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神々に抗う人々 その2

今朝足がつってその痛みで悶えました。

運動をしっかりやるようになってから久々だったので、より痛く感じました……

 隕石との戦いが始まってしばらく。戦闘により疲労した結果、判断力の低下によって回避運動に失敗し、被弾するようになった人がちらほら表れ始めた。なので疲労がたまり切る前にそういった人は一度宇宙ステーションに帰し、補給を兼ねて10分ほどの休息を与える形に移行した。先に告げておくが、根性を最初から使うのはおかしい行為だ。根性論は非常事態時に使う物であって、常時使っていれば人はつぶれてしまう。


 今の所隕石を後ろに撃ち漏らす事はなく、隕石の破砕に対する余裕が出てきたからこそできる行動であった訳だが。たった10分? と思う人もいるだろうが、緊張から10分でも解放されるだけでかなり落ち着きを取り戻せる。まさに一息つく、である。事実、10分の休息を挟めば再び動きの精彩を彼等は取り戻せていた。


 順番に休息と補給を行い、光は最後になった。神威参特式は現在被弾ゼロなので、八尺瓊勾玉による多少のエネルギー消耗だけにとどまっている。補給も数分かからなかったのだか、休憩の為10分間は宇宙ステーションの発着場で待機していたわけなのだが──ここに来て、隕石がやってくる方を継続して観測していた班から緊急案件が入ってきた。


『報告します! 中型の10数倍のサイズの隕石が2つ、こちらに向かって飛んできています! さらにこの隕石の周囲には小型や中型の隕石が編隊を組むように配置されています! 1つ目の大型隕石が連合軍との戦闘宙域に突入するまで、後3分14秒といった所です! 更に、大型の隕石には一種の防御膜と予想される銀色の光が纏わりついていることも確認されています!』


 いよいよあちらさんも小手調べを終えたらしい。このままでは防衛網を突破できないと考えたのだろう。いや、もしこの隕石を確固たる意思をもって飛ばしてくる連中がいるならば、だが。いないとしたら、それはそれで恐ろしい。こんな隕石が次々と、こちらの防衛網を破るべくいろいろな手を試してくるのだから……


(小型や中型は問題ないだろうが……大型はまだ一回も破砕していない初めての相手だ。射撃で削れればいいが……もしそれが敵わない場合は危険を覚悟でマルファーレンスの戦士達に近接戦で壊してもらうしかない。銀色の膜とやらが、どんな効果を持っているかによるな)


 神威参特式の中で、光は考える。今までは主に射撃戦のみで破壊できている為危険性は少なめだった。だが、今後格闘による攻撃でないと破壊できないとなると、一気に危険性が跳ね上がる。ましてや突っ込んでくる隕石に対して格闘を仕掛けるのだ、タイミングを間違えばもろに隕石の質量による体当たりを喰らって機体が爆散させられかねない。


 それでも、やらないわけにはいかない。引く事など最初からできない戦いに身を投じている事など、覚悟の上。遺書もすでに書いてきてある。どんなに無謀だとしても、最後まで隕石を破壊するためにどんな手段でも使わなければならない。


『10分経過しました、再出撃をお願いします!』


 光がそこまで考えたタイミングで、整備班から通信が入った。整備班の誘導に従い、光は再出撃を行う。10分間休めた事で、精神的にはかなり楽になっていた。と、再び隕石を破砕している場所に向かっている間、大和の分体が騒ぎ出した。


「マズイぜ、大型の隕石にスナイパーライフルや遠距離魔法攻撃がほぼ効いてねえ! 銀色の膜によって威力を大きく減じられちまっている! 大和の本体から、主砲の発射許可を求められている! いいよな!?」


 大和の分霊の言葉に、光はすぐさま「やってくれ!」と返答を返す。光の言葉を聞いた大和の分体が、本体に対して光の言葉を伝えて……ここまでは静観していた大和がついに動いた。




『報告! やはりあの大型に射撃武器、遠距離魔法は等しく効きません! 恐らく単純に威力が足りてないものと思われます!』


 攻撃を指示し、その結果を聞いたフレグはいら立ちを抑えられなかった。大型の隕石が完全に接近する前に一斉射撃を命じたわけなのだが──結果として大型の隕石には碌なダメージを与えることが出来ていなかった。攻撃を行った部隊が手を抜いたという事はない。大型の隕石前にあった小型や中型の隕石は一瞬で消し飛んだのだから、むしろ普段よりも高威力の攻撃を行ったのは明白である。


(くそ、ならば被害が出る事を覚悟して、我らが戦士に近接攻撃を掛けさせるほか……)


