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水の惑星  作者: 花押
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トーマ ― 主神の子として

トーマが次に主神と遭遇したのは、トーマが18歳になった頃だった。


主神の気配を感じたトーマは村の入り口に立ち、主神と対峙した。



トーマは主神と会話を試みた。



「僕のことがわかりますか? あなたの息子のトーマです」



「お前は・・・ 我の息子・・・。

まだ生きていたのか!?」



主神は怒りに満ちた黄金のオーラを少し弱めた。



「僕は母とこの村の人々に大事にされてここまで育ちました。

ですから、あなたにこの村を襲わせるわけにはいきません」



「人間は敵だ。お前はわからないのか」



「わかりません。僕はあなたの子であっても器は人間です。

そして、魂も人間に違いありません」



主神は険しい顔をした。



「人間に味方するというなら、お前も容赦はしない」


「これ以上人々を襲うというなら、僕もあなたを赦しません!」


トーマは主神をしっかりと見据えると、キッパリと言い放った。



主神の黄金のオーラが光を増し、怒りの色が顕(あら)わになる。


するとトーマの体もまばゆいばかりの黄金のオーラで包まれた。



村の人々は遠くからトーマと主神との様子を固唾を飲んで見守っている。


人々に主神は見えていないが、

トーマの視線の先に主神がいるであろうことは、うっすらと感じられた。


「トーマ!」


サリが飛び出そうとするのを村人に止められた。


トーマは横目で母を見ると、さらに黄金のオーラは強くなった。



「お前も敵だ!」



主神は地を這うような低い声で叫ぶと、

目にも留まらぬ早さでトーマに襲い掛かった。



黄金のオーラが激しくぶつかり合う。



「くぅ!」



トーマの顔が苦痛に歪む。



「お前は我の中に入り、我と同化し、我の力となれ」



「くっ・・・嫌だ。あなたの力になど・・・ならない!」



主神のオーラがトーマのオーラを侵食していく。



「うあ・・・ぁ!」



トーマは叫び声を上げた。



「トーマ!」


サリが叫ぶ。


「トーマは私の子よ! 主神のものではないわ!」



「母・・・さん」


トーマの朦朧とした意識にサリの言葉が響く。



「トーマがんばれ!お前はこの村の子だ!」


「お前は俺たちの仲間だぞ」


「俺たちは応援するしかできないが、お前のことを大事に思ってる!」


村人たちがトーマを応援する声が聞こえた―――




生まれてからずっと、主神の子だと言われて育ってきた。


だが、村の人は最初こそトーマを避けていたものの、

徐々に受け入れ、村の子供たちと分け隔てなく扱ってくれた。


村の友だちもできた。


一緒に学び、一緒に遊び、一緒に泣いたり笑ったりした。


母のサリは優しく、時に厳しくトーマを導いてくれた。



「僕しかあなたと戦えないなら、僕はどんなことがあってもみんなを守る!」



トーマのオーラがまばゆいくらいに放たれ、主神をも包み込んでいく。



「くっ・・・馬鹿な」



トーマのオーラに体を包み込まれた主神は、身動きができずにもがいた。


トーマの中に主神の意識が流れ込んでいく。


人間が自分のテリトリーを、自然を、平然と壊していく様、


そして主神が人間に抱いた憎しみ、悔しさ、辛さ・・・


様々な思いをトーマには痛いほど感じることができた。



「父さん・・・」



トーマは穏やかに主神に語りかけた。


「あなたは僕の父さんです。

そして僕はたぶん

あなたと人間とを繋ぐ役割を持って

生まれてきたのかも知れませんね。


父さんが人間に怒りを持って人間を襲ったのは

父さんの立場なら無理もないことかもしれません。


でも・・・悠久の昔から今まで、怒りのままに人間を襲い、

父さんはそれで・・・満足できたのですか?」


主神は体の動きを止めた。


「父さん。星の歴史は動いています。

あなたも、あなたの遥か後に生まれた人間も、

この星に必要だからこそ残っているのでしょう。


現在は多くの人間がこの星に住み、

この星と共存しています。

そして無秩序に自然を壊すことを

今はしていないことも、

あなたはもうわかっているはずです。


もう怒りに任せて人間を襲うのは止めにして、

父さん・・・ここらで少し休みませんか? 僕と一緒に」



「お前と・・・共に?」



「そうです。僕がいつでもあなたの傍にいます。

だから僕と一緒に・・・ 僕の中で・・・ 少し眠りましょう」



「トーマ。 我を身体の中に入れるというのは

どういうことかわかっているのか?」



トーマはフッと笑った。


「分かっています。

あなたが僕の中に入った後、僕の命の尽きる時間までに

あなたにとって最良の場所を僕が必ず用意します。

だから、安心して僕の中で眠ってください」



「トーマ、わかった。 お前を信じよう」



主神は自分のオーラを弱めると、そのままトーマのオーラと同化した。


トーマのオーラが収束すると同時に主神はトーマの身体へと入っていった。



トーマは大きく息を吐き、呼吸を整えた―――





トーマは主神を封印した後、国の主の下に出向き、主神を封印した旨を伝えた。


そして、自分の主神を封印できるのは45歳までが限界だということ、

その後の主神の封印を継続するには強靭な気を持っている男子の体に

次々と移していくことが最良だということを述べた。



「つまり、主神に贄(にえ)を出すということか」


国の主は苦い表情でトーマを見た。



「はい。ですが、結果的にそうならないよう

主神を完全に封印するための何らかの手立てをこれから考えていくつもりです」



「そうか。 ではお前が45歳になるまでに次の贄を選べばよいのだな」



「いえ、もし私の命が尽きてしまえば主神はまた目覚めてしまいます。

なるべく早めに・・・星と星が重なるあたりを目安にお願いします」



トーマはそのまま一人主神の島に渡り、

主神と対話しながら長い年月を暮らした・・・




それから月日は流れ―――




「待て。 待ってくれ!」



「ひいぃ・・・ 俺は嫌だ。

バケモノを入れて死にたくない!」



「そうじゃない。 頼むから話を・・・」



「ひえぇ・・・」



逃げ惑う男を捜せば探すほどトーマの体力と気がどんどん衰えていく。



「これ以上は・・・無理か」



トーマが荒い息で膝をついた先に、男が木の陰で丸まって震えているのが見えた。


トーマは男を無理やり押し倒すと、そのまま掌を合わせ主神を移した。



男の叫び狂う声が遠くに聞こえている・・・



混濁した意識の中でトーマは故郷の村を思った。



「本当はこんなはずじゃなかったのに・・・ごめん」



トーマの瞳から一筋涙が流れ、そのまま身体が地面に崩れ落ちた。





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