その3 すみれ堂は夢の世界
その3 すみれ堂は夢の世界
投稿します。よろしくお願い致します。
「きゃあ!またソフトクリームぶつけられた」
「もう何回目?店でも頭からコーヒーこぼされるし何で?
ひょっとしてこれは……」
◆
「何ということだ。想像を絶するとはこのこと!
なんと素晴らしい空間じゃ!」
「本当!まさに着物女子の夢の店だね。来てよかったよ〜」
秋晴れが清々しい京都。骨董屋で天子が香木を売り、十分過ぎるお金ができたあと、二人は気になっていた人気の着物屋さん「すみれ堂」に来ていた。
オリジナル生地の着物、レース着物、ラメの半襟や可愛いヘッドドレスなどが、所狭しと置いてある。
ディスプレイセンスも美しく素敵らしい。
天子と美和は目がハートになり、思わず二人で手を組んでぴょんぴょん跳ねている。
「そんなに喜んで下さって嬉しいわ!ゆっくり見ていってね」
店主さんも嬉しそうに声をかける。
「はい!」
二人はもう興奮が止まらない。
「美和ちゃん、この裾から魅せるレースの裾除け、ハニミルのモモ君の言う、『まさにアンビリーバブル』じゃな!」
「うん!天子ちゃん。このふわふわな花柄帯も『まさアンビー!』だよ」
店の奥では、店主さんがトルソーにコーデした着物を着せている。
「美和ちゃん、私は一度やってみたいことがあったのじゃ。いいかの?」
「なになに〜?この際だから何でもやってみようよ!」
「よし、そうじゃの。やってみよう!
もし、店主。私と美和ちゃんは推しのハニーミルクのライブに行く。推しはピーチピンクのモモ君じゃ。
参戦用に全身コーデを二人分頼めないか?
私はすみれ堂のコーデが大好きでな。
一度お願いしたかったのだ」
「二人分?」
美和はびっくりする。
「美和ちゃん、これはここまで連れてきてくれたお礼なのじゃ」
「いやいや、天子ちゃん!それは良くないよ。
私も今日は全身購入予定だったからさ。
ちゃんと二人からお願いしよう!その方が絶対いい」
店主がくすくす笑っている。
「わかりました。二人とも全身コーデしましょう」
店主は着物や帯、小物を二人に当てながらコーデを決めていき、二人ともそのコーデに着替えてみた。
「これでいかがでしょう。ハニミルのモモ君推し活コーデです」
美和は、少しオトナっぽいグレーを含んだピンクの桜鼠色の色無地の着物。
そこにグレー地に花柄の帯を、パタパタ結びで華やかに結ぶ。
推しのモモ君に合わせた桃の帯留め。
濃いピンクの帯締めと薄いグレーレースの帯揚げ。
半襟には桃の花の刺繍が一面に入っている。
「おお!美和ちゃん、良き良き!
すっご〜く可愛いな。よく似合っとるぞ。」
「ありがと。天子ちゃんもすっごくいいよ!」
天子は、桜色のレース着物。
大きく桃が刺繍された濃いピンクの帯を銀座結びに。
黄緑の帯締めにレースの帯揚げ。
半襟は美和とお揃いの、桃の花の刺繍のものだった。
「天子ちゃん、よく似合う。二人ともモモ君オマージュだね!」
二人は鏡を見ながら、お互いに褒めあっていた。
「リンッ!」
急に大きくドアベルが鳴った。
「わぁ、やっぱこれはないわ~」
「こんな着物浮くって!」
突然大きな声で喋りながら二人の女子が入ってきた。
茶髪で派手な色のジャージの上下。
一人は抹茶ソフト、もう一人は生クリームもりもりのフラペチーノを手に持っている。そして女子達は
「ないわ~」
「いや、派手すぎ」
と繰り返しながら片手で着物や小物を広げてはポイッと置き、見て回る。
「お客様、食べ物はご遠慮下さい」
店主がそう言った瞬間、ポトリ。
抹茶ソフトのクリームが、店の帯に落ちてしまった。
「やっば〜い。落ちちゃった。なんかごめ〜ん」
……そう言って、女子達は外に出ようとした。
「おい馬鹿女、そのくらいにしとけ」
天子が低い声で女子達に声をかけた。
「ここは心根の美しい女人がくる所。
そもそもお呼びでないのだ。
そんなお前達に帯を弁償してもらうのは簡単じゃ。
だがお前はその美しい帯を使うこともなかろう。
それに帯が可哀想だ。
だから夢の国に土足で入ってきたお前達には、私から罰を与えよう。心して受けよ」
天子がそう言うと同時に、急に周りが暗くなってきた。
女子達は一瞬驚くが、
「やだ、ばっかみた〜い。罰?一体なんなのそれ。
ふふ、やれるもんならやってみなよ。じゃあね〜」
と捨て台詞を残し、店を出ていった。
天子はすかさず店主を見る。
「店主すまぬ。その帯、私が買い大切に使おうぞ」
「いいえ、私も聞いていて胸がすっとしました。
帯は店でクリーニングに出すのでご心配なく」
店主は笑顔で話す。
「そうか?ならいいが」
「胸がすっとしたお礼と言ってはなんですが……
お二人に私からこれ、プレゼントさせて下さい。
はいっこれ!二人でおそろ。絶対に素敵ですよ」
そう言うと、店主はお揃いのピンクのリボンとレース使いのヘッドドレスを、髪のサイドに付けてくれた。
「うわぁ、これ素敵だね。もっと可愛くなったよ!
天子ちゃん」
「うん、美和ちゃんもじゃ。
やはりここは夢の国であったな!もう最高じゃ!」
また二人は嬉しくて手を握りぴょんぴょん跳ねていた……
◆
天子に罰と言われ、店を出た女子達は、ソフトクリームを持った人から立て続けに3回もソフトクリームをぶつけられる。
慌てて店に入ると、コーヒーを持った客が目の前で転び、女子達はコーヒーを頭から浴びてしまった。
「何で?これってひょっとして罰?」
驚いて店を出ると、頭上に鳩が飛んできて……
「ぎゃ〜」
声にならない叫び声が京都の秋空に響いていた……
「いよいよ明日じゃの!」
「うん、美味しいご飯も食べたし。でもダブルブッキングでホテルが無料で案内してくれたこの町屋。凄く素敵だね!こんな所に泊まれるなんて」
「そうか?町屋はそんなに珍しくはなかろう」
「嫌だぁ!天子ちゃんはお嬢様だから珍しくないだろうけど」
「いや、そうじゃないが……」
「さぁ!明日に備えてもう寝よ!」
二人は幸せいっぱいで床についた。
その時美和は、明日起こる大ハプニングについて、全く予想だにしなかったのだ……
次回の投稿は9月22日(火)19時です。
これからは19時にしますね。変更してすいません。
よろしくお願い致します。
このお話は「早死して転生したアラフィフですが、異世界の江戸では人生愉快痛快です!
のスピンオフになります。




