その5 美和、天子ちゃんと異世界の江戸へ
その5 美和、天子ちゃんと異世界の江戸へ
投稿します。読んで頂けると嬉しいです。
天子ちゃんは美和を連れて神の道を進む。
美和はアニメやラノベみたいな異世界が現実にあることに驚いていた。しかも弁天様に案内されてる!
「天子ちゃん、いや弁天様。異世界の江戸って?」
「天子のままでいいぞ。美和ちゃん。
この世界は色々な世界軸があって、それぞれの世界が存在している。私がいる世界は美和ちゃんの世界と近いのじゃ。なにかの拍子に交わる事もある。美和ちゃんの世界から転生してきた者もおるぞ。」
「え!そうなの?本当にそんなことあるんだね〜」
「ああ、着いたぞ。美和ちゃん」
神の道から出てきて、まばゆい光が落ち着くと……
「うわぁ!なんて素敵!」
着物女子の美和にとっては、一面に広がる夢の様な世界。それが異世界の江戸だった。
空はとても澄んで青々として、鱗雲が秋空を彩っている。着物で行き交う人々。物売りの賑やかな声。
色とりどりの風車売り、威勢のいい魚売り。お店からも客とやり取りする声が聞こえる。
「まるで浮世絵の世界、色んな人がいて賑やかだなぁ。ほんと楽しい!こんな景色が見れるなんて……
あれ?レースの着物を着てる人がいる!あそこの人は、フリル着物だよ!あれ、私の世界のものなんじゃあ」
美和は思わず二度見している。
「ああ!あれはこれから行く、天女楼の心花魁が流行らせた『心好み』の着物じゃ。心は転生者だし、あちらで好みのデザインだったのかもな」
「心っていう人、私の世界からの転生者なの?前に、私が看護師って言ったら、心と同じって言ってたよね?」
「ま、そうじゃな。それは会ってから聞くが良い。ほら、吉原に着いたぞ」
「わあ……」
吉原に着いた頃は黄昏時。徐々に暗くなっていく中、ポツポツと灯りが灯されていく。
目にも鮮やかな朱色の建物が並び、
その中でひときわ目立つ豪華絢爛な店が天女楼だった。龍や牡丹の豪華な彫り物が施された極彩色の柱が並ぶ入り口を、天子は美和を連れて入っていく。
「あれ、どうやって女人が入ってきたんだい?ここは吉原。女人の客は入れんよ」
女将が驚いている。
「私は特別なのじゃ。入り口にも私は彫られているぞ。女将、心花魁を呼んで欲しい。天子と言えば分かるでの」
天子が笑顔でそう言うと、体がキラキラ光りだした。
「はい、わかりました」
女将が不思議と素直になり、心を呼ぶように命じる。
(吉原の門の天女の像は弁天様だって、何かで言ってた気がする……)
すると、バタバタと音がして鮮やかな打掛を着た一人の女性がやって来た。
「天子って、やっぱり弁天様でありんすか!」
心花魁が慌ててやって来た。
乳白色から裾に向かい徐々に橙色になる地色に、様々な菊が染めと刺繍で表現された打掛と、べっ甲で作られた菊の簪が、初秋を感じさせる装いだ。
(わぁ、まるで浮世絵の美人画を見てるみたい)
「仕事の前にすまないねぇ、心」
「いえ、こんな所までおいで下さるなんて。一体どうなさったでありんすか?ひょっとしてお隣の子は私の前の世界の子では?」
心花魁は弁天様と美和を見てかなり驚いている。
美和も慌てて会釈する。
「はじめまして、心花魁。そのお着物姿、まるで秋の菊の精みたいで素敵です。憧れます」
「うわぁ、ありがとう。弁天様、なんでありんすか?このものが良く分かってる可愛い子は!」
「そうであろう!美和ちゃんは、着物女子で私の友達なんじゃ。推し活仲間でもある。
私はこの美和ちゃんにあちらの世界で凄く世話になったのじゃ。
だからおめかしして、団五郎の所に連れて行きたい。心、忙しいだろうが、私と美和ちゃんをコーディネートしてもらえんかの?
礼はまた改めてさせてもらう」
「礼なんて!弁天様、大丈夫ですよ。
え、まって。弁天様と美和ちゃんに?
え〜っと、じゃあ双子コーデにする?
