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それから、のちの話

 戦いは終わった。勝利に沸いた戦士達であったが、帰還すると皆流石に疲れを覚え、体を清めると眠りについた。全員が10時間以上の睡眠をとり、目覚めた後に宇宙ステーションの広い部屋に集合する。


「今回の戦い、ここに居る皆の助力なくしてこの勝利は無かった。そして、戦いの最中で消えていった者達の冥福を祈りたい。1分間、各国のやり方で良いので彼らに対して冥福を祈ってくれ」


 集まった者達の前に立つフレグの言葉に、皆が思い思いの形で散って行った戦士達の冥福を祈った。1分が過ぎ、皆が冥福を祈る作法を終えた事を確認したフレグが口を開く。


「2日後、我がマルファーレンスの城の前にある大広場にて、セレモニーを開く予定となっている。済まないが、出来る限り皆参加して欲しい。そのセレモニーにて、正式に戦いに勝った事を世界に発表する事になっている」


 フレグの言葉に、皆が頷いた。そして、宇宙ステーションからそれぞれの国へと帰還した。宇宙ステーションはしばらくの間、整備員や管理する人員のみが滞在する事となる。



 それから2日後。フレグの言ったとおりにマルファーレンスの城前の大広場にてセレモニーが開催されていた。欠席した戦士はおらず、また大勢の市民たちも集っていた。更に、フェルミアと沙耶も出席している。


「──こうして、我々は滅びの運命に打ち勝った。だが、その運命に打ち勝つために己の命を犠牲にして戦ってくれた戦士達に我々は感謝せねばならぬ。また、今回の戦いにて散った者全員は国の歴史書にその名を刻み、感謝と敬意を忘れぬようにする所存である」


 普段は飄々としているマルファーレンスの象徴であるガリウスも、この日は真剣そのものである。逐一現場から入る情報はガリウス──とフェルミア、沙耶の耳にも入っており、今回の戦いが未知にあふれた厳しい戦いであった事は十二分に理解している。


「そして。今後また50年から60年ぐらいの間隔で次の神々の試練が来るだろう。だが、我々は己の世界を護る術を手に入れた。己が危険に晒されぬことを祈るだけの時代は終わった。被害が出た時に悔み、悲しみ、怒りを覚える時代も終わった。これからは、護る為の戦いが出来るのだ! 新しい時代がやってきたのだ!」


 ガリウスの叫びに、大勢の市民たちが歓声を上げる。神々の試練によって、悲しみの涙を流したことのない者は年若い者ぐらいだ。そんな絶望を一方的に押し付けてくる存在に、こうして対抗できるという結果を戦士達と技術者達は示した。文字通り、長い夜が明けた様な感覚をこの世界の人々は感じていた。


「次の試練までに、我々はもっと強く、そしてもっと犠牲を出さぬようにならねばならない。そのために、これからも各々が出来る事に最大限の努力を行い、輝かしい未来を迎えるための道を作っていく歴史が続く事を期待する!」


 そうして、セレモニーは無事に終了した。今回の戦いにおいて散って行った者達は、マルファーレンスの城の中に石碑が置かれ、その石碑に名前が記載される形で残る事になる。未来の為にその命を捧げた勇敢な者達として……一方でセレモニー終了後に日本皇国の総理官邸に戻った光は。



(これで、ひとまずの大きな仕事は終わった。だが、全てはこれからだろう。今回の作戦がまぐれでの成功であったとはならないように、これから先を見据えての政治がより重要となる。更に神々の試練に立ち向かうだけではない、日本そのものが復活するように破壊された政治や国民の考えを修正していかなければならない仕事もある。法治国家としての姿を取り戻す事と、神々の試練に立ち向かう。この二つが、私の今後の仕事だ)


 そう、光の考えている通り、彼の仕事はむしろここからが本番と言えるだろう。いびつになってしまった所は数多く、それらがあるべき姿を取り戻すには時間が相当に必要だろう。もちろん、時間が経過するだけではなく皆が努力する事が前提となるが。


