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固定スキル『固定』はゴミだと言われたが、敵をその場に固定してタコ殴りにできると気づいた件 〜追放された荷物持ちは、物理法則を無視して最強へ至る〜  作者: 冷やし中華はじめました
王都防衛戦(スタンピード編)

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休息なき防衛戦

 戦闘開始から、すでに4時間が経過していた。  東の空が白み始めているが、魔物の波は途切れる気配がない。  第一波を凌いだ興奮は去り、防衛線には重苦しい疲労と、物資不足という現実的な絶望が漂い始めていた。


「くそっ、剣が折れた! 予備の武器はないか!?」 「矢が尽きたぞ! 補給部隊はまだか!」 「盾がもう保たない……!」


 衛兵たちの悲鳴があちこちから上がる。  魔物の死体は山のように積み上がっているが、それを斬り続けた武器もまた、限界を迎えていたのだ。  刃こぼれし、曲がり、砕ける鉄塊。武器を失った兵士は、ただの肉壁に過ぎない。


「隊長! 第3小隊、武器破損により後退します!」 「馬鹿野郎、今引いたらそこから突破されるぞ! 石でも何でも投げて食い止めろ!」


 衛兵隊長が怒号を飛ばすが、状況はジリ貧だ。  前線が崩壊しかけた、その時だった。


「――下がらないでいい。その場で武器を後ろに投げて」


 戦場を駆け回っていたレンが、小隊の元へ滑り込んできた。


「レ、レン殿!? しかし武器が……」 「僕が直す。5秒で」


 レンは兵士から折れた槍を受け取ると、折れた断面同士を強引に合わせた。  鍛冶場もハンマーもない。  あるのは、物理法則への干渉力だけだ。


「――『状態固定・修復リペア』」


 カィィン!


 硬質な音と共に、槍が青白い光を帯びる。  光が収まると、折れていたはずの槍は、継ぎ目一つなく一本の鋼に戻っていた。  それどころか、刃こぼれしていた穂先まで鋭さを取り戻している。


「は……?」 「はい、次。そのひしゃげた盾」 「あ、はい!」


 レンは次々と兵士たちの装備に触れていく。  曲がった剣は真っ直ぐに。割れた盾は一枚岩に。  本来なら修理に数日かかる破損が、レンが触れるだけで「新品以上の強度」を持って蘇っていく。


「す、すげえ……! 俺の剣が蘇った!」 「前より軽くて硬くなってるぞ!」 「これならまだ戦える!」


 兵士たちの目に、再び闘志の火が灯る。  だが、レンの仕事はそれだけではなかった。


 ドゴォォォォンッ!!


 少し離れた城壁に、トロールが投げた巨大な岩塊が直撃した。  石積みの壁が崩れ、魔物が侵入するための大穴が空く。


「しまっ、壁が崩された! 侵入されるぞ!!」 「アリア、あそこを塞いで! 時間を稼げ!」 「任せろ! 雑魚ども、通さんぞ!」


 アリアが穴の前に立ち塞がり、魔物を斬り伏せる間に、レンが崩れた瓦礫の山に向かって両手をかざした。


「元に戻れ――『座標回帰・固定』」


 ズズズズズ……ッ!


 信じられない光景だった。  崩れ落ちたはずの石材が、まるで時間を巻き戻したかのように空中に舞い上がり、元の穴へと吸い込まれていく。  ガチッ、ガチッ、とパズルのように組み合わさり、数秒後には「崩れる前よりも強固に固定された城壁」が再生していた。


「な……城壁まで直しやがった……」 「あいつ、一人で工兵部隊全部の仕事をしてやがる……」


 衛兵隊長は、呆然と口を開けていた。  戦場において、補給と修復は生命線だ。それを、この少年はたった一人で、しかも戦闘の片手間にやってのけている。  もはや英雄などという言葉では足りない。  あれは、戦場を管理する「システム」そのものだ。


「壁は塞ぎました! アリア、ミリス、一旦下がって水を飲んで!」 「おう! サンキュー!」 「ぷはぁっ、生き返りますぅ!」


 レンは仲間のケアをしつつ、全軍に指示を飛ばす。


「負傷者は僕のところへ! 傷口を『固定』して止血します! 武器が壊れた者は投げ渡してください! ……この戦線は、絶対に崩させない!」


 その姿に、兵士たちは戦慄と、そして熱狂的な信頼を寄せた。  この少年がいる限り、我々の剣は折れない。壁は崩れない。  無限の持久戦。  魔物たちにとって、これほど絶望的な相手はいなかっただろう。


 しかし。  そんなレンの奮闘をあざ笑うかのように、森の最奥から、これまでの雑魚とは桁違いの、禍々しい魔力が膨れ上がった。


「……なんだ、この寒気は」


 レンが手を止め、闇の奥を睨む。  夜明け前の最も暗い時間。  魔物の群れが、恐れるように左右に割れて道を作る。  そこから現れたのは、スタンピードを率いる「将軍」級の個体だった。

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