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第四話 魔王軍、出陣

――人間どもに教えてやる。

――魔王に逆らう愚かさをな。


自分で言っておきながら、黒崎武は死ぬほど後悔していた。


(うわあああああっ!! 言っちゃった!!)


中学時代でもギリギリ封印していたレベルの台詞である。

しかも今は、魔王モード全開の演出付きだった。


黒い魔力はゴォォォォと唸り続け、玉座の間を震わせている。


一方、四天王たちは――


『おおおおおっ!!』

『さすが魔王様!!』

『痺れる……!』


めちゃくちゃ盛り上がっていた。


「魔王様のお言葉、しかと胸に刻みました」


ルシエラは感動したように跪き、

グラドールは巨大な斧を肩に担いで不敵に笑う。


「久方ぶりの戦争か。血が滾るな」


セレスティアは妖艶に微笑み、


「人間たちを絶望させて差し上げましょう♡」


ミレイユも興奮したように飛び跳ねた。


「ついに魔王様の戦いが見られるのじゃ!」


(戦うの俺なの!?)


武の顔が引きつる。

だが空気的に、今さら「やっぱ無理です」とは言えなかった。


「しゅ、出陣する!」


『ハッ!!』


魔族たちが一斉に頭を下げる。

その迫力だけで武は泣きそうだった。



数十分後。


武は魔王城のバルコニーに立っていた。


眼下には、数え切れないほどの魔族軍が広がっている。


黒い鎧の騎士団。

巨大なオーガ。

翼を持つ魔物。

さらにはドラゴンまでいた。


完全に魔王軍だった。


『魔王様!!』

『魔王様!!』

『魔王様!!』


地鳴りのような歓声が響く。


武は震えた。


(俺みたいなおっさんが立っていい場所じゃないだろここ……!)


だが――。


《魔王覇気が自動発動しています》


ゴォォォォォ――ッ!!


武の身体から凄まじい黒いオーラが噴き上がる。


魔族たちの歓声はさらに大きくなった。


『おおおおおおっ!!』

『これぞ魔王様!!』

『圧倒的覇気……!!』


「勝手に出るなぁぁぁっ!!」


しかし周囲には、威厳ある叫びに聞こえたらしい。


ルシエラがうっとりした目を向けてくる。


「素晴らしい覇王の咆哮です……」


「違うんだよなぁ……」


するとグラドールが前へ出た。


「魔王様。西の砦には人間軍三千が展開しています」


「さんぜん!?」


「はい。しかし我ら魔王軍にとっては小規模戦闘です」


スケールがおかしい。

武は普通にビビった。


「ちなみに、こっちは何人いるんだ?」


「約五万です」


「多っ!?」


完全に戦争だった。

いや、侵略戦争である。


「……あのさ」


「はい」


「俺、行かなくてもよくない?」


その瞬間、空気が凍った。


しまった、と武は思う。


だがルシエラは静かに目を閉じた。


「なるほど……」


「え?」


「つまり、“自分一人で十分”と」


「違う」


「人間ごとき、配下だけで蹂躙可能だと」


「違うって」


『おお……!!』

『なんという王の余裕……!!』

『これぞ魔王様だ!!』


「なんでそうなるんだよ!?」


完全に誤解されていた。


しかし――。


《提案》

《人間軍との接触により、ソウルイーターの成長が期待できます》


「ゲームみたいに言うな」


《現在の推定戦闘能力:人類国家を単独滅亡可能》


「さらっと怖いこと言った!?」


武は頭を抱えた。


その時だった。


空から巨大な影が降りてくる。


バサァッ!!


強烈な風圧が吹き荒れた。


黒い鱗。黄金の瞳。山のような巨体。


「ドラゴン!?」


「はい」


ルシエラが当然のように頷く。


「魔王様専用の飛竜です」


「専用!?」


ドラゴンは武の前で頭を下げた。

まるで忠犬のようだった。


『グルルル……』


「乗れって?」


ドラゴンは再び低く鳴く。


武は乾いた笑いを漏らした。


「……マジかよ」

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