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共闘の拒絶

出発までの一時間、レンはギルドの裏手にある広場で、最終調整を行っていた。  購入した大量の「鉄杭」を腰のホルダーやリュックの取り出しやすい位置に配置し、靴紐を『固定』で解けないように固める。


「……よし。準備完了だ」


 立ち上がろうとした、その時だった。


「よう、レン。精が出るな」


 背後から、聞き覚えのある――そして、二度と聞きたくなかった声がした。  振り返ると、そこにはゲイルを筆頭とした元『暁の牙』の4人が立っていた。  最後に会った時よりも装備は汚れ、頬はこけ、見るからに生活に困窮している様子だ。


「……何の用ですか?」


 レンは表情を消して尋ねた。  ゲイルは卑屈な笑みを浮かべながら、馴れ馴れしく近づいてくる。


「いやな、今回の緊急クエスト。俺たちも参加することにしたんだよ。金貨100枚の山分けだ、Fランクの俺たちにもチャンスがある」 「そうですか。頑張ってください。死なない程度に」


 レンが背を向けて立ち去ろうとすると、ゲイルが慌てて回り込んできた。


「ま、待てよ! 話はここからだ。……なあレン、俺たちと組まないか?」


 レンは足を止め、信じられないものを見る目でゲイルを見た。


「……はい?」 「俺たちは昔のよしみだ、連携もバッチリだろ? お前は後衛で強力なスキルを使えるが、前衛がいない。俺たちがタンクになってお前を守ってやるよ。どうだ、悪くない話だろ?」


 ゲイルは「これでお前も助かるはずだ」と言わんばかりの顔をしている。  だが、その目の奥にある打算は透けて見えた。  彼らは自分たちだけでキメラと戦う度胸はない。だから、実力者となったレンの腰巾着になって安全圏から攻撃し、報酬の配分だけちゃっかり貰おうとしているのだ。


「……『守ってやる』ですか」


 レンは鼻で笑った。


「レッドベアの時も、そう言って僕を囮にした人が、よく言えますね」 「だ、だから! あれは緊急避難的な判断で……今は反省してる! これからは対等なパートナーとして――」 「お断りです」


 レンは冷たく言い放った。


「勘違いしないでください。僕がソロで動いているのは、誰も組んでくれないからじゃない。今のあなたたちと組むくらいなら、一人のほうが『安全』だからです」


「なっ……!?」


 ゲイルの顔が赤くなる。  レンは畳み掛けるように、残酷な事実を突きつけた。


「相手は『鎧砕きのキメラ』です。あなたたちのボロボロの装備じゃ、一撃で即死する。……正直に言いますよ。あなたたちは、足手まとい(デッド・ウェイト)です」


「き、貴様ッ……! 下手に出れば調子に乗りやがって!」


 逆上したゲイルが怒鳴り散らすが、レンの目は氷のように冷たかった。


「ついて来ないでください。僕の邪魔をするなら、キメラより先に僕があなたたちを『固定』しますよ?」


 その言葉には、冗談ではない殺気が込められていた。  かつて酒場で床に這いつくばらされた記憶が蘇ったのか、ゲイルたちは「ヒッ」と息を呑んで後ずさりした。


「行こう」


 レンは彼らを置き去りにし、空中に見えない足場を作ると、タンッ! と高く跳躍した。  そのまま屋根の上を走り、驚く冒険者たちの頭上を越えて、街の北門へと一直線に向かう。


「は、速い……!」 「あいつ、空を飛んでやがるのか!?」


 地べたを這う元仲間たちを見下ろしながら、レンは戦場へと急いだ。  もう、過去の亡霊に構っている暇はない。  前方に見える街道の彼方からは、どす黒い噴煙と、禍々しい魔力が立ち上っていた。

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