(だが、その責務からは逃げるつもりなどない。私は、今回の戦いで多くの者を犠牲にしたのだ。彼らに報いるためには、犠牲になったがこのような未来に繋がっていたのであれば……文句はないと思わせるだけの結果を出す他ない。途中で体を壊さぬように、適度な休みは挟みつつ、未来を創るためにこれからも働いていかねば)


 官邸内から快晴となって雲一つない空を光は見上げる。始めてこの世界にやってきて、2年が過ぎようとしていた。自分は総理大臣としてふさわしき行動が出来ただろうか? そして、これからはより総理大臣らしい行動をしていけるだろうか? そんな自問自答をしながらも、一つだけ揺らがないのは不退転の心。


 もう、賽は投げた。行動もして、結果も出た。だから、その結果が出るまでの道筋を作った自分は、その結果がより良い世界を生み出す未来に繋がる様にしていかねばならない責任がある事をしっかりと自覚して、進んでいかねばならない。


(情けない姿は見せられん。そうとも、そんな姿を晒したらガレムを始めとして散って行った彼等から怒られてしまう。それは流石に、御免被りたい)


 一度頷き、光は改めて気合を入れなおした。彼らが空から見て、納得する世界を作るのだ。どれだけの時間がかかるかは分からない。だが、少なくてもこの世界ならあと100年以上は生きられる。地球にいたときなら無理だが、この世界でなら自分が生あるうちにある程度の理想に近い世界を作る日まで生きる事ができる可能性はある。


(そうだ、若返り、長い寿命を貰ったのもすべてこのためだろう。俺はやるぞ、本当の意味で日本を再生し、この世界の一員としてふさわしい国とするために働こう。陛下は以前、俺の事を船と言った。ならば、沈むわけにはいくまい!)


 いつしか、光はこぶしを握り、高々と上げていた。そして、時は流れる。



 選挙権の復活。選挙によって国を治める人を選ぶという行程の復活。もしくは選挙に立候補して作りたい国の未来を語る。各学校の復活。授業内容も幅広く、様々な分野で活躍できる人間を生む。各種スポーツや文化の復活。地方の祭りも蘇えらせ、活気を生み出す。各国との交流をより深め、ともに歩く道筋を作る。


 言葉で言えば簡単だ。だが、当然それを復活させて問題なく事が進むようにする為の道のりは大変な物であった。光だけでなく、大臣や選挙によって当選した議員などを迎えて国会が開かれ、どのような形でやっていくかの話し合いを重ねて進めていかねばならない。


 ──光が鶴の一言でこうする! と宣言すれば、今までの功績もあって反論は出ないかもしれない。だが、それではいけないのだ。非常時であった時ならともかく、いつまでもそのような形で国を動かしていたら国全体が成長しないままになってしまう。なので光は極限まで自分が口を出すような事はなく、明らかにおかしい方向に行きかねない時だけ口を出す形に留めた。


 光の行動と、本来あるべき国の姿を取り戻したいという熱意にあふれた人々の行動の甲斐もあって、日本皇国は徐々に正しき国の形の姿を取り戻していった。その一方で寿命でこの世を去る人間が現れ始めた。どうも日本がこの世界に転移をした時に50歳を超えているかいないかが1つのラインであったらしく、次々と永久の眠りについていく。


 だが、皆笑顔で逝った。もう一度若さを取り戻し、もう一度生まれ変わったかのような人生を送ることが出来たのだ。そして、国がもう一度立て直されていく姿も見れた。それ故に皆満足して逝った。それは国民だけでなく、光の脇で共に働いていた大臣達にも現れた。1人、また1人去っていく。


 そして新しい人が大臣となり、新しい風が入れられる。国として本格的に回り、他の国々との交流も活発化していく。このように本当の意味で国が復活するまでに270年ほどの月日が費やされた。


