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12月24日 神々に抗う人々その1


 12月24日。地球にいた時は日本の運命を決める一大決戦を行った日であり、そして今日はこの世界のこれからを決める事になる。もはやクリスマスというイメージは薄れており、運命に抗う日としての位置づけが日本皇国民の中では強くなっている。


 今は8時ジャスト。全ての準備を終えた各国の機体達&大和が神々の試練がいつ来てもいいように隊列を組んでいた。最初の隕石がやってくるまで、あと17分……隕石の接近に関する情報は観測している魔術士&地球の技術班達から逐一入って来ている。接近予定時刻に変わりはなし、予定通りに進めて問題なしと事。


 集っている戦士達は、ひたすら隕石がやってくる方向を見つめている。それぞれの武器を構えながら、ただひたすらに待っている。緊張、恐怖、苛立ち……様々な感情が絡み合いながらも、ただひたすらに待っている。普段なら17分という時間はすぐ過ぎ去る。だが、皆様も覚えがあるだろう。僅かな時間が、いつ終わるんだと思えるほどに長く感じた事を。


 今の各国連合の戦士達はまさにその状態であった。一分が数時間に感じられ、いやでも緊張感を煽られる。


 そんな時間の果てに、それは来た。赤い炎に包まれ、こちらを圧し潰そうとしてくる神? からの試練が。宇宙空間なのに炎に包まれているのは、魔法が何らかの影響を及ぼしていると思われるが、それは今はどうでもいい事である。


『来たぞ! 予定通りに射程の長い武器を持つ機体から射撃開始! 近接戦闘が得意な機体は射撃機体の射線を塞がぬように!!』


 その指示とほぼ同時に、日本皇国、フォースハイム、フリージスティの機体の中でも射程が長い武装を持っている機体が射撃攻撃を開始した。宇宙空間故にけたたましい音こそしないが、発射された幾多もの弾は迫力十分であった。


放たれた弾は次々と隕石に命中し、次々と隕石を砕いて塵に返していく。十分な効果が出ている事は、言うまでもなかった。


『効果あり、我々の攻撃は神々の試練に通用している! 射撃の勢いを緩めるな! 弾幕を張って迫りくる試練を粉砕せよ!』


 通信越しに、気勢を上げる声が飛び交う。攻撃を行い、攻撃が通じた事により、攻撃が通じずに圧し潰されて負けるのではないか? という誰もが持っていた不安が明確に解消されたのだ。当然、士気は上がるしやる気もみなぎる。次々とやってくる隕石は粉砕され、チリと化して消えていく。


 が、徐々に隕石の数が増えてきたことにより、長距離射撃だけでは処理しきれなくなってきた。なので当然、ここからはライフル、ガトリング、クロスボウの外見を模した射撃武器などの中距離系武器を持つ機体が射撃戦に加わった。


これらの中距離射撃系も隕石に通用した。遠距離系と比べると弾一発の威力は低いが、連射能力は高いので削るように隕石を砕いていく。


『よし、よし! 行ける、行けているぞ!』『やれる、歴史は今日変わる!』『訓練通りでいい! 問題なくやれる!』『俺達が今日、新しい歴史になるんだ!』


 通信越しに、戦っている戦士達が興奮気味にかわす言葉が行きかう。先ほども上げたが、どれだけ訓練した所で、未知の相手には己の力が通用するのかはやってみなければ分からない。そして今、やってみて問題なく通じると理解できた。そうなったら、生まれるのはなにか? 希望である。勝って大事な者を護れるという希望。


 その希望を感じていたのは、光も同じである。地球にやってきたあの隕石から国を護る為に、国民の明日を護る為に、相棒であった鉄はその身を燃やし尽くして消えた。その己が身と引き換えに日本を護った。あのような事がまた繰り返されるのかもしれないという不安は、常に光の心の内にあった。


 だが、今はどうだ。神威弐式が、ブレイヴァーが、ソーサラーが、ランチャーが、隕石を砕いて消し去っている。打ち漏らしは存在せず、士気は上がる一方。この状況を見て、光は隕石の破砕を行いながらもひとまずは良しと安堵の表情を浮かべていた。


「今ん所は余裕だな」「油断はできませんが……今は貴女の本体である大和の大砲に頼るほどではないですね」


 大和と長門の分体も、今の状況をそう評した。が、長門の分体が口にした通り油断はできない。まだまだ神々の試練は始まったばかり……ここら辺はまだ小手調べと言った所だろう。が、そんな事を口にしてわざわざ上がった士気に水を差すようなことをするのは愚かに過ぎる。引き締めるべきときに引き締める程度で良いのだ。


 光の駆る神威参特式は、今の所勾玉型の自立兵器である八尺瓊勾玉による射撃攻撃のみを行っていた。出力を絞った攻撃で簡単に隕石を粉砕できるので、節約できることをはしっかりと節約して今後に備えている。一方で各国の機体は、弾を撃ち尽くしたりして補給に回っている機体から弾薬の融通を受けたりしている。


