神々に抗う人々人々 その12
18機の任務を滞りなく遂行させるために、残りの機体全てが援護に回った。小型、中型隕石の排除だけでなく何らかの不意打ちに備えて18機の周囲に盾を構えての防御陣を展開。己を盾として17機を何が何でも守る形を取る。
大和も作戦を支援すべく、自分で壊せる隕石は全て撃ち抜くとばかりに全砲門を解放、後の事などもう考えないペースで凄まじい射撃を続けている。
一方で隕石側も、小型、中型を多数投入。時には大型まで投入して連合軍側を圧し潰さんとしてきた。双方ともに、決着が近い事を感じ取った動きとなっていた──そして今ここに、その決着を左右する者達の最後の作戦が始まっていた。
「目標を確認、これより神威参特式はフルパワーモードに移行する。17機の行動が完了した直後、草薙の太刀による攻撃を行う」
あえて淡々と、感情を一切出さずにやるべき事だけを光は告げる。そうしなければ、感情が溢れだして止まらなくなってしまいそうになるから。知り合った後、幾度となく一緒に飯を食ったり話をしたりという形で親しくなっていったガレム。そしてそんな彼に付き従う16人の勇士を己が手で斬らねばならない。
だが、そのことによって起こる感情はすべて、今は深い所に封印してなすべきことを成さねばならない。逃げる事は許されない、この作戦を立案したのは己だ。現実から目を背けてはならない、それは17人の覚悟を受け止めていない証拠になる。だからこそ、今ここで己が事を成し、彼らの仕事が報われるようにしなければ──ここに居る価値が無い。
『了解、こちらも配置についた。これより超巨大隕石にくさびを打つ。後の事は──すべて託した』『気負うなよ、ここまで俺達を導いてきたお前さんならやれる』『神々の試練で失われてきた多くの命と魂が、満足する結果を出そうぜ!』『んじゃ、お前らやろうか。戦士としてこれ以上ない誇りある戦場、その最後に傷をつけるようなドジを踏むなよ~?』
そんなガレムの言葉で軽い言葉で話し合いが締められると、17機は自分の目標とされている超巨大隕石の刃を突き立てられる場所に突貫した。次々と手に持った剣や槍を超巨大隕石に突き立て、ブースターを全て全開にして押さえつける事で無理やり固定させる。
超巨大隕石も打ち込まれた17本の楔を押し出そうとするが──ここはほんの僅かながらブレイヴァーの出力が勝った。すごい力で突き刺した楔の役目を果たす剣や槍を押し戻される事を17機のパイロットたちは感じるが、歯を食いしばってその力に全力で抗う。ここに、千載一遇のチャンスは訪れた。
『固定に成功した! ヒカル、やれぇー!!!!!!』「承知!」
ガレムの叫びに光は素早く応じ、すでに準備が完了していた草薙の太刀を構え、フルパワーで超巨大隕石の目に沿って最高の一撃を叩き込んだ──斬ったという感触は、光の中にはなかった。だが、草薙の太刀を振りぬいた光が見た物は……見事に真っ二つになった超巨大隕石の姿。
更に、草薙の太刀の一撃によってその断面にはすさまじいエネルギーや魔力が荒れ狂っており、それらが臨界を迎えてさらなる大爆発を引き起こした。この爆発によって断面から無数のヒビが走った超巨大隕石は、粉々に砕けていった。やがて塵となり、宇宙に消えていく──
『『『『『『『『う、う、うおおおおおおおおおお!!!!!』』』』』』』』
その結果を見た連合軍のパイロットや司令部を始めとした後方支援を担ってきた人々の間で、とてつもなく大きな声が上がった。それは絶望を打ち砕いた歓喜からか? 単純に超巨大隕石をぶった斬って見せた神威参特式の姿に興奮したのか? それとも、これで俺達は勝てると確信したからか?