 無論その間に神々の試練は何度も訪れた。だが、1回1回神々の試練を潜り抜けるたびに、人々はより強くなった。各国の機体も改良され、270年後にはブレイヴァーはmark4、ソーサラーとランチャーはmark3まで開発された。神威は五式となり、全ての機体が初めて神々の試練と戦った時と比べるとすさまじくパワーアップしていた。


 今や神々の試練と戦う彼らは多くの人のあこがれであり、誇りであった。彼等はガーディアンズと呼ばれるようになっており、任務を務め終えるその日まで己を鍛え、世界を護るという大任をこなし続けた。その彼らのお陰で地表に隕石が落ちるという事態は無くなり、また彼らの間でも犠牲者が出る回数は少なくなっていった。


 また彼らは、大災害が発生した時の救助隊としても活躍した。災害が起きればその場に駆け付け、人型の利点を生かして危険物を遠ざけつつ人を救う。その姿を見た小さな子供達の人気の職業として、ガーディアンズはその名前をより轟かせ続けた。


 そして、日本が呼ばれた最大の理由である人口問題も解決。マルファーレンスではすでに1億を超え、フォースハイムでは8000万人、フリージスティも9000万人以上の人口となっていた。これによって血の濃さによる遺伝子問題も無くなり、どの国の上層部も本当の意味で安堵して胸をなでおろした。


 更にそれから30年ほどの時間が過ぎたその日、光はついに総理大臣の椅子から降りる事を決断する。本音を言えばもっと早く降りたかったのだが、各国の状況が落ち着くまでにこれまでかかった事と、選挙による結果を鑑みても光の続投を望む声が圧倒的に多かった事もあって降りるに降りられなかったのだ。


 だが、人は育った。後を任せても問題のない人物も出てきた。世界も今は安定し、嘆く声はほとんどない。ならば、そろそろいい加減に降りるべき時が来たのだと判断したのである。周囲からは引き止められたが、総理大臣も新しい人物にしてこれからの政治を作っていかなければならないという光の言葉に、皆が納得した。


「この後国会で正式に発表し、解散する。そのあとしかる後に国民に総選挙を行ってもらい、次の総理を決めてもらいたい。総理の椅子にふさわしい人物は複数いる。選挙の意味も十分あるだろう……私の仕事はここまでだ。これからの日本を作るのは君達だ」


 そう言って光は、大臣達を見る。もう、大臣は全員新しい人物に代わっていた。日本がこちらの世界にやってきた時に大臣を務めていた人達は皆、寿命で天に召されている。光はやってきた時にまだ50歳からは程遠かったためなのか、こうして存命しているが。それと、大臣ではないが光をサポートしてきた如月指令もすでに天寿で召されている。


「皆、これからの日本を頼む。私の今後は、ガーディアンズとして国に貢献する形になる。あちらの方はまだ、降りられないのでな」


 光の神威参特式は、すでに時代遅れ──になっていなかった。国の象徴は天皇陛下であるが、ガーディアンズの象徴は神威参特式と言わんばかりの空気があり、外見こそ大差ないが内部は大幅にチューンアップされている。今の神威参特式なら、超大型隕石であっても楔無しで一刀両断が可能となっているほどだ。


「藤堂総理、長い間お疲れさまでした。貴方がいなければ、私達は今こうして生まれる事もなかったでしょう。貴方を始めとした多くの人が繋いでくれた命と歴史を、今後は我々が紡いでいきます!」「頼むぞ、君達ならこの国の明日を任せられる」


 光の言葉に、大臣たちは皆涙を流した。時は皇歴304年。5月の18日。藤堂光は総理大臣の席をついに降り、次代へと託した。この後、300年以上総理大臣の椅子に座り続け仕事をした人物は、光以外に現れる事はなかった──

まだエンディングじゃないです。あと1話か2話あります。それでおしまいです。


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