その2 やるねぇ、天子ちゃん!
その2 やるねぇ、天子ちゃん!投稿致します。
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「天子さん、そろそろお弁当買って新幹線に乗りましょうか」
美和は、ずっとキョロキョロしながら歩く天子に話しかけた。
「あの〜天子さん、はよそよそしいな。できれば天子ちゃんでお願いしたいのぉ。その、敬語とやらもなしでな」
「そうですか。じゃあ天子ちゃんで!私のことは……」
「美和ちゃん、じゃな!」
「わ〜!美和ちゃんなんて、久しぶりに呼ばれたよ」
「そうなのか?まだ若い娘なのに」
「いや、もう若くないよ。今日で31歳だし」
「充分若かろう。私はう〜んと……忘れたな」
「天子ちゃんそんなぁ、私に気を使わなくていいよ。どう見たって20代じゃない」
「そうかの?じゃあそれで!」
そんな話をしながら駅弁売り場についた。
「初めての駅弁じゃ!これは選びがいがあるの〜」
「本当?初めてなの!それは嬉しいでしょ!色々あるからさ、楽しいよ!」
そしてお弁当を選び、会計の時。天子が何やら慌てている。
「しまった!平松の宮に財布をもらうのを忘れた」
「え!天子ちゃん、電子マネーは?」
「うん?このスマート何とかか?確か平松の宮がこれは銭が入っとるといっておったな」
天子はスマートフォンをブンブン振っている。
「銭の音がせんが……」
「やだぁ、ちょっと貸してみて」
ピピッ。美和が天子のスマホでお弁当の会計を済ませる。
「天子ちゃん、スマホにはもうお金千円しか入ってないよ」
「なんと!困ったもんだ」
天子は途端にしょんぼりする。
(何だろ、急に周りの空気まで暗くなった気がするなぁ)
「いいよ、いいよ。帰りに平松の宮様と待ち合わせしてお財布もらおうよ。それまで私が立て替えておくよ」
「美和ちゃん〜!ありがとう」
天子は途端に笑顔になる。
(うん?なんだか周りが急に明るくなったような……気のせい?)
こうして二人は新幹線に乗車した。
「先ずはお弁当食べようよ。天子ちゃん」
「うん!初めての駅弁じゃな。松江が作るくもつ、じゃない弁当は食べているが」
「松江ってお母さん?」
「いや、仕出し弁当を作ってる」
「凄!天子ちゃん、お嬢様〜
仕出し弁当なんてなかなか頼めないよ」
「そうか?だがこの駅弁も美味いぞ」
そう言いながら、お弁当を頬張っていた天子が急に箸を止める。
「そうじゃ!良いことを思いついた。
美和ちゃん、京都に質屋はあるかの?
これを売って、銭を作ろう」
天子は懐から、細工が細かそうな螺鈿細工の櫛と、簪をだした。
「質屋はあるけど、これだと骨董屋の方が良さそうだね。京都なら多いと思うよ。
でも、こんなに綺麗な物を売らなくても。お金は後で貰えたらいいし」
「いや、文無しは何だか心もとなくてな。
櫛や簪はまた作ってもらえば良かろう」
「やっぱりお嬢様だよ、天子ちゃん」
「いやいや、お嬢様ではないぞ。か、ではなくて〜そうかの?」
「ごまかさなくてもいいのに。私達着物女子で推し活仲間じゃん!」
「そうか!ふふっ、そうじゃな!」
初対面とは思えない位、なぜか気が合う二人。
推しのグループはハニーミルク。
二人ともプリティーピンクカラーの、モモ君推し。
着物が好きで、気になっている着物屋も同じ。
京都では気になっていたお店で、着物を見ようと盛り上がった。
そうこうしてるうちに、新幹線はあっという間に京都に到着した。
京都は暑さは和らぎ、吹いてくる風も心地よい。ほんの少し赤い紅葉の木が初秋を感じさせていた。
「じゃあ、まずは骨董屋さんにいってみる?」
「それでお願いしたい。よし、やっと文無しから卒業じゃ!」
