第012話 同窓会に私服で来たら周りはスーツってヤツあるじゃん? 誘われるだけありがたいだろっつーの
お久しぶりです。のんびり書いていたら長引いてしまいました。すいません。
「アヒャヒャヒャヒャ! テメーオレの腹筋割るつもりかよつーか息ができねーよヒーッヒーッ」
「できれば事情を説明してもらいたいものだね。ププッ」
「死にてえ……」
あの後すぐにファンクラブの連中の視界外に逃げれはしたが、何十人も校内を巡回していたから完全に逃げ切るのに長引いてしまって、着替えの時間がなくなってタキシード姿で授業を受けた。苦肉の策としてカナリアマスクは投げ捨てたが、みんなの好奇の目がもう痛いのなんの。
女子からは当然イタい奴と見られたし、男子からは女子の注目を集めようと涙ぐましい努力をする可哀そうな奴と見られた。五時間目の担当だった占部先生から「学校は出会いの場でもあるからねえウフフ」と勘違いされる始末。もうこんな世界イヤだ。
「そーそー実は昼休みの時よー、小鳥遊先輩が襲われたんだぜ。それも首から上が鳥でメッチャ足の速いタキシードの奴によ。オレそんな変態許せねーよ」
「「…………」」
嘉隆が右拳をギリギリときつく握りながら怒りをにじませて語る内容に、俺は引きつった笑みで応え、イインチョは「え? 目の前に、え?」といった顔で俺と嘉隆の顔を交互に見てくる。
この三人の様子を見て玲はクスクスと笑い、
「『ま、まさかあなた様は……鳥王様でございますか!?』『いかにも。私はフェザーウィン』いぢゃぢゃぢゃぢゃエビ固め腕ひしぎ三角締めの三連コンボぢゃと!?」
「折られたいか?」
「もっと、もっと強くお願いします!」
「これ体罰だってこと分かってる!?」
逆に興奮する玲を見てここれだと逆効果だと思って解放することにした。
そして俺は三人から離れ、
「さて……」
ある奴の許に行くことにした。
そいつは自分の席で一人不機嫌そうな目をしながら小説を読んでいて、なおかつ誰も近寄らせないような不機嫌オーラを辺りにハリネズミの針みたいに放射していた。
だが俺は知っている。
「陽菜、話があるから来てくれ」
それは意図的にやっているということを。
「………………何よ」
「この服装をツッコんでほしかったがまあいいや。来てくれるな?」
「イヤだと言ったら?」
「頼む」
「…………」
少し考える様子を見せた陽菜は間もなく立ち上がって、先に行くように促す仕草をした。無視されることも考えられたが、これを見て昨日玲が言っていた、「世の中で本当に話の分からない人間はいない」ということはまんざら間違いでもない気がしてきた。
五、六時限の間の休憩は十分しかないから一応さっさと話すことにして、俺は教室を出て階段の踊り場まで陽菜を連れていった。
「なんの用よ。アタシ忙しいんだけど」
「本当に忙しかったら急いでやるよ」
「…………」
それとなく気づいている風を装う。これで包み隠さず話してくれたら嬉しいんだが……。
「単刀直入に言う。お前は今、どんな目に遭っている?」
もちろん、こいつが何をされているかは分かっている。問題はどうして(・・・・)そんな目に遭うかだ。
「前に言ったわよね。なんでそんなこと言わなきゃならないのかって」
「なんだよ、言いたくない理由でもあるのかよ」
「それも言ったわよ。アタシとアンタはただの腐れ縁の関係であって、それ以下はあっても以上はないってね」
「だったら俺にも理由がある。俺と陽菜はたしかにただの腐れ縁だ。でも、だからこそ心配してもいいんじゃないか?」
「……別に何もないわよ」
「嘘つけ。だったらどうしてここんところ俺たちと一緒に弁当食うんだよ。何か言いたいことでもあるんじゃないのかよ」
こんな風に鋭く指摘できたのは、昨日の一連の出来事によってもしかしたらと思ったからだ。
「…………」
「相談にはいくらでも乗ってやる。むしろ教えてくれ。心配なんだよ」
「…………」
「男子と関わりたくないから話さないっていうなら気にするな。腐れ縁とでも思っとけよ」
「無理よ」
一言だけ短くそう言って陽菜はもともと伏し目がちだった顔を逸らす。
「男はみんな最低よ。どれも頭の中はいつも自分と女のことばっかり考えている下衆でクズな生き物なのよ。アンタも同じよ。どうせアタシのためとか言っていやらしいこと考えているんでしょ」
「そんなことは……」
俺の返答を聞く前に陽菜は背を向けて階段を上がっていった。
そして俺は離れていく陽菜のつぶやきを聞いた。聞いてしまった。
(「それよりも最低なのは、アタシなんだけどね」)
何も言えなかった。そのつぶやきと背中は哀愁が漂っているなんて生易しいものではなく、後悔や懺悔の念が満ちていて今にも泣きだしそうなものだったからだ。
そう感じたのはただの勘だが俺はそれが鋭い方だから、たぶん間違いではないだろう。
だったら陽菜は、いったいどんな問題を抱えているんだ?
陽菜が去って見えなくなったのを確認して、俺は話をするためにに守り神を呼ぶことにした。
「玲、そこにいるなら出てこい」
「ぬ、なしてバレたのぢゃ。親父は達人だったかのう?」
三階から四階へ上がる階段を陰にしていた玲がそこからひょいっと体を出し、踊り場に向かって下りてくる。
「お前がどこにいるのかと思って視界をリンクしたら俺が映っていたからだ。お前こそなんでいるんだよ」
「いやのう、なんとなくどこに行くのかと気になってついてきたのぢゃ」
「そうか。それより喜べ玲。放課後お前の好きそうなことをやるぞ」
「なんぢゃなんぢゃ? 面白そうなことぢゃったらどんと来いぢゃ!」