いや、イロチにして姉と妹コーデ……
ちょっと!これはかなり楽しいでやんす。
さぁさぁ、二人とも入って!」
心は二人を自分の部屋に案内した。
心花魁の禿、豆助と紅が渋々後に続く。
「ああ、また治助様の所に行くのが遅れるな……」
二人はすっかり諦めたようだ。
「ええっと、まずは美和ちゃんね」
「あの〜心花魁って私より随分若くないですか?
なのに貫禄が凄いですね。
なんかベテラン看護師の佇まいを感じるのですが……あ、天子ちゃんから前世は看護師だったって聞いて。私もなんです」
「あらやだぁ何か出ちゃってる?
私、前世では四十六歳で死んじゃったから。借金もあったからバリバリ看護師で働いてたのよ〜」
(明るい。なんか突き抜けてる。
花魁って、本当は色々大変そうなのに)
「美和ちゃんには、ショッキングピンクの地に縞が粋な、フリル着物にしよう!帯は前世のエメラルドグリーンに近い青磁色。ショッキングピンクの秋薔薇が刺繍してあってロマンチックよ。そうだ!半襟を団子模様にして帯留めは3色団子にしよう。靴はブーツが可愛いね。うふふ、楽しいなぁ」
心花魁はあっという間に美和のコーデを完成させ、凄い勢いで着付けをする。
「さて、弁天様は……。美和ちゃんとイロチの少し淡めの桃色の地に縞のフリルの着物で、帯はこれも美和ちゃんとイロチの黒の帯。同じく秋薔薇が沢山刺繍してあって可愛いよ。半襟と帯留めもお揃い、団五郎リスペクトだね!
姉妹コーデ、二人とも良き!なんて可愛いの〜」
「これ、コーデに足してくれんかの」
弁天様が取り出したのは、すみれ堂で二人がプレゼントに頂いたお揃いのヘッドドレスだ。
「わぁ可愛い〜!二人でこれ付けたら完成じゃない。最高!」
心花魁が、嬉々として二人の髪にヘッドドレスをつける。
「よし、これなら今日の二人は怖いものなしね。じゃあ楽しんで行ってきて。美和ちゃん元気だしなよ!」
(何で分かったんだろう……
私、やっぱりこの人に何かを聞いてみたい)
「あの、心花魁は何を励みに働いているんですか?私、よく分からなくて……迷ってるんです」
心花魁はじっと美和ちゃんを見た。
「う〜ん、吉原には、たまたまいる事になったけど。看護師のスキルがあったおかげで少しだけ環境改善が出来たんだよ。それが嬉しくてね。今度仲間達と、梅毒治療薬を異国に探しに行くんだよ。理由は他にもあるけど、周りの人の健康がやっぱり気になっちゃうんだよね。」
「なんかそれ、分かります」
「そっか。ならどんな場所でも、美和ちゃんらしく働いていけるよ。大丈夫。私らそんな性だから」
「心花魁、お話を聞いて何だか気持ちがスッキリしました。
あとこのお着物も!こんなに素敵な格好、本当にありがとうございます。天子ちゃんもありがとう」
「楽しんできて!美和ちゃん、その着物はこの世界の記念にプレゼントするよ。あ、弁天様はレンタルだから後で返しに来てね〜」
「え、私にはくれんのか!」
「いいけど、預かっとくよ。また着付けに来てください。美和ちゃんと二人でね!」
「うわぁ心、ありがとう」
二人は心花魁と分かれて、歌舞伎座に向かった。
歌舞伎座に近くなってくると次第に明るく活気がある通りになってきた。歌舞伎座で観劇用の食べ物を売る屋台。弁当売り。
歌舞伎をより楽しむ為に、これらを買い込む人でより賑わっている。
「天子ちゃん、もうわかったけどこれから歌舞伎座に行くんだね。天子ちゃんは団五郎という人が推しなんだね」
「そうじゃ。溢れる様な色気で『流し目団五郎』と言われる、習志野屋一の二枚目俳優、浦安団五郎じゃ!団五郎は本当に凄いぞ!
美和ちゃん、楽しみにしといてくれ」
「うん、天子ちゃんの推しを見るのも楽しみだよ!」
美和はいつの間にか、自分のモヤモヤした気持ちが次第にスッキリしていくのを感じていた……
しかし、この後美和は、心を全て持っていかれるような体験をするのであった。
次回の投稿は9月29日(火)19時です。
(投稿日付間違っておりました。すいません)
よろしくお願い致します。
このお話は「早死して転生したアラフィフですが、異世界の江戸では人生愉快痛快です!
のスピンオフになります。




