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確かな証明

「おー。うまそうな匂いだな。ちょっとつまませてもらおっと」

「あっ、ちょっと!」

 アーリンは立ち上がって台所への戸を開ける。まだ警戒しているギアピーネは横目で俺を睨みつつアーリンの服を掴んで寄り添う。

「はいはい。もうできるから部屋で待ってて。あ。クラッキー、おはようございます」

 自身の領域であるぞ、と一歩も踏み込ませず、ヨクスはまるで主婦然としていた。それから二人に割って入り俺に挨拶をしてくる。

「クラッキーも。あと少しですから」

 ヨクスが母ならアーリン、ギアピーネはまるで子供のように素直に言うとおりに席についた。そうして明らかになった、髪を束ねて台所に立つヨクスの後ろ姿は、今の俺にしか見られない貴重なものだ。身につけていたエプロンもまたいい感じにくたびれ、よく使い込んだものである。

 やっぱり、ギアピーネのようなボーイッシュに手足を出した服よりも上品や、清楚といった雰囲気がよく似合っている。

 しかしゆったり目の服のせいか。あの大きなお尻はあまり目立っていない。海での水着の時はどうしてたっけ。あれもパレオで隠していたか。

 確かにあそこにはあるはず。それに白い綿の服の触り心地も含めたらとても柔らかそうだ。

「……何を見ていらっしゃるんですか?」

「あ、あー……なんでもない!」

 今度はヨクスにも警戒された。いかん。行動が大胆になっている。

「クラッキー? また何かしたの?」

 ギアピーネは再び、ヨクスのことであったが自分のことのようにむっと頬を膨らす。

 間もなくヨクスが作っていたスープやオムレツやらを人数分配膳しにきて、自然な流れで夕食を囲み始めようとしている。

「あ、あのだな。話がある」

 アーリンに食べながらでもいいかと聞かれたが、俺は折角の食事の場で真剣な話をされることもすることもとてつもなく嫌いであった。だからその前に話しておきたい。

「俺が出掛けてきて帰ってくるまでに何があった」

 なぜ女神3人が気を失って倒れていたのか。また、互いの服装が入れ替わっていて、さらに下着まで総取っ替えしている可能性だってあった。最後に何より、ギアピーネが二人とごく自然に馴染んでいることだ。

「帰ってくるまでにとは、ひどく咳き込んだ後の、気を失っていた間ですか?」

「ん? 違う違う、その後この部屋で3人、話をしてたときだ」

「え?」

 ヨクスは髪をほどきながらきょとんとした顔をする。両手を後ろで組んだときのちらりと袖から覗く腋が眩しい。

「んー……外の空気を吸ってみてはと言ったのですが、その直後に倒れてしまったんじゃないですか。何をしていた、って、こうしてクラッキーの看病をしていただけですが」

 あの時点で倒れていたと言うのか。あの光景は夢だったと。

 だが確かに苦しかった。それに、夢を見ている時の独特の意味不明な体の重さも無かった。

「アーリン。ギアピーネ?」

 ヨクスの主張が事実ならば自信を持って賛同をするはず。2人の様子を見てみると、アーリンは話がつまらなさそうに机に突っ伏している。下手に発言をしないためなのか。

 ギアピーネは怪訝そうな顔でヨクスを見ていた。正直、怪しさしか無い。

 俺が確かに外出をした証拠がいる。財布を見てみれば。

 昼過ぎにレストランで会計したレシートがあるはず。鞄の中から取り出した財布と、その中のレシートとで残金と照らし合わせてみる、つもりだった。しかし目当てのものは見つからない。これといった金額は決めていないが、雰囲気で減っていないとわかる。

 いやまだだ。こっちは。

 小銭のポケットには50円硬貨がある。俺は普段から50円以下は仕分けて別の小銭入れに入れている。それがここにあるということは……そうだ、レシートの出ない屋台でのお釣りだ。

 つまり、必死に3人がごまかしているが、俺は確かに外出をしていた。しかし、足すとはいっても勝手に俺の財布を探られたようだ。そういえばギアピーネを探していたときもヨクスに部屋の中を探されていた。多分これを仕切ってるのはヨクスだな。

 この目で見たことが真実であるという確証はあった。だがレシートのような物的にそれを裏づけるものがない。仮に問い詰めてもこのままでは多数であるあっち側に抑圧されかねない。女神達を黙らせられる揺るぎない証拠を。夢といわれるなら、それと現実とでそぐわぬことをぴたりと言い放てば。

「なー。なんだったら食べてからにしない? そっちはいつでもできるけど、こっちは冷めちゃう」

 アーリンか。俺の持ってたパーカーを羽織っている。何事もなかったような何ら普通の格好だ。

 真実を隠され、陰で何かを企まれるのがこんなにも不愉快でもどかしいものなのか。なんだっていい。何かこれを解決しうる糸口は。このアーリンの。

「!? え、えーと……」

 これだ、とやっと探し物を手にした気分で、下心など無かった。

 俺の視線に勘づいたアーリンはきゅっと股を締めて、スカートの裾を膝の方膝の方へと伸ばす。膝から下を外にするいわゆるトンビ座り。太腿は隙間無くくっついて、その溝に集中するあまり、確かに見えはしないものの、そのスカートのシルエットは本来の、露出を防ぐための服ではなく、いけないことのいずれかの要素に成りうるものだった。

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