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固定スキル『固定』はゴミだと言われたが、敵をその場に固定してタコ殴りにできると気づいた件 〜追放された荷物持ちは、物理法則を無視して最強へ至る〜  作者: 冷やし中華はじめました
王都防衛戦(スタンピード編)

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攻略不能の鎧

 ガギィィィィィンッ!!


 夜明け前の戦場に、硬質な金属音が幾度となく響き渡る。  アリアが神速の踏み込みから放った三連撃が、デュラハンの黒い鎧を捉えた。  だが、結果は同じ。


「くそっ! なんだこいつの体は!?」


 アリアが弾かれた反動で後退する。  レンの『固定』によって剣は折れない。しかし、斬れないのだ。  刃が鎧に触れた瞬間、まるで泥沼に打ち込んだように威力が吸われ、表面を滑ってしまう。


「無駄だと言ったはずだ」


 デュラハンが大剣を横に薙ぐ。  アリアはブリッジのような体勢でギリギリ回避するが、衝撃波だけで吹き飛ばされ、地面を転がった。


「アリアさん! ……『フレア・キャノン』!」


 隙を作らせまいと、ミリスが最大出力の炎弾を放つ。  直撃。  だが、デュラハンは身じろぎ一つしない。炎は鎧の表面で不可解な軌道を描いて拡散し、霧散してしまった。


「蚊ほども効かぬな」 「う、嘘……」


 ミリスが杖を抱えて震える。  物理も魔法も無効。文字通りの「無敵」だ。


(……おかしい)


 レンは前線で盾を展開しながら、デュラハンの鎧を凝視していた。  いかにミスリル製の鎧とはいえ、アリアの怪力とミリスの爆撃を受ければ、凹んだり焼け焦げたりするはずだ。  だが、デュラハンの鎧は新品同様の光沢を放っている。


(衝撃を弾いているんじゃない。……逃がしている?)


 レンは検証のため、一本の鉄杭を全力で投擲した。  杭はデュラハンの胸板に命中した瞬間、勢いを完全に殺され、ポトリと真下に落ちた。  その時、レンは見た。  着弾点から、紫色の波紋のような光が鎧全体へ走り、地面へと抜けていくのを。


「……なるほど。そういうことか」


 レンの口元が微かに緩む。カラクリは解けた。


「レン! 呑気に見てる場合か! 次のが来るぞ!」


 アリアが叫ぶ。デュラハンが「遊びは終わりだ」と言わんばかりに大剣を上段に構え、莫大な魔力を溜め始めていた。  あの一撃が放たれれば、今度こそ城門ごと街が消し飛ぶ。


「アリア、ミリス。聞いてくれ」


 レンは冷静な声で指示を飛ばした。


「奴の鎧はただ硬いだけじゃない。表面に『衝撃分散の結界』を張っているんだ。受けたエネルギーを鎧全体に流動させ、地面へ逃がしている」 「流動……? よくわからねえよ!」 「つまり、水の上に石を叩きつけているようなものだ。……だから、『凍らせて』しまえばいい」


 レンは懐から一本の、特別な杭――ミスリルコーティングされた大杭を取り出した。


「僕が奴に触れて、その結界の『流動』を固定ロックする。そうすれば、ただの脆い金属の塊になるはずだ」 「触れるって……あいつの剣の間合いに入り込む気か? 自殺行為だぞ!」 「だから、君たちの協力が必要なんだ」


 レンは二人に短い作戦を伝えた。  失敗すれば死ぬ。だが、二人の返答に迷いはなかった。


「……わかった。信じるぜ、相棒!」 「私も! レンさんに賭けます!」


「行くぞッ!!」


 アリアが正面から突っ込んだ。  デュラハンの注意が彼女に向く。


「愚かな。何度来ようと――」


 デュラハンが大剣を振り下ろそうとした瞬間、視界が真っ白に染まった。  ミリスの閃光魔法フラッシュだ。


「ヌゥッ!?」


 一瞬の隙。  その盲点となる死角から、アリアが捨て身のタックルを敢行した。  剣ではない。体ごとぶつかり、デュラハンの盾の腕を強引に押さえ込む。


「今だぁぁぁッ!!」 「もらったッ!!」


 レンが飛び出した。  アリアが作ったわずかな隙間を縫い、デュラハンの懐へ潜り込む。  黒い鎧が目の前にある。  表面には、ドス黒い魔力が流動しているのが見える。


 レンは右手を、デュラハンの胸当てに直接叩きつけた。


「その守り、止めさせてもらう――」


 イメージするのは、流れる水を一瞬で氷に変える感覚。  循環するエネルギーの座標を、その場に縫い付ける!


「――『魔力流動・完全固定マナ・フリーズ』!!」


 バヂヂヂヂッ!!


 嫌な音がして、デュラハンの鎧を覆っていた紫色の波紋が、ガラスのようにビキビキと固まり、そしてヒビが入った。


「な……ッ!? 馬鹿な、我が結界が……停止しただと!?」


 デュラハンの驚愕の声。  衝撃を逃がす「流れ」を止められた今、その鎧はただの重たい鉄屑だ。


 レンはバックステップで距離を取り、ニカっと笑った。


「さあアリア、ミリス! もう小細工は通じない! 思いっきりぶっ叩いてやれ!!」

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