いや、きっとそれは、この日を迎えるまでに積もり積もった歴史からくる感情が全てごちゃまぜになって出た叫びであったのだろう。
ここに来るまで、山ほどの不安があった。本当に神々の試練に打ち勝てるのか、という疑いや悩みは、この世界の人間にとって常に心の奥底に潜む悪夢のような物。その悪夢が、今、ここで確かに打ち砕かれた。神々の試練で家族、友、愛する人を失った者は数知れず。それらすべての人々の仇を、今ここで遂に討ち果たしたのだ。
『小型、中型の隕石接近数急速に減少!』『追加の隕石、確認できず!』『今来ている隕石をすべて破壊すれば、戦いは終わりです!!』
観測官からの報告に、連合軍は最後のお仕事とばかりに張り切って隕石を破砕した。もちろん光も八尺瓊勾玉システムで残った隕石を破壊する。ひたすら、機械的に。心の奥から湧き上がってくる感情に必死で蓋をしながら。一方で大和は疲労を覚え、射撃の回数がガタ落ちになっている。だが、それでも残った隕石量から考えると十分であった。
17分ほどで、残りの隕石はすべて破砕された。観測班が念入りに行った観測でも、新しい隕石の飛来は確認されなかった──ここに、第一回ヒューマン・トーカー作戦は終了。幾多もの命を散らしながらも、地表の人が住んでいる地域に落ちた隕石の数はゼロ。目的を達成した。
『作戦終了! 隕石は全滅! 全員宇宙ステーションに帰還してください!』
如月指令の言葉に、生き残った連合軍の兵士達やこの作戦を見守っていた世界の人々は歓喜に沸いた。遂に、神々の試練に打ち勝つことが出来た。被害は今までの歴史の中で最小限に抑えられた。よって、作戦は大成功と言ってよいだろう。だが、そんな空気の中で、光は自分の右手を見ていた。
(必要な事だった。やらねばならぬ事だった。他人に押し付けるなどもってのほかの事……だが、俺は友を斬った。その一点においては何の言い訳もできん)
そして、握りこぶしを作りながらさらに思う。
(友だけじゃない。この作戦を立案し、実行に向けて行動したのも俺だ。この作戦で失われた命は全て、俺が殺したようなものだ)
そして目を閉じ、心の中で宇宙の遠くを見上げる。
(俺は政治家だ。総理大臣だ。故に必要な時には犠牲を強いる事もある。今回の様な作戦を実行しなければならない時がある。だが、このいま覚えている心の痛みをそう言った事を理由にして忘れるような真似だけは絶対にすまい。上に立つものは非情な決断を迫られるものだが、その決断は非情であるという心を失えば、それはもう身勝手な人間と堕する)
ゆっくりと目を開け、宇宙ステーションへと帰還すべく神威参特式を光は動かし始めた。
(友よ、戦友よ。俺はこの日の心の痛みを忘れない。そして、散っていったお前たちが満足できる結果をこの先の世で生み出す。絶対にだ。世の中に絶対はない、なんて言葉は今だけは知った事か。これだけの事をさせた人間が、相応の結果を出せないなんて許される事ではないのだからな)
──この戦いは、後の歴史において光が行った仕事の中でも特に高い評価を受ける事となる。だが、光本人はこの戦いで多くの命を失わせたことを恥じ、友を斬った事を悔いていたという。戦いになれば戦死者が出るのは当然の事。
だが、それをそう割り切らず、散って行った彼等に報いるために、今私は総理大臣として、この世界の一員として仕事をしているだけに過ぎないと言う考えを、光は一生崩す事は無かったという。
これにて本編はほぼ終了です。
後は多少の戦いが終わった後の話を書いた後にエピローグを書く形となります。
1年もの中断が入りましたが、見捨てないでくださった方々のお陰で何とかここまでこぎつけることが出来ました。
長らくお付き合いいただき、ありがとうございました。もう少しだけ、お付き合いください。




