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固定スキル『固定』はゴミだと言われたが、敵をその場に固定してタコ殴りにできると気づいた件 〜追放された荷物持ちは、物理法則を無視して最強へ至る〜  作者: 冷やし中華はじめました
はぐれ者たちのパーティ結成

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昇格試験の通達

 キメラ討伐から数日。  レンの生活は劇的に変化していた。


 宿は『ひだまり亭』のままだが、部屋は一番広い個室に移った。  装備は全身を『飛竜の革鎧』シリーズで統一し、腰には大量の鉄杭(特注品)と、予備のショートソード。  リュックの中には、常に最高級のハイ・ポーションが常備されている。


「……金があるって、素晴らしいな」


 レンは新しいブーツの紐を『固定』で結びながら、しみじみと呟いた。  かつて銅貨一枚に泣いていた日々が嘘のようだ。  準備を整え、いつものようにギルドへ向かう。


 ギルドの扉を開けると、朝の喧騒が一瞬だけ静まり、すぐに「おはよう、レン!」「今日はどこへ行くんだ?」と親しげな声が飛んでくる。  レンは愛想よく手を振り返し、受付カウンターへ向かった。


「おはようございます、ルナさん」 「あ、レン君。おはよう……って、ちょうどよかったわ」


 ルナは笑顔で迎えてくれたが、その表情には少しだけ申し訳無さそうな色が混じっていた。


「ギルドマスターがお呼びよ。奥の部屋へ通してって」 「マスターが? また何か厄介事ですか?」 「ふふ、ある意味ではそうかもね」


 嫌な予感を抱きつつ、レンはマスター室の扉を叩いた。


 ◇


「来たか、レン。座れ」


 部屋の中では、ギルドマスターのグスタフが書類の山と格闘していた。  彼はレンを見ると、ペンを置いて重々しく口を開いた。


「単刀直入に言おう。お前の『Dランク昇格』の手続きについてだ」


 先日、飛び級での昇格を内定された件だ。


「何か問題でも? 手続きなら済ませたはずですが」 「ああ。だが、ギルド本部からチャチャが入ってな。『Fランクの期間が短すぎる』『実力は認めるが、協調性に欠ける懸念がある』だとさ」


 グスタフは不機嫌そうに鼻を鳴らした。  冒険者ギルドは組織だ。個人の武力がどれほど高くても、組織の規律を乱す危険分子を簡単には上位に上げられないという理屈はわかる。


「そこでだ。お前には『特別昇格試験』を受けてもらうことになった」 「試験、ですか」 「内容は『指定ダンジョンの攻略』だ。場所は街の東にある『試練の塔』。期限は一週間以内」


 試練の塔。Cランク昇格試験にも使われる、中級者向けのダンジョンだ。  今のレンの実力なら、ソロでも踏破は難しくない。


「わかりました。今日にでも行ってきます」 「待て、早まるな。……問題は『条件』だ」


 グスタフは意地悪そうにニヤリと笑い、一本の指を立てた。


「今回の試験は『パーティでの攻略』が必須条件だ。最低3名以上のパーティを組み、連携してクリアすること。……ソロは禁止だ」


「……は?」


 レンは動きを止めた。


「パ、パーティですか? 僕が?」 「そうだ。今後、CランクやBランクになれば、大規模な作戦で部隊を指揮することもある。個人の強さだけでなく、他人と連携できるかどうかが問われるんだよ」 「いや、でも……」


 レンは頭を抱えた。  今のレンは「ソロで戦うスタイル」を確立してしまっている。  それに、かつての『暁の牙』でのトラウマもあり、誰かと組むことには抵抗があった。


「即席のパーティでも構わん。とにかく『誰かと協力して成果を出す』ところを見せろ。それができなきゃ、昇格は取り消しだ」 「……わかりましたよ」


 断ればFランクに逆戻りだ。レンは渋々承諾し、部屋を出た。


 ◇


 ロビーに戻ったレンは、掲示板の前で大きなため息をついた。


「パーティ募集、か……」


 掲示板には無数の募集依頼が貼られている。  だが、その大半は「初心者歓迎!」「和気あいあいとしたサークルです」といった緩いものか、「ベテラン募集、Eランク以下お断り」といった条件の厳しいものばかり。


 それに、レンは今や「有名人」だ。  下手に募集をかければ、レンの名声や金目当ての有象無象が寄ってくるだろう。かといって、既存の強豪パーティに入れば、レンの特殊な戦い方を理解してもらうのに時間がかかる。


「困ったな。誰か、ちょうどいい『訳あり』で、そこそこ実力があるフリーの人はいないかな……」


 そんな都合のいい人材がいるわけがない。  レンが頭を悩ませていると、背後からルナが声をかけてきた。


「レン君、難航してるみたいね」 「ルナさん……。誰か紹介してくれませんか? 一時的なメンバーでいいんです」 「うーん……」


 ルナは指を顎に当てて考え込み、何かを思い出したようにポンと手を打った。


「そういえば、実力はあるのに、どこのパーティからも敬遠されている『問題児あまりもの』たちが何人かいたわね」 「問題児?」 「ええ。個人の能力は凄まじいんだけど、クセが強すぎて……。もしかしたら、レン君なら御せるかもしれないわ」


 ルナが苦笑いしながら指差した先。  酒場の片隅に、周囲から不自然に距離を置かれているテーブルが二つあった。


 一つには、山のような剣の残骸を積み上げている、不機嫌そうな銀髪の少女。  もう一つには、杖を抱いて震えている、小動物のような少女。


「……あれが、候補者ですか?」


 レンの頬が引きつる。  直感が告げていた。あれは、関わると面倒なことになるタイプだ、と。  だが、選り好みしている時間はない。


「……話だけでも、聞いてみますか」


 レンは覚悟を決めて、まずは「剣の残骸」の山へと足を向けた。  これが、後に世界最強と呼ばれるパーティの、前途多難な第一歩だった。

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