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甘く、危険で究極の告白

「ギアピーネよりも、ヨクスよりも胸は大きいよ」

 下着をつけておらず、俺の貸していたパーカーも羽織っていないアーリンの胸元は大きく開いていて、その乳房は主の思うがままに寄せられて谷間をつくる。そして緊張する俺の様子を見て、ぷるぷるとリズムよく、まるで拍手をするように寄せては緩めてを繰り返す。

「それに、悩んでる時には構ってくれ、って言う。えっと、ただのおしゃべりかな。クラッキーはおとなしい方が好き?」

 ギアピーネの件があるから、知らぬ間に何かを抱え込まれたままなのはいい気分ではない。冗談っぽく言っているが、これはギアピーネのことを意識したものか。

「それに何より好きだし。どれくらいかって、目を閉じててもはっきり顔が浮かべられるくらい」

 魅力的な肉体を強調し、止めらしい甘い告白が済んだ。そして四肢まではもがないが、理性を粉微塵に壊す、まさに危険な爆弾が潜む股間の方から指を這わせ、スカートの裾を摘まむ。

「もうパンツ見られちゃったけど、ねえ。続きするって約束だったよね?」

 見た者は必ず満場一致で親指を立てる、ある一点にその全てをかけた究極の姿である。そこには神としての覇気はなく、綿の詰まった、図体だけのぬいぐるみのように、押せばあっさりと倒すことが出来ただろう。

 隕石でも降らない限り、生まれやその才能だって平凡なただの人間である俺にこんなことが起きるとは思わなかった。

 果汁を滴らせて、甘ったるい匂いをさせる至極の果実を目の前にして、どうしたことか桃色の欲求よりも堅い木のような知的欲求が勝る。

「恥ずかしくないのか? アーリン」

「なっ、なんで……」

 一言では伝えられないが、貶したりからかうつもりはなかった。

「好きだ、って、大事な自分の体を、心ををそこまですることができるのか?」

 俺なんか、と無駄にしてしまう好意を向けられるのは息が詰まる。される気持ちは散々知った。なら逆に俺はあの子にこの身を捧げられるのか。

 キザに甘い言葉を囁き、かの時のようにその頬に手を添えて顔を寄せたり、また、甘えられるがままに頭を撫でて、小さな頭を胸に受け止めたり、また、恥を忍んで捧げられた身に、同じく恥をかき合えるのか。

「ば、ばかー!」

 耳が高く鳴り、頬に痺れる電撃が走る。それからじんじんと熱を帯出して、ビンタをされた左の方の目から情けなくじわりと涙が滲む。

「普通、女の子にここまでさせたら……カッコつけんなよ!」

 燃え盛ったように顔を真っ赤にして、ビンタをした勢いのままにフローリングについた手をぐっと握り締める。

「ばか。ばかばかー!」

 感情をありのままに吐き出し、不満をぶつけてきた。幸い激情はそれだけで、手負いだった俺にはそれ以上に手を出してこない。

「アーリン、俺には……わからない。俺の中の恋の気持ちが、確かなものなのか。アーリンを……」

 アーリンが言い出した、奪うということは、俺の発散のされない、まるで己の欠けた半身を求めるような飢えを、アーリンで解消することで、互いに望むような立場となるのも間違ってはいないはずだ。

 綺麗事の反対を極端に想像した俺は、そんな考えに行き着く。

 けど俺はまた間違えるのか。ともかくここで何かを口に出して余計に頭を使わせるのは馬鹿のすることだ。俺はその身体同士で確かめるために手を伸ばしてみる。

「……好きに決まってるよ。そのひとのこと。こうして私になにもしてないことが何よりの証だもん。なんで私じゃあないのかな……」

 手を伸ばしたが、すぐに背中を向けて立ち去ってしまう。

「このことは任せたから。きれいに消しててね」

 玄関で靴を履いて、自身がつけた神器の傷へ手のひらを重ねる。

 もしも。もしもこれが無くなったら、またつまらない整然とした部屋に戻ってしまう。

 少なからずアーリンの痕跡の残るそれに未練が生まれる。

 また会おう、とは言わなかったアーリンの背中を見送ってしまったから。


 嫌われるというのは簡単なものだった。

 事情があったからというのもあるが、何かに追われるギアピーネ達と、求められていることが安心だったというものを欠片も理解していなかった俺との間では不和しか生まれなかった。

 痒いところをわざと避けるかのように、優しさではなくただ意味もなく見ているような、不快な干渉だっただろう。

「あーあ! 本当にカッコつけてないで言うこと聞いてりゃあよかったー!」

 俺に怒る権利なんか無い。せめてここだけは良かっただろうとおまけの点数をつけようとする甘い自分をつくっても、自分を責める気持ちは体に張り付いてきて、ため息を吐くか、普段はいい憚れることを叫んで、恥ずかしいことを成し遂げたという顕示の欲で発散するしかない。

 もちろん本心だ。パンツかわいかったし。

「残りはヨクスか。ああ」

 くよくよせずすぐに次のことを見据えているのではなく、選択の余地無く迫られているからだ。

 あのヨクスは、これまで生きてきて苦労をしなこなかったように、振る舞いのひとつひとつに余裕があって、礼儀正しさを持ち合わせているかと思いきや、初めてアーリンに会った時には俺のことを勝手にアピールしたり、意外な図太さがあった。

「一番手強い相手であるのは間違ってないか……」

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