ーWho's Select-
——夜。
気が付けば、私とフィールお姉ちゃんは、寮に戻っていた。
「……ゼフィ。私、先にお風呂に入ってくるから」
「う、うん。わかった」
「……一緒に入る?」
「ううん、私はまだいい」
「そ、そっか」
フィールお姉ちゃんとお風呂。
それはもちろん、私も疲れたし。
一緒に入りたい。
けど――。
『ゼフィ、お願い。ウチには……ゼフィしかいないんっちゃ』
――あの時。
フィウメから言われた言葉が頭から離れない。
それに――。
フィオーネ君も、トゥオーノ君も、スオーロ君も。
みんなみんな。
私を必要としてくれている。
私が欲しいって。
なんだろう。
すっごく嬉しい――のかな。
不思議な気持ちだ。
こんな、体験。
生まれ変わる前でさえも、味わったことが無い。
だけど――。
一人ぼっちのあの時。
こんな風に、誰かに必要とされたかった。
ずっとずっと――。
本当は、私はいろんな人を笑顔にしたかった。
どんなやり方でもいい。
私の力で、いろんな人に必要とされたかったんだ。
そしてその願いは――。
生まれ変わったこの世界で、これ以上ないくらい叶えることができている。
それはとっても嬉しい!
嬉しい事……だけど。
「私……誰を選べばいいのかな。というか――」
どうして、誰かを選ばないといけないのかな。
別に、みんなパーティなんだから、別に選ぶ必要なんて――。
「うーん、わかんない! 私、どうすればいいのかな……」
——トントン。
「——ゼフィちゃん? フィールちゃん? いる?」
「あ、もしかして、ラミアお姉ちゃん?」
「あら? ゼフィちゃん? フィールちゃんは?」
「今、お風呂にいってるの」
——ガチャ。
「あら、そうなのね。せっかく、二人を夕食に誘おうと思ったのだけれど……」
「そうなんだ! 行きたい! ご飯!」
「ふふっ、じゃあ。フィールちゃんが戻るまで待ってましょうか」
「やった!」
「それで、ゼフィちゃん。今日の授業はどうだった?」
「あのねあのね! 今日の授業は――」
——私は、今日一日の出来事を事細かく、ラミアお姉ちゃんに話した。
迷宮でのこと――。
蛇さんの事——。
そして――。
私とフィウメの魔法のことを――。
「そっか。ゼフィちゃん、すっごく楽しかったのね」
「うん! めっちゃ楽しかった!」
「うふふっ、ゼフィちゃんにとっては、初めての迷宮だものね」
「そうなの、でねでね。ラミアお姉ちゃん」
「うーん?」
「どうして、パーティのみんなは私を選べ! なんて言うのかな。同じパーティなんだし、選ぶ必要なんてなくない?」
「うーん、そうね。それは、ゼフィちゃんの言う通りかもしれないわね」
「でしょでしょ? 私、よくわかんなくて。それに、フィウメが――」
「その、フィウメさん? がどうかしたの?」
「フィウメがね、私のことを抱きしめて、『ウチにはゼフィしかいない』て言ってきたの」
「そっか、フィウメはもしかして、水の魔法使いなの?」
「うん! そうだよ? よくわかったね」
「え、ええ。まあ。で、ゼフィちゃんは何を迷っているの?」
——迷っている?
いや、違う。
迷ってなんかいない。
迷っているというよりも――。
「ラミアお姉ちゃん。どうして、私。誰かを選ばなきゃいけないの?」
「そうねぇ。ゼフィちゃんはどうしたいの?」
――え?
——私が選びたい人?
「ゼフィちゃんは、その三人の男の子から誰かを選びたいの?」
「それは、嫌」
「どうして?」
「だってだって! 三人とも、フィウメのことをあんなに、悪く言ってたんだよ? 水魔法だって、十分すごいのに……」
「そうね、じゃあ。ゼフィちゃんはそのフィウメちゃんを選びたいってこと?」
「そ、それは、うん! フィウメを選びたい!」
「もし、それがフィールちゃんと離れる選択になっても?」
え。
フィールお姉ちゃんと別れる?
「——どうして、そんなことになるの?」
「ごめんなさい、意地悪な質問しちゃったわね。でもね、大切なことなの」
「なんで?」
「いい? ゼフィちゃん。これだけは覚えといて。お姉ちゃんはあなたが選んだ人なら、だれでも歓迎するわ」
「うん」
「でもね、ゼフィちゃんを大事にしない子。ゼフィちゃんのことをなんとも思わない子は、決して許さない。何が何でも、あなたを取り戻すわ」
「な、なんかラミアお姉ちゃん、怖いよ……」
「あら、ごめんなさい」
ラミアお姉ちゃんは、いつもの優しい顔に戻ってくれた。
だけど――。
正直、ラミアお姉ちゃんの言葉は、あまりわからなかった。
「お姉ちゃん、私よくわかんない」
「うっふふ。まだ、ゼフィちゃんには早かったかもしれないね。でもねゼフィちゃん」
「私は、誰かに選んでって言われて、すぐに選ばなきゃいけないわけじゃないのよ?」
「そ、そうなの?」
「そうよ、それに選ぶ側はゼフィちゃん。あなたなのだから。じらすだけじらせばいいのよ」
「え、ええ……いいのかな」
「いいのよ、もう少し選ぶ側を楽しんでおきなさい。楽しいわよ?」
「そ、そうなのかなぁ」
——ガチャ。
「……ただいま。どうして、ラミアお姉さまが?」
「あ、フィールお姉ちゃん、おかえり!」
「おかえりなさい、フィールちゃん。実は夜ご飯を一緒にどうかなと思ったの」
「ご飯! 一緒に行こうよ! フィールお姉ちゃん!」
「わ、私は別にいいけど……。ゼフィ、お風呂は?」
「うーん、あとで入る!」
「もぉ、しょうがないわね」
『もし、それがフィールお姉ちゃんと離れる選択になっても?』
さっきのラミアお姉ちゃんの言葉が、頭に浮かんできた。
——誰かを選ぶ。
正直、今の私に誰かを選べばいいかなんて分からない。
それに、いつか。
いつかは、フィールお姉ちゃんと別れなくちゃいけない日が来るかもしれない。
だけど――。
今は、まだ嫌だ。
今はまだ、フィールお姉ちゃんと一緒に居たい。




