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初仕事はゴブリン退治

 Fランク冒険者としての最初の仕事。  レンが選んだのは、ギルドの掲示板で最もありふれた依頼――『平原のゴブリン討伐』だった。


「地味だけど、スキルの検証にはちょうどいい相手だ」


 街から少し離れた草原地帯。  そこには、子供くらいの背丈をした緑色の小鬼、ゴブリンの群れがたむろしていた。その数、およそ五匹。  それぞれが錆びた剣や棍棒を持ち、獲物を探してキョロキョロしている。


 これまでのレンなら、遠くから見かけただけで逃げ出していただろう。  だが、今は違う。  レンは隠れることもなく、堂々と正面から歩いて近づいていった。


「ギャギャッ?」 「ギギィッ!」


 ゴブリンたちがレンに気づき、下卑た笑い声を上げながら一斉に襲いかかってくる。  一匹が、手にした石礫いしつぶてをレンに向かって力任せに投擲した。


 ヒュンッ!


 そこそこの速度で飛んでくる石。  だが、レンは避けない。  ただ、目の前の空間を睨んだだけだ。


「――『固定』」


 カィィン!!


 乾いた音がして、飛んできた石がレンの顔の目前で「ピタリ」と静止した。  まるで透明な壁に吸着されたかのように、空中に浮いている。


「ギャッ!?」


 ゴブリンが目を丸くする。  レンはその隙を見逃さない。背中の袋から、昨日買ったばかりの「鉄杭」を一本引き抜いた。  長さ20センチの鉄の棒。


「お返しだ」


 レンは手首のスナップを利かせて杭を投げる。  狙いは先頭のゴブリンの眉間。  だが、レンの投擲スキルは素人レベルだ。杭はわずかに軌道を逸れ、ゴブリンの頭上を通過しようとする。


 普通なら、ただの暴投。  しかし、レンの指がクイクイッと動く。


「『固定』」


 空を飛んでいた杭が、ゴブリンの顔の高さで急停止した。  そこへ、勢い余って突っ込んできたゴブリンが激突する。


 ドスッ。


「ギッ……?」


 自分から杭に額をぶつけ、ゴブリンが白目を剥いて倒れる。  動いている相手に当てるのは難しい。だったら、相手がこれから通る場所に「凶器」を置いておけばいい。  それがレンの確立した必勝パターンだった。


「次は君だ」


 残りのゴブリンが棍棒を振り上げて殺到する。  レンは素早く後ろに跳び退きながら、再び空間に魔力を干渉させた。


「武器を離せ」


 レンが固定したのは、ゴブリンが振りかぶった「棍棒」の先端座標。  空中で棍棒だけが絶対固定される。


 ガガッ!!


 全力で腕を振っていたゴブリンは、手から強烈な衝撃を受け、棍棒をもぎ取られた。  空中に置き去りにされた棍棒。  武器を失い、バランスを崩して転ぶゴブリンたち。


「隙だらけだ」


 レンはショートソードを抜き放ち、無防備なゴブリンたちの首を次々と刈り取っていった。  危なげない、一方的な蹂躙。  わずか数分で、五匹のゴブリンは動かなくなった。


「……うん、悪くない」


 レンは空中に固定されたままの鉄杭と棍棒を回収し、固定を解除した。  魔力消費も微々たるものだ。これなら長期戦もいける。


 レンが討伐の証である「ゴブリンの耳」を切り取っている時だった。  近くの茂みから、呆気に取られたような声が聞こえた。


「おい……見たかよ、今の」


 そこには、別の依頼で来ていたらしいDランクパーティの姿があった。  彼らは信じられないものを見る目で、レンを凝視している。


「石が空中で止まって……鉄の棒が勝手に浮いて……」 「あいつ、武器に触れずに敵から奪い取ったぞ」 「魔法使いか? いや、詠唱なんてしてなかった」


 彼らには「空間の座標固定」という現象が見えていない。  だから、その光景はあまりに異質に映ったようだ。


「……もしかして、『念動力サイコキネシス』使いか?」 「マジかよ、超レアスキルじゃねえか……!」


 ひそひそ話が聞こえてくる。  レンは苦笑した。  念動力。物を自在に操る強力なスキル。  確かに、はたから見ればそう見えるかもしれない。


(まあ、わざわざ訂正することもないか)


 「固定」という地味なスキルだとバレるより、強力なレアスキルだと思わせておいた方が、舐められずに済む。  レンは彼らに軽く会釈だけすると、何食わぬ顔でその場を立ち去った。


 こうして、レンのあずかり知らぬところで、「Fランクにとんでもない念動力使いがいる」という噂が広まり始めるのだった。

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