神々に抗う人々 その8
光の駆る神威参特式を先頭に、連合軍全体が超巨大隕石に剣を、杖を、銃口を向ける。
『ヒカル殿、まずはどうする?』「まずは一当てする。各自、一番得意な攻撃をあの無駄にどでかい隕石に当てろ。そしてそれを解析班がチェックし、有効な攻撃を割り出す! 有効な攻撃が分かればそれを中心に、なければ数であの隕石に当たる」
光の言葉を聞いたフレグは頷いた後、攻撃を順に指示した。解析班が解析しやすい様に、ある程度間を置いて各々が一番得意とする攻撃を振るった。その結果──
『報告します! 有効な攻撃は剣や槍などの近接武器から放たれた斬撃や刺突などの様です! 一方で魔法はほとんど意味がありません! 射撃は多少は効いているようですが、有効とはとても言えません! 更に……残念ながらソウル・ガーディアンである大和様の主砲、副砲ともに効果が確認できません!』
との事であった。この瞬間、マルファーレンスの戦士が駆るブレイヴァーと、光の神威参特式の草薙の剣、神威弐式の近接戦重視タイプが主力となり、他の機体と大和は、まだやってきている小型、中型の隕石の破砕に回ることが決まる。
『元々始まりは、俺達の国に神々の試練が落ちる事から始まっている、ならば最後の締めは俺達が決めなければならないと言う事だろう! 全員得物をしっかり握れ! これより我らは全ての力を使い果たす覚悟であの巨大な隕石を破壊、もしくは軌道をそらす戦いを始める! 総員、戦闘開始!』
フレグの声に合わせ、各機が超巨大隕石に向かって突撃する。各機の持つ近接武器が次々と超巨大隕石に叩きつけられ……隕石の表面には次々と細かいヒビが入っていく。当然ヒビが入った個所に更なる追撃が入れられる。その結果、超巨大隕石はわずかづつではあるが崩れていく。
『超巨大隕石の表面に、近接攻撃はやはり有効なようです。そのまま続けてください、何か大きな事が分かり次第、こちらもすぐに情報をそちらに送ります!』
解析班からの言葉に従い、近接攻撃が超巨大隕石に引き続き行われた。やがて小さなヒビ同士がつながり始め、大きなヒビとなっていく。その動きが連鎖し……超大型隕石の表面が砕け散った。表面の厚さは、解析班が確認した所、1メートル20センチ前後であった。その表面がはがされ、中から出てきたモノは……鈍く輝く金属であった。
『これは!?』『この隕石の中身は、このように妙な輝きを持つ金属だったのか!?』
妙な輝き、という言葉が出たのはその金属が見せる輝きが地球で言うマジョーラカラーの様なものだったからである。ある部分が赤く輝くかと思えば、他の部分は黄色、青、紫など、とにかく変わった輝きを返す。それ故に、妙な輝きという感想を持ったのだろう。
『臆するな! 隕石であろうが金属であろうが、こんなものが我々の世界に落ちたらお終いなのだ! 攻撃を続けろ! ゆっくりだと言っても、確実にこれは我々の世界に滅びをもたらさんと移動しているのだ! 躊躇する時間はないぞ!』
フレグの言葉に皆が反応し、再び攻撃が行われた……が。
『明らかに効いていないぞ!』『くそ、俺の槍が曲がってしまった』『こっちも剣が折れやがった! この剣を折るとか、いったいどういう硬さをしているんだ!?』
近接攻撃の大半が通じなかったのである。例外として効いていた物は、まず光の神威参特式の草薙の剣。マルファーレンスの一部と、自衛隊員の一部が繰り出せていた剣に各種属性を纏わりつかせて切る魔法剣。相手を無理やりぶち抜くパイルバンカー系の武器。以上である。当然これらの情報は共有されたのだが。
『くそ、ここに来て魔法剣を使えだと!?』『魔法はあんまり得意じゃないなんて言っていたツケがこんな時に回ってくるのか!?』『今すぐフォースハイムの魔法使いに協力を要請するんだ! 彼等の魔法の力を借りて対処するぞ!』
事態を理解したフォースハイムの魔法使い達は、すぐに魔法の付与が得意な者がブレイヴァーの持つ近接武器、神威弐式の持つ近接武器に魔法を付与する。そうしてもう一度超巨大隕石に対するアタックが再開される。
『よし、今度は手ごたえがある!』『こちらもだ、間違いなく今度は攻撃が通っている!』『ヒビが入ったことを確認、フォースハイムの魔法使いの皆、済まないが付与が切れたらすぐにかけなおしてほしい!』『了解、切れそうになったらすぐに申告してくれ! いつでもかけられるようにしておく!』
が、通じるようになったとはいっても、今の超巨大隕石の防御力は最初とは桁違いである。マルファーレンスの戦士達の鋭い斬撃や、大槌などの打撃、槍やパイルバンカーなどの刺突攻撃であってもなかなか破砕が進まない──更に、ここで超巨大隕石が連合軍に反撃行為を開始した。