 フレグがそう指示を出そうとしたときに、再び通信が入った。内容は、大和が主砲を放つのでその射線上に入らないようにしてほしいとの事であった。


(ヤマトがついに動くか! ソウル・ガーディアンとなった強大な鋼鉄の船が持つ、あのあまりにも巨大にすぎる砲からどれだけの一撃が出るのか……頼む、どうか貫いてくれ。あの砲でも通じないとなると、かなり苦しい事になりかねん)


 フレグだけでなく、大勢の期待が大和に向けられた。大和は主砲全門を大型隕石に向けて、ロックオンする。少しの溜めの後、半分魔法、半分実弾という混合された砲弾が9つ、同時に発射された。9つの弾丸は流星のように尾を引きながら大型の隕石に向って飛来し、直撃。凄まじい光と熱量、そして爆発による衝撃が周囲を襲った。連合軍側の機体は揺さぶられ、小型の隕石は消し飛んだ


(((((どうなった!?)))))


 大勢の人が、その爆発が晴れるのを見守り……そして、驚喜した。神威弐式やソーサラー、ランチャーの遠距離による最大出力でも傷一つ付けられなかった大型隕石が、粉々に砕かれていたからである。更にまとわりついていた銀色の膜も消し飛んでおり、各国の機体による追撃で簡単に隕石が破砕された。


「あれが大和の本領か!」「素晴らしい、あれが日本皇国のソウル・ガーディアンのヤマトか!」「何という一撃……だが、これで希望はより大きくなった!」「巨大隕石何するものぞ! ここには俺達と大和がいる! ただの一つだって抜かせるものかよ!」


 各国の戦士達が次々に大和の主砲による一発に驚愕し、そして喜んだ。絶望を食い破る鉾が自らと共にある事を目の前の出来事が証明したからだ。


『ヤマトには大型隕石の破砕以外頼るな! 我々が出来るところは我々でやって、ヤマトにはあの一撃をいつでも撃てるように備えてもらうのだ! 良いな!』


 フレグの言葉に誰もが了承の意思を伝え、小型や中型の隕石を次々と破砕する。やがて、2回目の大型隕石が迫ってきた。今回もヤマトがその砲身を隕石に向け、ロックオン。再び大型隕石が激しい光や爆発に包まれて見えなくなる。それらが収まった後の光景は、連合軍が望んだ結果そのものであった。見事に破壊され、連合軍の機体の火器で容易く処理できるだけの物になり下がっていた。



(何と凄まじい力よ。あの時、あの瞬間にこのヤマトがいてくれたのであれば……もっと多くの命と明日が守れただろうにな)


 破砕活動を行いながら、機体と一体化した形で参戦している過去の大魔導士、今はソウル・ガーディアンとなっている彼はそう思わずにはいられなかった。大和が破砕した隕石よりもはるかに小さいものを自分は防ぐので精いっぱいであり、それで肉体を失った。だが、目の前の巨大な船のソウル・ガーディアンである大和はどうだ。


 あれほどの巨大な隕石を真っ向勝負で粉砕して見せたではないか。これだけの力を秘めたソウル・ガーディアンはそうそういない。いたとしても、ここまで人と共に共闘は望めない。普通のソウル・ガーディアンはその場所を護るだけに特化した存在。このように星々の世界に出る事はもちろんだが、その場から離れる事も基本的には出来ない。


(儂は、このゴーレムのお陰で動けるんじゃがな……これとて、人としての意思が強く残っているから出来た芸当……一方で大和は元から船であったという。にもかかわらずこうしてこのような場所で人と共に戦っている。その奇特さを、本当の意味で理解できている者は少なかろう)


 隕石の破砕活動の手は休めず、ソウル・ガーディアンとなってそこそこ長い大魔導士は大和を眺めた。頼もしいと思うのは本心であり、あの時になぜ我々は日本皇国と関われなかったのかと嘆くのもまた本心である。まあ、時間軸で言えば、この大魔導士の存命の時に大和は存在していなかったのだが……


(じゃが、今ならば。今ならばこの神々の試練に立ち向かえておる。あの時何とか守り切った命の子達が、これから先も生きて行ける。それだけでも良しとしなければならぬか……今回の神々の試練は、儂の時よりもはるかに激しい。これだけの試練がマルファーレンスに降り注げば、首都だけでなくどれほどの街が土の下に沈んだか想像もつかん。そんな時に彼らがいるのは、もしかするとこれこそが……)


 大魔導士の思考はより深くなっていく。これだけの隕石が降り注げば、一つの国が傾く程度では絶対に済まない。下手すれば、世界そのものが潰れかねなかった──そこに現れた日本皇国とその技術。それを求めて、世界が彼らを呼んだのかもしれない。その様な考えに大魔導士はたどり着きつつあった。それが真か否かは、世界しか知り得ない事だが。

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