け流す――いや、受け流さない。  刀身の腹に剣を当て、アリアの力のベクトルをそのまま利用して投げ飛ばした。


「うおっ!?」 「力が入りすぎだ。剣は腕で振るんじゃねえ、腰で振れ」


 空中で体勢を立て直すアリア。  そこへミリスの炎弾が飛来するが、ギルバートは視線すら向けずに首を傾けて回避した。


「狙いが正直すぎる。殺気でバレバレだ」


 圧倒的だった。  ステータスや装備の性能ではない。経験値と技術の差が、絶望的なほどにある。  これが、Sランク。


「……なら、これはどうですか!」


 レンが指を鳴らす。  ギルバートの周囲の空間を『固定』し、動きを封じようとする。  だが。


「甘い」


 ギルバートは、空間が固定される「予備動作」を読んでいたかのように、固定される直前に範囲外へとステップを踏んでいた。


「お前のスキルは強力だが、発動の瞬間に『視線』と『意識』が向く。そこを読めば当たらねえよ」 「……化け物め」


 レンは冷や汗を流しながらも、口元を緩めた。  楽しい。  ボルットンのような力任せの暴力ではない。研ぎ澄まされた技術との戦い。  これこそが、求めていた強さの壁だ。


「アリア、ミリス。……作戦『デルタ』で行くぞ」 「りょーかい!」 「はいッ!」


 『銀翼』の三人が散開する。  ただの力押しは通じない。ならば、連携と知略で超えるまでだ。  最強の試験官を相手に、Sランクへの挑戦が始まった。

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