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神々に抗う人々 その7

選挙行ってきました。皆様も面倒がらずに行ってくださいね。

 宇宙ステーションに帰還してきた神威参特式を迎えた整備班は一斉に作業に当たった。装甲や内部フレームの総チェックから始まり、僅かでも歪んだ装甲を取り外して新品の装甲を取り付ける。各種エネルギーを再注入して回復させる。武装にも異常が出ていないかのチェックを入れると、まさに緊急患者がやってきた病院を思わせるような騒ぎである。


 そんな彼らを見ながら、ヘルメットのみを外した光は椅子に座りながら水分補給と休息をとっていた。先の戦いでかなりの魔力を消耗していたため、今はとにかく休息を取って回復を待つしかない。回復を強化する薬品はすでに口に含んだ後であり、後は魔力が回復するのをじっと待つほかない。


 そうして休息を取っていた光の元に、整備班の一人がやってきた。光に向かって「神威参特式のチェックが終わりました」と口にしたことから、報告のために来たのは明白である。


「幸いな事に、大きな破損個所などは見つかりませんでした。一部装甲の交換とエネルギー注入。それらの為に相応の時間を頂きます。こちらもできるだけ急ぎますが、整備不良でいざという時にフルパワーモードが不発するような事態を引き起こさない為に必要な時間です。どうかご理解ください」


 技術者である彼がそう言うのだ。ならば、畑違いの自分がもっと早くしろなどと言うべきではない。光は焦りの感情を胸の内にしまい込み、穏やかな声を出す事を心掛けてから口を開く。


「分かった、君たちプロがそう言うのならば間違いないだろう。全て任せる、万全の状態にしてくれ」


 光の言葉に敬礼をした技術者は、走って神威参特式の方に向かっていった。その後に「出来るだけ急げ、だが万全に持っていけ!」という声が聞こえてくる。光はやるべきこともないので、彼らの作業を静かに見守る事にした。



 さて、その一方で連合軍の方はと言うと──今度は質より量と言わんばかりに中型と小型の隕石が多数、襲い掛かってきている。しかもそのうちの9割が熱線による攻撃を連合軍に浴びせかけている為かなりの攻撃密度となっている。


 だが、連合軍はそんな隕石に真っ向から挑み、破砕している。熱線による攻撃にも全体的に慣れてきた様子がうかがえ、回避や適切な防御で被害を大きく抑え込みつつ反撃で隕石を逆に破砕するという戦いが出来るようになっていた。半数が一気に脱落し、復帰可能な機体もまだまだ宇宙ステーションによる整備を受けているのが大半という厳しい状況を、見事に跳ね返していた。


『よし、中型や小型の熱線は大体見切った! 油断はできないが行けるぞ』『ああ、この調子を維持すれば十分戦える』『時間がたてば、復帰できる連中が戻ってくる。それまでは俺達が何とかするぞ!』


 光の神威参特式による大暴れで士気が上がり、戦い続けた事で敵の熱線の照射してくるタイミングなどを掴んできた彼らは数が半分に減ったとは思えないほどの素晴らしい防衛線を継続していた。そんな彼らの前に、中型隕石や小型の隕石は一個たりとも防衛ラインを突破できない。


 更に、ここで中破した面子のうち、比較的ダメージが少なかった機体が前線に戻り始めた。数が戻ってきたことで連合軍は全体的に余裕を徐々に取り戻し、より勢いが増した。一方で隕石の方は熱線を放っても避けられるどころか、放つ前に潰される隕石まで出始めている。一部のフリージスティ出身のスナイパーライフル使いが、照射してくる隕石の兆候を見抜ける様になってきていたのである。そして、兆候が出たタイミングで打ち抜けばもしかして? と試した結果……


『ビンゴ! やっぱり照射直前に当ててやれば普通にやるより容易く壊せる!』『こっちも破壊成功だ、中型なのに簡単に破砕出来た! これがこれから先の突破口になるかもしれんぞ!』


 彼等は隕石が熱線を照射してくる兆候を、ここまでの戦いを経た事による経験と鋭い勘で見破って次々とスナイプして破砕する。これにより連合軍に降り注ぐ熱線の数が確実に減り始めた。隕石の飛んでくる密度は変わらないが、熱線が減った事で連合軍側はより動きやすくなる。そうなるとどうなるか? 当然攻めるチャンスが増える。


 剣が、魔法が、銃弾が、隕石を次々と砕いていく。隕石側が100の援軍を飛ばそうとも、150をたたき割るかのような勢いで。その最中に前線へと舞い戻った機体が戦いに加わる。そうなれば更に隕石の破砕速度が加速する。もはや中型も小型も連合軍の前では脅威になっていなかった。


