石の祠
カインが目指した大きな石の様なものは、
林を抜けるとすぐに見えた。
それは遠く湖を背景にしてひっそりと立っている。
近づくと見上げるほどのかなり大きなものであることがわかった。
二人はその前に立つと、マジマジと眺めた。
それは、石を組み合わせて造ったような祠のようにも見え、
石の前面の扉には何かの文字が刻まれていた。
明らかに誰かが何かの目的のために造ったものであるようだった。
「キース。 この文字は何でしょうか?」
キースはしばらく見ていると、やがて口を開いた。
「この星の主をここに封じん」
「え?」
カインは驚いてキースを見た。
「俺はいやだ!」
キースの身体は震えていた。
「キース。 どうしたんですか?」
カインは震えるキースの肩に手をかけた。
「俺に触るな!」
キースはカインの手を力任せに振り払った。
「お前か! お前が俺を怒らせた」
キースはカインの襟元を掴むと、凄い力で石の壁に叩き付けた。
カインは頭を強く打ち付けられて、意識が遠のきそうになった。
「キース。 やめて・・・」
体制を立て直す間も無く、さらにキースが襲いかかる。
カインはすばやく身をかがめると、
掴みかかろうとするキースの足を両手で抱え込んだ。
キースはバランスを失って仰向けに倒れた。
倒れた拍子に頭を打ったのか、そのまま気を失ってしまった。
「いまのはキースじゃない。 まさか、主神?」
カインは倒れているキースを見たが、
キースは普段のままの姿で瞳を閉じていた。
「とにかくこの中に入ろう。きっと何かがあるはずだ」
カインは石の祠の前面を調べてまわった。
だが、固く閉ざされた扉は力だけでは開きそうになかった。
「きっとどこかに手掛かりがあるはずなんだ」
祠の側面や後ろも詳しく調べた。
壁には、いたるところに何かの文字が刻まれているのだが、
カインにはわからない。
扉を開ける手掛かりが掴めないまま、カインは途方に暮れた。
石の扉の前で呆然と立っているカインの後ろで、
キースがむっくりと起き上がった。
「キース!」
カインは身構えた。
「カイン、もう大丈夫だ。俺が主神を内側に封じた。
さっきは突然出てきたので俺もどうすることもできなかった。
怪我はなかったか?」
「は、はい」
カインはホッとして体の力を抜いた。
「キース、主神はいったいどうしてしまったんでしょうか」
「よくわからないが、どうやらこれは主神を封じるために造った祠らしいな。
誰が造ったのかはわからないが。
俺もここに書いてある文字は全くわからないんだ。
さっき、お前に読んで聞かせたのは主神だ」
一瞬でも主神と会話したのか―――
カインは複雑な気持ちになった。
「そうだったんですね。
でも、もしそうならどうしても中へ入らなくてはいけませんね」
キースは主神が前面に出てきたとき、
この祠と主神との関係をうっすらと感じることができていた。
「少し・・・やってみるか」
キースは石の扉に彫ってある円形の印に手を当てると、
こめかみに力を込め気を送った。
キースの手からぼうっと白い光が洩れてくる。
すると不思議なことに扉が自動ドアのように
ガガっと音を立てて開き出した。
「すごい!」
カインはその光景に釘付けになった。
「カイン。この壁一面に書いてあるのは、たぶん何かの呪文なんだろう。
それが、この主神だけに反応するようになっているんだろうな、きっと」
キースはカインに向かって優しく笑った。
カインにはその笑みがひどく寂しそうに見え、少し戸惑った。
「さあ、入るぞ」
「はい」
二人は石の祠の中に入った。




