うそでしょ? ―オフラインのクエストですか!?―
ペティル、ツバキとの出会いに始まり、優雅で楽しげな宴を最後にリリーのDgoベータ版はその幕を閉じたのである。
次の日の朝、VRゴーグルを付けたままベッドでぐっすり寝てしまったせいからか、髪がクシャクシャになっていた。
昨日の興奮冷めやまぬ中、学校へ行く為に身支度の準備をする結李。朝ごはん、歯磨き。乱れた髪をといて元に戻し、とても動きやすい登校用の靴に履き替え「行ってきます」と言葉を残し学校へ急ぐ。
◇◆◇
──タタタ。
登校時間がいつも早い友達、桃華が来ているであろう自分のクラスから少し離れたB棟の図書館へ駆けてきた結李。
時刻は6時40分。毎朝、自習のためにやけに早く学校に来る桃華。朝から勤勉である。朝が弱い結李には到底真似できないであろう。
しかし、それをも今日だけ克服し、モモに会うため図書館に朝早くやってきた結李は息を荒らげながら肩を震わせ、こう続ける。
「──……はぁっ……はぁっ。モモ! ねぇ、モモ聞いて!! あ。てか久しぶり。」
「あはは。久しぶりって一日ぶりじゃない。ま、あっちでの時間が長かったからわかるよ。久しぶり!結李ちゃん」
「うん、おはよう! 結李ちゃん。え、どうしたの朝からそんなに慌てて。」
「ジャーン!! 見てこれ!!」
「ん? どうしたの? って……ヴぇ!!」
──ペラ。
VRゴーグル、スマートリンクから印刷されたデジタル立体写真。『ソリッド・ピクチャ』が手渡される。
昔のゲーム内スクショの進化版の様な物である。
それを見た途端、いつも冷静でお淑やかな桃華が滝汗をかきながら、プルプルと震え出す。
「はぁ……やっぱり。そうだよね。うん、そうだ。」
「え、どうしたの……。モモ、あっ。……!!」
「あー!! もしかして……、妬いてる?」
「はぁ、ううん。違うの。結李ちゃんこの人の事で話があるんだけど……。」
結李が手渡した、ソリッド・ピクチャ。それに写っている人物。それについて桃華が言及しようとしたその時。
桃華の態度で勝手に解釈し、ひとり話を続ける結李。
「えっ!! モモもこの人と会いたいって? ふふーん。しょうがないなぁ……。いーよー。心配しなくてなも完全版がリリースされたら私が紹介してあげるよー!」
「ちょー強いし、それに……。めっちゃカワ、ふつくしいんだから……。」
ふふふ、と腕組みしながら昨日見つけた自慢のフレンドプレイヤーを自慢げにひけらかし紹介する結李。
──……。
「あのえっと、結李ちゃんそうじゃ無くて……。」
苦虫を噛み潰したような複雑な表情で再び慌てだす桃華。
──……それもその筈である、昨日一緒にダンジョンを攻略した女剣士のプレイヤー『ペティル』彼女の正体、それは──。
「えっと、それ。わたし……。はは。」
──……。時が止まる。一分一秒が重たい。
宇宙の様なふわふわとした重力を感じる。
「ヒョ!?」
「ななな!! なーにを言ってるのよ、モモ。急に冗談ぶっ込むなんてめずらしーね。さては昨日、オンしたときギャグ線の高いフレンドと知り合ったのかなーー。わははは……。」
「……。うん、会ったよ…。ギャグ線の高いうさ耳パーカーちゃんとはわはわ魔法使いさんに……。」
桃華の丸メガネが悪役幹部、もしくはアニメの参謀役の様に怪しく光る。
その瞬間。
……──ジュルルルルっ。
おもむろに両方の三つ編みの髪留めをゆっくりと外しメガネを外す。
「……ペティー? ……。わはっ!! ペティーだ!!」
──……ペティル、いやここでは桃華である琥珀川桃華がにこやかに笑う。
青色にたなびく長髪、普段ははメガネで隠れているのがもったいないくらい端麗で凛とした美しい瞳。
色の違い、髪型の違いがある物の眼鏡を外し目付きを変えればそれは、昨日Dgoで会った女剣士ペティルそのものであった。
「ちょ、結李ちゃん、くっ。苦しい……。ぷはっ!!はあ、よしよし。」
急に抱きつかれた桃華、子犬のように暴れる彼女を優しく撫でて、更には言葉で静止する。
落ち着きのない結李と精神年齢を比べると彼女らが同じ年齢の学生とは到底思えないだろう。
「あーーー、会いだがっだよ〜ペティルさん……。ん? ……。」
感動の再会で嬉しさが込み上げたが交錯する自分の思考のせいで急に涙が引っ込んだ。
「うん。ペティルがモモで、モモがペティルなんだよね?」
「うっ、うん……。そうだよ。」
「「どっちも、モモなんじゃん!!」」
多分、彼女を形容するのにピッタリなに文字の言葉がこの世に存在するそれは馬鹿の2文字である。
「あぁ、お得なのか、一石二鳥なのか。これじゃ、分からないよ……。」
「……? 一石二鳥? どう言う事? 結李ちゃん。」
「あはは、あぁいやぁ。何でも無い何でも無い。こっちの話。なーんだ。そっかそっか、やっぱり私の相方はモモしか居ないもんね! ある意味、やっぱり2人が同一人物でよかったかも!!」
「……。うん、昨日私もリリー、結李ちゃんと分かれてから色んなパーティーの方とご一緒したんだけど、結李ちゃんが居ないとソワソワしちゃったよ。」
……──トクン。
あの憧れのクールな美少女が毎朝学校で会ってる友人なんだと思うと、ときめきが止まらない。しかもペティルの口から現時点で決して出ないであろうこの甘い言葉が結李の情緒を揺らし、脳の判断を鈍らせる。
「はい!! こちらこそ!! 急にパーティーから居なくなって寂しかったです!! 会いたかったです!!! あっ、改めてよろしく。ペティ。」
「うん。だから言ったでしょ?すぐ会えるってリリー。」
すぐ様会うことになった2人──。
2人ともソロでベータを起動したのに、広いサーバーのフィールドダンジョンで出会うなんて2人は本当にゲームの硬い運命糸で結ばれているかの様だった──……。
ありがとうございます。
次回から朝更新に固定しようかなと。
続きます。




