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水の惑星  作者: 花押
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22/27

それぞれの思い

カインは、そびえ立つ崖の頂上に立っていた。



目指すべき島の北側を上から見下ろすと、そこには林と池が点在していた。



うっそうとした森に囲まれていた島の東、西、南側と比べると

北側だけはずいぶん異なった環境だということがわかる。



北側の林は遥か向こうにうっすらと見える湖に向かって続いていた。



そして、その林の終わりと湖との間の平坦な空間に、

何やら大きな石のようなものが置かれているのを発見した。




カインは目標を定めた。




眼下には細い道ながら下へと下りる道が繋がっている。



カインは迷うことなくその道を慎重に下って行った。




※   ※   ※





キースはカインの帰りを待っていたが、さすがに少し嫌な予感がしていた。



「まさか、あいつ・・・ あそこに行ったんじゃ・・・」



この頃、カインは行動範囲をずいぶん広げていた。


そのおかげでいろいろ珍しい食べ物も食卓に上がったりしていたが、

それと同時に一抹の不安もキースの中にはあった。




カインは何かを考えている・・・




自分には話さないが、

彼が何か考えがあって行動していることはわかっていた。



島の北側のことは危険だから近づくなとは言ってある。



キースが昔行ったのは西ルートの崖の頂上までであり、

その向こうのことは何もわからなかった。



しかし、カインは人の言うなりになってこのまま諦めてしまう性格ではない。



北側のルートを見つければ、必ず彼はその先へと行こうとするだろう。



彼はここで魂の抜けたようにただ静かに暮らして時を過ごしていくような

今までの守役たちとは違うのだ。



今までの守役たちは、新しい守役候補が来ると

早く今の状態から逃げたい一身ですぐに主神を移し、

自分は消えていった。



それだけここの生活は彼らにとっては苦痛だったのだろう。



だが、グレンはそれをしなかった。



自分が限界になるまでの何年かの猶予をキースにくれようとしたのだ。



だから自分もカインにそうしたかった。



そして、カインを守らなくてはならなかった。



キースはグレンとのあの出来事以来、

北側へのルートには近づかないようにしていた。



次の守役が来るまで、

自分に危険が及ばないような生活をしていたということと、

何よりグレンのことを思い出すような場所に行くことは

躊躇(ためら)われたからだった。



しかし、今はそのような事を考えている場合ではない。



キースはいても立ってもいられなくなった。



北側へのルートはいくつかある。



慌てて支度をすると、すぐに家を飛び出していた―――






カインは林の中を歩いていた。



先程の森の中とは違い、クロマツやアカマツなどのマツ科の木が立ち並んでいる。



木々が少ないので風通しがよく、こんなに歩いているのに汗もかかなかった。



爽やかな風に吹かれて、カインの足取りも軽かった。




とても快適な気分だった。




だが、平坦な道ではあったが、林を抜けるにはずいぶんと時間がかかった。



崖の頂上から見ても遥か遠くに感じたのだ。



実際に歩けば相当時間がかかるのはわかってはいた。



それにしても、今日はどれだけ歩いただろう。



気が付けば、日頃から鍛えていたはずの足の筋肉がパンパンに張っている。



この林を抜けたら、少しの間休憩することに決めた。



帰りのことを考えると、あまり無理をしない方がいいと思った。



カインは林の出口から一本手前の木に背を持たせかけて座ると、

そのままスヤスヤと眠りに落ちていった。






どのくらいの時間、眠っていたのか・・・





気が付いた時も、日は依然として高かった。




「カイン・・・」




ふと、後ろから突然自分の名を呼ばれ、カインはドキッとして振り向いた。



カインのすぐ後ろにはキースが立っていた。



カインは自分の目を疑った。




「キース。どうして?」



「驚いたか? 俺だって驚いたさ。

まさかお前がこんなところまで来ているなんて思わなかったからな」



キースは少し疲れた顔をしていた。



「でも、どうして僕がここにいるってことがわかったの?」



「それはな、俺もお前みたいな頃があったからだ。

何でもやりたかったし、やれる気がしていた。


お前だったら崖を越えて、さらに向こうまで行ける位のパワーがある。

もし、お前が北側の道へと行く気になったのだとしたら

必ず崖は越えていくはずだと思った。


そして俺がさっき崖の上からあの石の建物を見つけたとき、

お前に会うためにはこの林は抜けなければならないと覚悟してここまで来た。


そうしたら、可愛い顔してお前が眠ってるじゃないか。

俺はホッとしすぎて気が抜けちまったよ。


あんまり俺の前で無防備なまねはするなよ。

俺がその気になったら・・・怖いぜ」



「へ、変なこと言わないでください。

そっちが勝手に寝顔を見たんでしょう?」



カインは顔を赤くさせながら怒った口調でキースに言った。



「ムキになるなよ。それよりお前、行くんだろ?

俺も一緒に行くからな」



カインはうなずいた。



やっぱり一人よりも二人の方が心強かった。



「ところで、僕はどのくらい眠っていたのでしょうか?」



「約半日ぐらいじゃないのかな。

俺がここに来るまでたっぷりとそのくらいはかかってるからな」



「そうですか。 

でも、よく眠ったから身体がまた軽くなりました」



カインはキースに微笑みかけた。



「では、行きましょう」



二人は林の出口へと歩いていき、外へと出て行った。




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