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第八話 聖騎士の忠誠

砦の戦いから一夜。

人間軍は完全に武装解除されていた。


だが――。


「……本当に、殺さないのか?」


聖騎士アルベルトは、信じられないものを見る目で黒崎武を見つめていた。


場所は魔王城の謁見の間。

巨大な黒い玉座、並ぶ四天王。

いかにも“ラスボス空間”である。


一方。


(胃が痛い……)


玉座に座る武は、別の意味で限界だった。

威厳を出そうとしているが、内心は完全に社畜である。


「えーと……」

武は頭を掻いた。

「別にお前ら殺す理由ないし」


その瞬間、周囲の魔族たちがざわついた。


『なんという器……』

『敵将すら許されるとは……』

『これが魔王様……!』


(違う違う!普通だから!)


だが誰も理解してくれない。


アルベルトは険しい顔のまま問いかけた。


「我々は敵だぞ」


「いやまぁ、そうなんだけど」


「ならば何故だ!」


武は少し考え、息を吐いた。


「俺、戦争とか嫌いなんだよ」


静寂が落ちた。


「人殺しとか怖いし」


それは本音だった。

元の世界ではただの会社員。

命を奪う覚悟などあるはずがない。


しかしその言葉は、アルベルトに強い衝撃を与える。


「……魔王が、人殺しを恐れる?」


「いや普通怖いだろ!?」


ルシエラが静かに頷いた。


「魔王様は、無意味な殺戮を嫌われます」


「いやだから違っ――」


「敵兵を救い、降伏を受け入れ、無駄な血を流さない……まさに理想の王です」


「評価が重い!」


魔族たちは本気で感動していた。

グラドールなど涙ぐんでいる。


「俺ァ……こんな王に仕えられて幸せですぜ……!」


「泣くほど!?」


武はツッコミ疲れてきた。


するとアルベルトが、ゆっくり膝をついた。


「……?」


「俺は貴様を誤解していた」


「え?」


「魔王とは、ただ破壊と殺戮を望む存在だと思っていた」


アルベルトは拳を握る。


「だが貴様は違う」


「いやそんな大した――」


「強さを持ちながら、力に溺れない。それこそ、本当の強者だ」


真っ直ぐな瞳だった。


武は困惑する。


(なんかめちゃくちゃ評価されてる……)


だが次の瞬間、アルベルトは頭を下げた。


「頼みがある」


「ん?」


「しばらく、貴様の側で見極めさせてほしい」


「……は?」


謁見の間がざわつく。


人間側の英雄・聖騎士アルベルトが、魔王の側につくと言い出したのだ。


ルシエラが目を細める。


「……裏切りでは?」


「違う!」


アルベルトは即答した。


「俺は、この男を知りたいだけだ」


武は混乱していた。


(なんでこうなった!?)


だが大賢者が淡々と告げる。


《報告》

《聖騎士アルベルト》

《好感度上昇を確認》


「好感度って言うなぁぁぁっ!!」

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