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水の惑星  作者: 花押
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主神の心 ― トーマの心

「ああ・・・ そうだったのか。 そういうことか」


キースは声を漏らした。



カインはキースの傍らで心配そうに彼を見つめていた。



「カイン。やっとわかったよ。トーマの気持ちが」



「トーマの気持ちが・・・ですか?」



キースはうなずいた。



「トーマは主神に聞いていたんだ。主神の全てのことを。


主神はこの星が生まれると同時に存在していた。

最初はこの星の全てが主神の活動する範囲だった。


そして、様々な生命が生まれてくるたびに、

主神は少しずつ場所を譲り、共存してきた。


ところが人類がこの星に存在するようになってから、

主神の動ける範囲は急速に狭められた。

他の生き物に比べて、人類はどんどん自分たちの活動する範囲を

広げていったからだ。


そしてとうとう主神が住んでいたこの場所までやってきてしまった。


その昔にはこの島も人類によって開発されていたんだ。


お前の通ってきたトンネルも、崖に沿って作られた道も

全てこの時のものだ。

人類は主神の住んでいた場所をことごとく自分たちの場所へと

作り変えていった。


そして主神は怒ったんだ。


人類の数を減らし、自分との子供を作ることによって

テリトリーを広げようとした。


だが、うまくはいかなかった。

皮肉なことに自分の子であるトーマに封じられてしまったのだからな。


トーマは何とかしてこの主神を永遠に封じる方法はないかを考えていた。

そして主神が住んでいたこの島に渡り、主神と対話し、この祠を造った。


当時はここに主神を封印するはずだった。

主神も封印されてもいいと思っていた。

だが、それはトーマと共にという条件付きだったのだが。


トーマは了承したが、それを見届ける存在が必要だった。

主神は永遠に封印されたからもう大丈夫ですと皆に伝えられる存在がね。

だからトーマはここで次の守役候補が来るのを待っていたんだ。


それなのに・・・


守役候補はトーマが体力的にも限界な45歳になった時にやってきた。

そして恐ろしさのあまり、トーマから逃げ出したんだ。


トーマはその男を捜し続けた。

そしてとうとうその男を見つけた時、

トーマはその男に主神を移したんだ。


トーマの身体はもう限界だった・・・


そして、トーマの造った祠の謎も

永遠に分からないままになってしまったんだ」




「・・・・・・」



カインは言葉が出なかった。




もう少しみんなが勇気を出していれば、

こんなに長く悲しい事は起こらなかった。



だが、今それを言ったところでどうにもならない。



今、ここにいる自分たちがこの悲しい歴史を終わらせるのだと

心に誓った。




「キース。 どうすれば主神を封印できるのですか?」



「俺がこの祠の扉を内側から閉めるんだ」



「どうやって?」



「扉を開けたときと同じ要領さ」




カインはとまどった。




「扉を閉めてしまったら、キースは・・・」



「カイン、さっきも言ったろ?

主神はトーマと一緒に封印されることを望んだんだ。

主神を宿したものは外に出られないように作られている」



「そんな・・・」



カインは絶句した。




主神は封印したい。



だが、キースを犠牲にすることなど考えられないことだった。




「我は認めぬ!」



ふいにキースの口調が変わり、カインを睨みつけた。



「これはトーマではない!」



キースの身体のことを言っているようだった。




「キース・・・」



カインはどうしていいのかわからなくなった。





キースが苦しそうにカインに叫んだ。



「カイン、お前はここを出ろ。 もうすぐ俺の気が尽きる」



「どうして気が?」



「主神を抑えるのに大きな気を使い過ぎた。

残り9年分・・・使い切ったみたいだな。


俺の気が尽きれば主神は暴れ出す。

俺はお前に主神を移したくないんだ。


頼む! 俺をこいつと一緒に封印させてくれ」




「キース!」



「早く・・・行け!」



キースはカインを突き飛ばした。



突然キースの口調が変わる。




「我は認めぬ! お前の気をよこせ!」




キースがカインに向かって走り出した。



「くっ・・・!」




カインは後ろを見ずに走り出した。


だが、主神の力を持ったキースの方が早かった。



キースは素早くカインに追いつき、カインの襟首をグッと掴むと

思い切り床に引き倒し、倒れたカインの上に馬乗りになると

無理やり手のひらを合わせようとした。




「や、やめろ!」



カインがもがく。



ふいにキースの動きが止まった。




「カイン・・・お前を守れるのもこれが最後だ。

早く・・・逃げろ!」



キースは苦しげに息をしながらカインに言った。



カインはうなずくと素早くキースの身体をすり抜け、

石の扉の外へと出た。



キースはふらつきながら扉まで走ると、

内側の円形の印に手のひらを押し当てた。




扉が音を立ててゆっくりと閉まっていく。




「キース!」



カインが叫んだ。



「心配するな。俺は幸せなんだ。

俺もグレンのようにお前を守れたんだからな。

これであいつに胸を張って報告できるさ」



キースの声はとても穏やかだった。



カインは涙でキースの顔が見えなくなっていた。



「カイン、ありがとうな。 愛してたぜ」



キースはそっと笑った。



そのまま扉は閉まった―――





「キース!」



カインは閉まった扉に向かって叫んだ。




涙が・・・止まらなかった。




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