回想 進路に悩む僕へ
僕の行く先々には必ずドラマがあり、そしてそこに息づく人々の吐息には、物語の息吹が多分に含まれているのだ。それは人それぞれに現実があるように、一つとして同じもののない、そして一つとして無碍にできない、物語がその人の心には内包されているのだ。
ストーリーがあるところにはドラマがあり、ドラマがあるところには必ず人々の心が息づいている。僕がそれについて考え始めたのは、十八歳の進路に悩む高校生活最後の年のことだった。僕は確かに小説家になりたいと強く思っていたけれど、しかし現実は周囲の「大学進学」の声に流され続けて、予備校に通い、模試を受け、心とは反対のことをずっとやるようになっていた。
ふと冬のある日のこと、ぼんやりと夜道を歩きながら、僕は考えたのだ。――このまま、何も小説を生むことなく、流されるまま大学に進学し、就職し、結婚し、目標を失ったまま生きていっていいのか? 確かにそこには人並みの幸せが必ず分け与えられるのだろうけれど、でも、僕はそこでふと立ち止まったのだ。
僕が生きたいと思う道を、少し生きてみてもいいんじゃないのか? それは博打かもしれない。諸刃の剣かもしれない。単なる運だめしかもしれない。でも、その先に続く未来は、僕が望んで勝ち取ったものなのだ。
なら、一歩を踏み出すべきだ。夢へ、現実の壁を打ち破る一歩を。
でも、現実はそう簡単には大きな選択をできない枷がある。そして、僕は妥協した結果、文学部に進学し、そこで小説家の道を志すことを決めたのだ。でも、その決意は、その翌年の三月に見事に葬り去られることになる。
大学進学に失敗した? いや――
僕の原稿が、本当に一ミクロンの確率で、編集者に拾われ、僕は夢が現実となったことを知ったのだ。




