神々に抗う人々 その5
神々に抗う人々 その5 硬直した戦場……だが、連合軍はそれでもよかった。隕石を後ろに逃すことなく隕石の弾切れを持ち、最後まで世界を守り切る事こそが連合軍側の勝利条件なのだから。だからこそ、状況を動かさなければならないのは隕石側の、神々の試練側である。そして、新しい一手を打ってきた。
『報告!! 大型隕石が同時に10個飛来中であることを確認! さらにそのどれもが小型、中型を多数引き連れてきている事も確認! 敵側の猛攻です!』
連合軍側に、そんな通信が入ってくる。連合軍は誰もがついに大型隕石の猛攻が来た、と覚悟を決める。このまま終わってくれるとは誰も思っていなかったが……大型隕石が同時に10個という情報は連合軍の心に重くのしかかる。1つでも厄介な大型隕石が同時に10個なのだから無理もないが。
『迎撃準備! ヤマト並びに遠距離射撃が可能なゴーレムはすぐに射撃体勢に──』『待ってください!!! 大型隕石10個中9個から非常に高い魔力を感知! 超遠距離からの強烈な熱線が来ます! 全員防御を前面に集中しつつ回避運動を!』
連合軍が迎撃に移ろうとした時、更なる情報が通信を通して入ってきた。大型隕石による熱線攻撃が遂に行われようとしていたことを察知した観察班が、連合軍の指揮に緊急通信で割り込んだのである。
『大型隕石による攻撃まであと3、2、1、来ます!』
それは、夜中に見る星の瞬きに似ていた。9つの激しい瞬きが見えたかと思った次の瞬間──死を告げる熱が連合軍に襲い掛かってきた。全員が何とか生き残るべく、盾を持っている機体は掲げながら、持っていない機体は必至で回避運動を取った。だが……多くの悲鳴と複数の通信途絶が発生した。それらが示す事はただ一つ、数多くの機体が落とされた、と言う事である。
「く、うっ……」
光の駆る神威参特式は八咫鏡を用いて、己と周囲の機体を出来る限り防御していた。熱線が止まり、周囲の状況を確認できるようになった彼が見た物。それは、複数のブレイヴァー、ソーサラー、ランチャーの残骸であった……
(この残骸の数──何人落とされた!? 少なくとも20、30、いやこの量はそんな優しい物じゃない! 100よりも遥かに多い……)
光の見立ては正しい。この大型隕石9個による己すら燃やしきった強烈な熱線攻撃による連合軍の被害は甚大なものであった。耐えられずに機体の大半が消滅、パイロットも死亡した機体が197機。何とか耐えきったものの、今すぐ宇宙ステーションに帰還しなければならない大破直前の機体が874機も出ていた。
戦争では全体の3割が失われると戦力として考えられなくなる、という考えがある。だが、今回受けた被害はすでに半分以上が戦闘不能に追いやられているので、文字通りの壊滅的な被害を出したと言う事になる。普通の戦争なら降伏するところだが……この戦いに降伏はない。降伏しようがないのだ。戦いを止めれば、隕石が世界に落ちてしまうのだから。
さらに、この状況で無傷の大型隕石が連合軍に迫ってきていた。だが先の攻撃によるダメージと混乱によって、指揮が止まってしまっている。そのため、光はやむなく短時間だけ独断で行動することを決めた。
「大和、そちらは無事か!?」「大丈夫、本体もある程度ダメージは受けたが主砲、副砲ともに健在。まだまだいけるぜ!」
まず、大和の分体を通じて、大和の状況を確認。ソウル・ガーディアンである大和がまだ問題なく戦えると知って、光は多少落ち着きを取り戻した。
「ですが、もう一つの問題が! 先の攻撃を受けている間に、小型と中型の隕石が幾つかが私達の包囲を破って星に落ちるべく進んでいます!」
一方で慌てた長門の分体からの言葉に、再び光の表情に焦りが浮かぶ。すぐさま光は通信を開いた。
「如月指令! いくつかの隕石を取りこぼした! 最終防衛ラインとして配置した地上部隊はどうなっている!?」
最後の手段として、マルファーレンスに残してきた神威零式&固定砲台+長門の本体。それを使うしかないと光は判断したのである。
『総理、問題ありません! それらの隕石は全てこちら側でロックオン済みです。後は地上部隊に任せて、総理や連合軍の皆様は残った大型隕石の処理をお願いします!』
如月指令の言葉に、光は「わかった、そちらは頼む!」と口にした後、大型隕石に向かって突撃を開始した。神威参特式のパワーをすべて解放する時が来たと判断し、それが出来る状況にするための移動である。
さて、一方で地上部隊は十言うと──
『落ちてくる隕石は小型と中型合わせて26個です。ですが、皆さんなら問題ありませんね?』
如月指令の言葉に、地上部隊の神威零式達はようやく出番かと変に気負わず地上に固定された専用の超遠距離狙撃に特化した砲塔を隕石に向けている。
「隕石共。してやったりと思っていたんだろうが、残念だったな」「首都にお前たちを落とさせるわけにはいないんですよ」「こちらの備えの方が上回っていたことをここで証明しないとな」
落ちてくる隕石が射程に入った直後、轟音とともに専用のアンチマテリアルに魔法の爆発要素を組み合わせた砲弾が打ち出される。長門も主砲を放ち、隕石を消し飛ばす。地上部隊は狙撃の成績が良かった日本皇国一般市民から選ばれたメンバー。一発も外すことなく、連合軍の陣を抜けた26個の隕石はすべて処理された。
『よし、ひとまず任務完了!』『たわいねえな、この倍でも余裕だぜ』『でも、宇宙にいる連合軍にひどい被害が出たって話だろ……俺達も忙しくなるな』
通信越しに、会話を行う地上部隊のパイロットたち。彼等には正しい情報が伝えられているため、宇宙の連合軍が壊滅的な被害を受けた事を知っている。
『それでも、最後まであがくっきゃねえよ! 降伏も何もねえんだからよ!』『ああ、そう言う事だよな。何が何でも隕石が街に落ちるなんて展開だけは阻止して見せる』『何とか、連合軍が立ち直ってくれることを祈りながら、こちらのできる仕事をやるしかないな』『やられっぱなしで終わるものか、あのタフな連中が』『総理もいるしな』
地上部隊は、連合軍が立ち直ってくれることを疑っていない。その期待に連合軍がこたえられるかどうかは……すぐに分かる事である。




