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第34話 歴代界護人

ゴォォォォォォォォ――――!!


黒い太陽と黄金の巨人が激突した。


次の瞬間、

世界が白く染まる。


轟音。

衝撃。

爆風。


地下神殿そのものが崩壊を始めた。


巨大な柱が砕け、床が割れ、空間に無数の亀裂が走る。


「うおおおおっ!」


アレクが吹き飛ばされ、ルシエラも慌てて結界を展開する。

古き魔王の少女ですら後退を余儀なくされた。


誰も近づけない。

それほどまでに二つの力は強大だった。


神話の領域。

もはや人間が立ち入れる戦いではない。


その中心で――

武は黄金の光に包まれながら剣を握っていた。


「くっ……!」


身体が軋む。

第二覚醒で得た力は絶大だが、負担もまた大きい。

全身の筋肉が悲鳴を上げている。


それでも武は倒れなかった。


守るために。

仲間を。

この世界を。

元いた世界を。


その想いだけで立っていた。


《見事だ》


滅界の魔神が、初めて賞賛するように言った。


《二千年前以来だ。我と正面から戦える界護人は》


黒い翼が広がる。


武は息を整えた。

分かる。

この魔神は強い。圧倒的に強い。


だが同時に感じる。

滅界の魔神もまた、ようやく全力を出し始めていることを。


《ならば認めよう。お前は戦う資格を持つ》


その瞬間――。


裂け目の奥から、鼓動が響いた。


ドクン――。


世界が震える。


ドクン――。


大地が悲鳴を上げる。


ドクン――。


空間が歪む。


古き魔王の少女の顔色が変わった。


「まずい……」


アレクが叫ぶ。


「また何か来るのか!?」


少女は青ざめながら裂け目を見つめた。


「来るんじゃない……」


震える声。


「目覚めるんだ……」


その言葉と同時に、

裂け目の奥で巨大な赤い瞳が開いた。


それだけだった。


それだけで全員の身体が硬直する。


本能が理解した。

見てはいけない。

触れてはいけない存在だと。


《王よ》


滅界の魔神が膝をついた。


武は目を見開く。

あの滅界の魔神が――

世界を滅ぼした怪物が――

頭を下げている。


《復活の時が近づいております》


静寂。


裂け目の奥から視線が向けられた。


たったそれだけで武の身体が震える。


重い。

圧倒的に重い。


滅界の魔神とは比較にならない。

格が違う。

存在そのものが違う。


「これが……魔神王……」


ルシエラが呟いた。


ドクン――。


その瞬間、武の胸の紋章が激しく輝く。


『警告』


頭の中に声が響く。


『魔神王反応を確認』


武が目を見開く。


『第三覚醒条件の一部を達成』


視界が白く染まった。


◇◇◇


気付くと武は、どこまでも続く黄金の世界に立っていた。

光だけが存在する空間。


「ここは……」


背後から声がした。


「ようやく来たか」


振り返った武は固まる。


黄金の鎧。

黄金の瞳。

巨大な翼。

圧倒的な存在感。


どこか武に似ているが、決定的に違う。


「誰だ?」


男は静かに笑った。


「二千年前の界護人だ」


武の呼吸が止まる。


「……まさか」


「初代と呼ばれることもある」


伝説。

世界を救った英雄。

その本人だった。


「死んだはずじゃ……」


「死んださ。魔神王との戦いでな」


重い言葉だった。


武は思わず尋ねる。


「魔神王は倒したんじゃないのか?」


男の表情が曇る。


「倒しきれなかった。封印しただけだ」


周囲の景色が変わる。


炎。

戦場。

無数の死。

崩壊する世界。

そして空を覆う巨大な闇。


武は息を呑んだ。


滅界の魔神でさえ霞むほどの存在――魔神王。


「勝てるのか……こんなのに」


武の呟きに、男は答えた。


「一人なら無理だ」


「え?」


男は指を鳴らす。


その瞬間、周囲に無数の人影が現れた。


騎士。

魔法使い。

剣士。

老人。

少女。


数え切れないほどの人々が黄金の光を纏っている。


「これは……」


「歴代界護人だ」


武は目を見開く。


「界護人は一人じゃない」


男は静かに言った。


「世界を守ろうとした意志が、受け継がれてきた」


老人が笑う。


「頼んだぞ」


若い女性が微笑む。


「未来を守って」


巨大な戦士が頷く。


「俺たちの続きを」


武の胸が熱くなる。


ずっと一人だと思っていた。

だが違った。

ずっと繋がっていたのだ。


男は武の肩に手を置く。


「覚えておけ。界護人の力は借り物じゃない」


武は顔を上げる。


「お前自身の力だ」


光が溢れ、男の姿が薄れていく。


「待て! 第三覚醒って何なんだ!?」


男は最後に笑った。


「その時が来れば分かる」


光が弾けた。


◇◇◇


現実世界。


武の身体から黄金の光が溢れる。

だが第三覚醒はまだ始まらない。

紋章が静かに輝くだけだった。


『条件未達成』


『第三覚醒保留』


武はゆっくり目を開く。


目の前には滅界の魔神。

そして裂け目の奥――

完全復活しようとしている魔神王。


戦いはまだ終わっていない。

むしろここからだった。


滅界の魔神が立ち上がる。


《面白い。ならば見せてもらおう》


黒い翼が広がり、凄まじい魔力が噴き出す。


《最後の界護人よ》


武も剣を構える。

第二覚醒のまま。

まだ完全ではない力で。


だが恐怖は消えていた。


一人ではないと知ったから。

歴代界護人の意志が背中を押してくれているから。


そして地下神殿に、再び激突の火蓋が切られる。


滅界の魔神との決着。

そして魔神王復活まで残された時間。


最後の戦いは、さらに激しさを増していくのだった。

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