 補給係は弾薬を提供したらすぐさま宇宙ステーションに帰還し、補充を行う。この流れが1時間ぐらい続いた。次の波とも言うべき隕石がやってきたのは、このタイミングであった。


『今までよりもサイズが大きい隕石が多数接近! 警戒しながら排除に当たれ!』


 今までの隕石を小型と評するならば、二回りほどサイズが大きいそれは中型と言うべきか。小型の隕石に混じって、かなりの数が飛来してきている事を観測班は確認した。当然戦士達に緊張が走るが……アンチマテリアルライフルの神威弐式版を構えた一人の自衛隊員がその隕石の一つを遠距離狙撃で狙い撃った。


 弾が命中し、中型の隕石は2つに割れた。更なる追撃を受けると塵となる。攻撃が通じるとなれば、緊張は収まる。


『よし、遠距離班は大きめの奴を積極的に攻撃して割ってしまおう! 割れれば後は今までの隕石と同じ感じで消し去れる! 中距離が得意な機体は、今まで通りに隕石の排除を頼む!』


 アンチマテリアルライフルで撃ち抜いたその自衛隊員の言葉に、皆が従った。遠距離班はこれから中型の隕石に積極的に攻撃を仕掛けて隕石を砕き、小さくなったら中距離班が消し飛ばす。中型の隕石によって排除難易度は上がったが、戦士達の技量を越えるレベルの難易度ではない。


(ここまでは想定の内だ。問題はこの先……地球を襲った時の様な巨大な隕石がやってきた場合だ。大和もいるし、大勢の戦士もいる。自分一人でどうにかする必要はないのだが……あの時の経験からくる勘が告げている。覚悟はしておけと)


 いい雰囲気の中でヒューマン・トーカー作戦が進む中、光だけがそんな漠然とした不安を抱えていた。その予感が当たるかどうかはまだ分からない。だた、その予感があるからこそ、光に油断の2文字だけはない。八尺瓊勾玉で次々と隕石を破壊しながらも、光はこの先にあるかもしれない巨大な隕石を思い浮かべていた。


 だが、事態はまたも動く。それは完全に想定外の事態であった。


『隕石が、隕石から突如魔法攻撃が飛んできました! 威力はそれほどではありませんが、これは明らかに攻撃です! この展開は想定されていません!!』


 そう、隕石が纏った炎から熱線の様なものを各機体に向けて射出するようになったのだ。隕石が魔法攻撃をしてくる、なんてことは流石に考えられていなかった。だが。この浮つきかけた状況にフレグからの激が飛ぶ。


『それがどうしたっ! お前たちは戦いの最中に敵から攻撃を受けたからと言っていちいち大騒ぎをするような素人なのかっ! 攻撃が飛んでくるなら避けろ、防げ! そして反撃しろ! 今まで何度もやってきた事だろうがっ! 出来ないなどと口にするのかっ!』


 フレグの激に、戦士達もそうだ、攻撃してくる相手なら今まで通りに避けたり盾で防いだりしながら反撃すれば良いだけじゃないかと落ち着き始める。幸い隕石からの攻撃によるダメージはバリアフィールドによって無効化されており、機体そのものにダメージを受けた者は存在しなかった。


『もっと動け動け! 訓練の時に比べればこの程度の攻撃などそよ風にもならんだろう!』


 そう言いながらフレグは次々と飛んでくる熱線をすべて回避しながら逆に隕石をボウガンを模した射撃武器で撃墜して見せる。


『こんなもんだ、お前らもやれるはずだろうが! 焦らず今まで通りにやればいい!』



 フレグの行動をもって示した姿を見て、焦りが出てしまった戦士達も完全に冷静になり、そこからはちゃんとバリアフィールドに頼らない回避運動を交えながらの戦闘行為が出来るようになった。が、この状況を如月指令を始めとした後方で指示を飛ばす人々は苦い思いで見ていた。


「あのように隕石が熱線を飛ばすような行動は想定外でした。機体がダメージを受けるのは隕石による衝突だけだと思っていただけに、計算が狂いました。しかし、星々の世界で神々の試練を迎え撃ったのは今回が初めて……こちらの世界に長く生きてきた人々も、情報を持っているはずがありませんし……」


 如月指令の言葉に、各国のブレインたちも表情を曇らせている。色々な常識がすでに壊れている以上、現場で起きている事をすべてきちんと現実と受け止めた上でここからどうしていくかを考えなければいけない。


「ひとまず、フレグ殿のお陰で混乱が起きる状況はすぐに鎮静化されたのはありがたい話ですが……前線にばかり負担をかける訳にはいきません。すぐさまあの隕石からの攻撃をより明確に分析してどう防ぐのが効率的なのかを、前線の人々に伝えなければなりません」


 この言葉に全員が頷き、現場から入ってくる各種情報から分析を急ぐ。とにかく、あの熱線を無力化とまではいかなくても被害を抑えるための手段を見つけ出せればかなり負担が減る。そうと決まれば、後は行動あるのみと多くの研究員が走り出す。ヒューマン・トーカー作戦はまだ始まったばかり。神が勝つか人の答えが勝るか、勝負はここからである。

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