『なんだ、やたらと激しく光り始めているが……』『──何かマズイ! 今すぐ離れて防御、いや回避態勢を取れ! 全力だ!』『盾持ちはフォースハイムの魔法使いを庇え! 何かやって来るぞ! 凄まじく危険な感じだ!』
より激しく輝いた超巨大隕石は、その表面から無数の細い熱線を生成、四方八方に向けてでたらめに発射してきたのである。何とかほとんどの機体が距離を取ることが出来た連合軍の皆ではあったが──
『この熱線、何という火力だっ!? 一発受けただけでブレイヴァーの足が吹っ飛んだ!』『くそ、こっちは腕をやられた!』『しまっ……アアアアアアア!』
狙いを定めない上に、数ででたらめに発射するというやり方ゆえに法則性が無く、多くの機体が被弾……さらに距離を十分にとることが出来なかった20機以上の機体が直撃を貰ってしまい、機体が大破。パイロットも死亡した……それらの被害を出しつつも、何とか残りの面子はこの攻撃をやり過ごした。攻撃が終わると、超巨大隕石は輝きを失った。
『何と言う事だ……魔法剣ならダメージは与えられるが……その時に魔力を吸収して反撃の力としてきたのか!』『くそ、やっぱり魔法無しの剣じゃダメージが通ってねえ!』『一応試したが、射撃もダメだ。効いてる感じがしない』
攻撃が収まり、この超巨大隕石の特性を理解したマルファーレンス、フォースハイム、日本皇国の戦士達は歯噛みする。攻撃がそのまま自分達に返って来る、それを理解したうえで攻撃を続行しなければならないのだから。とりあえず、一部破損した機体は宇宙ステーションにて修理を受けるために一時離脱した。
『確認する、ここまで攻撃したことによる隕石の移動先に関する影響はどうだ?』『ダメです、一切変わっていません! このままではマルファーレンスの首都に直撃するコースのままです!』
そして、軌道修正もできていなかった。なので、危険と被害を承知で攻撃を続行する他ない。
『フォースハイムのソーサラー部隊はもっと距離を取ってくれ! 付与に必要な時だけこちらに来てくれればいい!』『解析班、どの属性が有効、無効という情報はないか?』『今の所、属性による隔たりは確認できていません! どの属性も無力化はされないようです!』
いくつかの打ち合わせ、情報の確認を行った後に再び攻撃が再開される。この攻撃によって反撃が来ることは分かっているが、それでもやらねばならないのだ。このまま放置すれば、間違いなく世界の終わりという結末になるだけなのだから。
『輝きが激しくなってきた! 攻撃を中止して距離を取り回避行為に専念しろ!』『『『『了解!』』』』
ただ、当然連合軍とて一度タネが分かれば対処できる。弐回目の超巨大隕石による反撃は死者ゼロ、一部破損した機体が8機出るという被害に抑えた。8機は一時離脱し、修理を受けた後に復帰する形となる。
『よし、やってくる理屈さえわかれば何とか回避は出来る!』『最初の反撃を回避しきれなかった機体は、皆距離を取り損ねていた機体だったからな』『ああ、対処さえわかれば何とでもなる』『ならば、何が何でもこいつを止めるなりずらすなりするぞ!』
二回目は死者を出さなかったことにより、士気の低下は免れた。それから数回程攻撃した後に回避してを繰り返し……遂に、超巨大隕石の金属面をヒビだらけにすることに成功した。
『そろそろ、砕けろ!』
そんな事を口にしながら全力で冷気が付与された大剣を一機のブレイヴァーが超巨大隕石に振り下ろしたその瞬間。超巨大隕石のヒビが次々と大きく広がり、最初と同じように砕け散った。この時点で、最初大型隕石の約三十倍とされていたこの超大型隕石のサイズは25倍ぐらいまで減っている。
さて、そこまで体積を減らした超大型隕石が次に見せた姿は……まるでラピスラズリのように輝き、まるで楕円形になるように丁寧に磨き上げられた一種のどでかい宝石のような姿であった。だが、それを美しいと表現する人物はこの場にはいなかった。むしろ、なんと寒々しい殺気を放っているかのように感じていたほどだ。
『くそ、また姿を変えやがって……次は何をしてきやがるんだ』『それでも、それでも俺達はこいつを何とかしなければならない! 俺達が何とかできなければ、今でも必死に小型や中型の隕石を抑えてくれている仲間の頑張りを全て無駄にすることになるのだ!』
次々と姿を変える超巨大隕石。それでも、戦う以外の選択肢は許されていない。何方が勝つのかは、まだだれも分からない。