 大型の隕石もその後しばらくしてから再び姿を見せたが──フリージスティのスナイパーライフル使い達がまた活躍した。


『この感覚、大型も同じ』『じゃあ、ぶち抜きますか』『俺達の見せ場って奴だな』


 隕石の熱線を放つタイミングに合わせてカウンターの様に射撃をぶち込めば、たやすく割れる。この中型と小型の隕石で学んだことを大型の隕石にも実行した。その結果は……約半数が破砕された! 残り半数は壊れなかったが……明確なヒビが入った。破砕された大型は中型レベルであり、容易く破壊された。残った大型も大和の主砲の前にヒビが入った状態で耐えられるはずもなく、一瞬で消し炭となった。


 この成果に、スナイパー部隊はますます手ごたえを感じて気を良くした。最高の仕事をできる機会はまさに今ここにある。ならば、先に大暴れした神威参特式の様に我らも静かに暴れてやろう。彼等の目と、スナイパーライフルの銃口が同時に妖しく光った。


 そんな感じで、間違いなく連合軍は善戦していた。このまま押し切って勝利の美酒を味わい、逝った仲間を弔えるのだと疑う者は居なかった。だが。神々の試練と銘打たれた現象は、そうたやすく勝ちを譲ってくれるようなモノではなかったのだ。それを知らせる連絡が、観測班から入る……


『全軍に通達します! 緊急事態です! 今まで我々が大型と呼称していた隕石の──約30倍の体積を持つ超大型の隕石がこちらに向かって飛来しています! 速度は他の隕石と比べてはるかに遅いのですが、方向は間違いなくこちらです! もしこの隕石が我々の世界に落ちた場合……我々の世界は……消滅します……』


 誰もが一瞬動きを止めた。理解できなかった。いや、理解などしたくなかった。大型の30倍の大きさを持った隕石が、こちらに向かっている? もし、それが落ちた場合、我々の世界が消えてなくなる? そんな馬鹿な話が、あってたまるか。誰もが認めたくなどなかった。だが。


『それは、間違い、ないのか?』『残念ながら、事実です……!』


 フレグの問いかけに、絞り出すような声で事実であると告げる観測班。滅びを告げる本命の使者が、姿を見せた瞬間であった。誰もが、事実であると認めたくなかった。だが、無情にも事実であると伝えられた。その言葉から、その現実から、逃げられる手段はどこにもなかった。機体の動きが鈍っていく。絶望という鎖にからめとられて動かなくなっていく。


『おしまい、なのか? ここまで来て?』『無駄だったって事? 私達の頑張りは、全て』『この結末は、始めから決めていたのか? 神よ?』


 あまりにも非情な現実に、連合軍の心が折れた。ここまで行けると思っていたのに。希望はあると思っていたのに。最後の最後に、それらをすべて摘み取るように仕組まれていた。我々に、希望を持たせて遊ぶためにあえてここまでは戦えるようにしていた。その様に考えてしまったのだ。誰もが絶望の鎖に硬く締め付けられたかのように動かなくなってしまった……


 だが。その空気を切り裂くような声が響いた。


『何を腑抜けている! 確かに状況は絶望的かもしれんが、俺達はまだ生きているんだぞ! まだ、刃も魔法も銃もあるんだぞ! 諦める事は死んでからでもできる! だが、諦めない事は今しかできんのだ! 刃を一回も当てず、魔法を一発も放たず、銃のトリガーを一回も引かずに、貴様らはここまでの頑張りとこれから先の未来の全てを諦めるつもりなのかっ!!!!!!』


 これは、整備が完了して神威参特式と一緒に戦場に舞い戻った光の声であった。


『俺は最後まで戦うぞ! かじりついてやる、無様な姿を晒してもやってくる超巨大隕石とこの命尽きるまで戦うぞ! 何も隕石そのものを破砕出来なくても、軌道を逸らせばいい! 俺達の世界に落ちないようにすればいいんだっ!! それすらも試さず、貴様らは剣を、杖を、銃を落として諦めるのか!!!! 貴様らの戦いにおける覚悟とは、そんなに軽い物だったのか!?』


 光の言葉に、連合軍の戦士達の目と心に光が戻り始める。


『俺達の世界を、そんなものに壊されてたまるか! そう思ったからこそ、今ここに俺達は居るんだろうが! 違うか!? 俺達の世界に生まれてくる未来の命を護る為に、命を懸けているんじゃないのか! そんな簡単で初歩的な事すら忘れたか!!』


 そして、連合軍の魂に炎が宿る。呼応するように、各機体の動きが戻っていく。見えない絶望という鎖が、引きちぎられていく。


『違うというのなら戦え! 戦って結果を出して証明しろ! 俺達がいる限り、世界をこれ以上破壊させないと叫んでみろ! 理不尽に決して屈しないと吠えてみろ!』


 光のこの言葉に、大声が上がった。まるでこの周辺が震えるかのような錯覚すら覚えさせる状態であった。戦いはいよいよ大詰めを迎える。この超巨大隕石をどうにかできるかで、連合軍と世界の運命は決まるのだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] まだ戦う _ 力が残っているのに、 諦めたらタヒ合い終了だよ。 [一言] さすが我らの総理大臣。 シしても我々を導いてくれるに違いない。
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