骨董屋は美和がスマホで調べた、良さそうな店に二人で入ってみる。
「これは、これは、可愛いお嬢様方。今日は何をお持ちでしょうか?」
人の良さそうな、中年の男性が出てきた。
「これを買って欲しいのじゃ」
天子が螺鈿細工《らでんざいく》の櫛と簪を出した。
「ほお、これは見事だ。よく見てみましょう」
男性は時間をかけて二つを見ている。
「おや?作り手の名前が刻まれているぞ。蛸?聞いたことがないが。
京都に住む人間国宝、蛸助の作りにそっくりだ。
とても私なんぞじゃ鑑定出来ない品だ。お嬢様方、少々お待ち下さいますか?」
そう言って、男性は店の奥から、店主のお爺さんを連れてきた。
「おお!これは見事。蛸という職人は知らんが、この見事な細かい螺鈿細工!人間国宝の蛸助以上の作品だ」
「人間国宝以上!」
美和は驚いて大声を出してしまう。
「これは、ずっと大事に持っていても良いお品です。お嬢様、本当に売ってしまわれるので?」
骨董屋なのに、お爺さんは天子のことを気にしてくれる優しさがあった。
「うん……そう言われると蛸が気の毒かの?ならこれはどうじゃ?」
天子は巾着袋から古ぼけた小さな木の欠片を出した。
木の欠片から途端、店中に何とも言えない高貴な香りが広がる。
「おお!こ、これは!」
お爺さんが手袋をはめだした。
「おい、急いで隣の香の店の主人を呼ぶんだ!」
店は途端に騒がしくなった。
「天子ちゃん……何出したの?」
美和はちょっと不安になってきた。
「香木じゃが。良い香りだろ?」
すると、隣の香の店の主人がやってきた。
天子の木の欠片を見るなり、
「これは、最高級品の香木、奇楠ではないか!お嬢様、これをどこで手に入れたのですか?」
「うちにあるものを削って持っておる。あまり香り過ぎず、衣からほのかに香るよう企業秘密の細工をしておるがな」
「なんと……これほどの物にはそうそう出会えません。是非、私に売って下さい。しかし、今店には手持ちがありません。明日必ずお支払いしますから」
「私は今銭がいるのじゃが。うむちょっと待っとれ」
そう言うと、天子はスマホをぎこちなく操作し、平松の宮に電話した。
「平松の宮か。そう、財布がないのじゃ。それで私が銭を作ろうと香木を売ろうとしたら、ちと話がややこしくなっての。店主と話をしてくれ」
そう言って、隣の香の店の主人と電話を代わった。
「〇百万!いやもっと出しますので……」
「……何だか凄い金額の話をしているみたい。天子ちゃんってどんだけお嬢様なの?」
「まあよくわからんが。これで文無しではなくなりそうだな」
天子はにっこり微笑んだ。
(天子ちゃんって、きっとお金持ちなんだろうけど、全然嫌味な感じもないなぁ。本当いい奴!)
「あの、先に100万程お渡しします。どうぞお持ち下さい。お嬢様」
「そうか!助かった。ありがとう」
「滅相もございません。久しぶりに素晴らしい名木を拝見しました。ありがとうございます。」
骨董屋のお爺さんと香の店の主人は、天子にお礼を言って別れた。
「凄いよ!天子ちゃん。いきなりお金持ちになったね。良かった良かった」
「うん、これで思う存分旅行を楽しめるな!美和ちゃん」
「楽しめるどころか、それじゃあ豪遊だよ。ほんと、落とさないように注意してね!」
「じゃあ、推し活用の着物を見に行くかの!」
「うん!そうしようかの。ふふ!」
二人は笑い転げながら、目指す着物屋に向かった。
次回の投稿は9月20日(日)7時です。
美和と天子ちゃんの推し活旅行、どうぞお楽しみ下さい。よろしくお願い致します。
このお話は「早死して転生したアラフィフですが、異世界の江戸では人生愉快痛快です!
のスピンオフになります。




