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第十話 聖女アリア

「はぁっ……はぁっ……!」


後ろではルシエラが涼しい顔で並走している。しかも速い。


(なんでそんな余裕なんだよ!?)


前方から爆音。


ドゴォォン!!


天井が揺れる。


「侵入者は中庭です!」

「結界を破壊されました!」


魔族たちの声に焦りが混じる。


(これ絶対ヤバいやつだろ……)


そして中庭へ辿り着いた瞬間――武は言葉を失った。


「……は?」


そこには一人の少女が立っていた。


白銀の髪。

蒼い瞳。

純白の軽装鎧。


手には輝く聖剣。


周囲には倒れた魔族兵。


少女は静かに武を見上げた。


「……あなたが魔王?」


(女の子!?)


いや、強い。

どう見ても強い。


だが見た目は十六〜十七ほどの美少女だった。


その時、背後からアルベルトが現れた。


少女を見るなり、顔が青ざめる。


「まさか……お前は……!」


少女は冷たい視線を返す。


「久しぶりですね、アルベルト」


空気が凍る。


(知り合い!?)


アルベルトは呟いた。


「“聖女”アリア……」


『聖女だと!?』

『人類最強クラスでは!?』

『なぜここに……!』


武は嫌な汗を流す。


(またヤバいの来たぁぁぁっ!!)


アリアは武を見据える。


「魔王」


「は、はい」


「あなたを滅ぼします」


「怖っ」


聖剣が構えられる。


神聖魔力が膨れ上がり、空気が軋む。


ルシエラが一歩前へ出た。


「魔王様、ここは私が」


「いや待って!」


「え?」


「まず話し合おう!? な!?」


全員沈黙。


『おお……また対話を……』

『慈悲深い……』


(違うんだってぇぇぇ!!)


アリアは警戒する。


「罠ですか?」


「違います!」


「魔王の言葉を信用しろと?」


「ぐぅ……」


その時、アルベルトが前へ出た。


「待て、アリア」


「アルベルト?」


「この男は、お前の思う魔王ではない」


アリアが目を見開く。


「あなたが魔王を庇うのですか?」


「違う。見極めているだけだ」


アルベルトは武を見る。


「この男は無意味な殺戮を望まない」


重い沈黙。


やがてアリアは、ゆっくり聖剣を下ろした。


「……なら」


鋭い視線が武へ向く。


「あなたを監視します」


「はい?」


「魔王が本当に危険ではないか、この目で確かめる」


(また増えたぁぁぁっ!!)


こうして魔王城に、新たな問題児が加わった。

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