神々に抗う人々 その3
大型の隕石も大和の主砲で砕かれ、これで後は残りを順次処していくだけ。連合軍の大半がそんな考えになりかけた時、試練は更なる顔を見せ始める。
『こ、小型の隕石が回避運動を!? 更に熱線の威力が上がっている! 防御膜の役割をしてくれるシールドを抜かれた!』
この一戦士の言葉通り、小型の隕石が積極的に回避運動をしながら突撃してくるようになった。更に己そのものを燃やし尽くす勢いで熱線の威力を上げてきた。その結果、今まで回避に失敗しても十分にバリアやシールドで防げていたので機体へのダメージは基本的に無かったのだが……遂に貫通されて機体の装甲そのものを焼かれる様になってしまった。
もちろんバリアの存在のお陰で熱線の威力そのものは大きく軽減されてはいる。だが、被弾がかさんでバリアを発生させているジェネレーターが一時的に落ちて、再起動までの張り直しの間に軽減無しの一撃に被弾すれば……どれだけのダメージを機体が受けるのかはあまり考えたくない話である。
『怯むな! 訓練で行っていた射撃戦に比べればまだ温い! 俺達をこの程度で倒すなど不可能であることを証明するんだ! ゴーレムの力に頼りきりになるような俺達ではないだろう!』
また別の戦士の一言で、そうだ、俺達はこの程度の攻撃で負ける事などありえないと連合軍全体が気を張りなおす。後に記される事となる今回の戦いの記録からすると、本当の戦いはここから始まったとされている。
『撃て撃て撃て! 的は大量にある、遠慮せずにぶっ壊せ!』『数が多い、皆気を抜くなよ!』『ぐっ、被弾したか! だが防御の膜のお陰で損傷軽微! まだまだやれる!』
隕石の破砕自体は問題なく進んでいるが、隕石側からの攻撃で被弾によるダメージも明確に受けるようになった。その為、より連合軍の消耗が激しくなっている。
『大和、副砲を解放! 隕石に対して射撃開始します!』
その状況を見て、大和も副砲を展開し主に中型の隕石の破砕を行うようになった。これにより連合軍の負担は大きく減ったが、大和に対する隕石から放たれる熱線攻撃が激しくなる結果に。ソウル・ガーディアンである大和にとっては大きなダメージとはならないが、それでもノーダメージではない。これが今後にどう響くのか、それはまだだれにも分からない。
そして、光が駆る神威参特式もまた、隕石の破砕の為に戦闘を行っている真っ最中であった。
「明らかにこちら側の被害が跳ね上がっているな……向こうも本気を出してきたと言う事か」
呟きながら八尺瓊勾玉で隕石を破砕しつつ、出来る範囲でシールドの役目を果たせる自律兵器の八咫鏡で周囲の機体をサポートする。その為光の周囲にいる機体の損害はほとんどない。
『まだ撃破された人はいないようですが、無視できない損害を受ける人も出てきています』『とりあえず、自力で動けなくなる前に帰って修理を受けるようにさせる、でいいんだよな?』
長門と大和の分体も光のサポートをしながら、今の状況に対する感想を口にした。
「ああ、ダメージが深刻な機体は早めに帰還させて修理なりパーツ交換なりを受けさせる。とにかく、数が減ればこちらが不利になるだけだ。順次交代しながら前線の数を一定に保たなければならない。それと、大和は大丈夫か? 大和の副砲による支援でかなり楽になっているが、大和の本体に少なくない攻撃が命中しているはずだが」
光の言葉に、大和の分体は笑顔で返答。
『大丈夫、あんなの撫でられているようなものさ。過去の太平洋の上で無数の戦闘機を相手にした時に比べれば、あくびが出る位の感じ? あ、もちろんこれは例えだから! ふざけている訳じゃないから!』
後半焦ったように喋ったのは、長門の分体からの圧だろう。静かに、しかしじっくりと迫る万力の様な圧。直接受けたわけでもない光でも冷や汗が流れたので、もろに食らった大和の分体をからかう気など全くない。ターゲットにされないように戦闘に集中することにする光。
『こほん、ならば良いのです。ですが先が見えない戦いです。隕石の数はまだまだ確認できるという報告だけですし……特に大型の隕石が後幾つ来るか……』
大和の分体へ放っていた圧を霧散させた後、長門の分体が今の状況に対する感想を口にする。実際長門の分体が口にしたように、隕石の飛来数は減るどころか増えており、さらに小型の隕石の熱線攻撃が激しくなったこともあり、じわりじわりと前線が下がっていた。
更に明確なダメージを受けるようになった事で下がって修理やパーツ交換が必要となる機体が増えた事で、ますます前線が下がる事に繋がっていた。幸い今の所戦死者は出ていないが……ここから先は分からない。
「だが、絶望には程遠い。ここで踏ん張ればまだどうにでもなる範疇だ。隕石も無限ではないはずだ、絶対に我々の世界を護り切って見せる」
光の言葉に呼応するかのように、神威参特式が吠える。出力を一段階上げ、八尺瓊勾玉から出るビーム攻撃が次々と中型隕石を消し飛ばす。砕いたのではなく消し飛ばしたのである。
(む? 出力を上げたとはいえ、消し飛ばした? 自分が知るカタログスペックよりも攻撃力が高いような気がするが……)
光の気のせいではない。神威参特式は様々な実験を経ての改良を(勝手に)施されている機体だが、また技術班たちによる(勝手な)強化システムが積まれていたことが原因だ。光の魔力を多少吸収し、全般的な攻撃の威力を上げるシステムが動いている故に威力が跳ね上がっていた。
魔力の消耗はわずかであり、その消耗度合いからは予想できないほどの強化状態になるので非常に有用なシステムなのだが、当然欠点がある。システムの生産素材が希少素材を使っているので高くつく事。調整が個人の魔力波長に合わせなければならない為、調整するために必要な時間が非常に長い。具体的に言えば一年弱ほど必要となる。
光は色々な機体の実験にも協力していたためデータがそろっており、神威参特式に限定で乗せることが出来たシステムである。このシステムは、万が一どんな絶望的な状況がやってきても最後まで折れずに戦うであろう光に向けて、技術班がぎりぎりで間に合わせて搭載した一種の餞別の様なものであった。
なお、蛇足であるがこのシステムの稼働率が80%を超えると、神威参特式が緑色のオーラを纏う。日本皇国の技術班はこれをシステムが稼働している事を他の機体に知らせるためだと主張して搭載したが、本音は『スーパーロボットが本気を出したら、オーラに包まれなきゃダメだろ!』であった。能力は間違いなくあるのだが……この技術班は色々頭がぶっ飛んでいるのもまた事実である。
有用であるのは事実である……如月指令はその現実を受け入れ、どこか遠い目をしながらシステムの導入を許可した。如月指令としても、光が生存できる可能性が少しでも上がるならどんな手段でもためらいはしない。しかし、もし神威参特式がヒューマン・トーカー作戦中に発光して凄まじい戦果を挙げた場合は──その後が大変だとも思っているが。
現時点ではまだ発光している所は確認されていない。そのまま終わって欲しいと、如月指令は内心で強く願っていた。




