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ーMy Own(フィウメ視点)ー

第26話ーMy Own(フィウメ視点)ー


 初めての感覚だった。




『水魔法かよ……。使えねえ』


『なんだ、水魔法かよ』


『くっそ、外れ属性じゃねえかよ』




 そんなことはいくらでも言われ続けてきた。


 


 昔からそうだ。


 私だけじゃない。


 私の両親も、おじいちゃんやおばあちゃんも、その前のご先祖様も。




 みんなみんな、他の魔法使いから見下され続けて生きてきた。


 


 だけど――。




 今日初めて、魔獣を倒すことができた。


 私の水魔法で――。




 それも、あのミスリル・サーペントを。




 フィオーネ君の火だけでも。


 トゥオーノ君の雷だけでも。


 スオーロ君の土だけでも効かなかったあのミスリル・サーペントを――。




 私と――。


 ゼフィの二人の力で倒すことができたんだ。


 


 この日ほど、高揚した日はあっただろうか。


 それに、サチェル先生やみんなの反応。




 これって、もしかしてゼフィが、私にくれた魔法なのかもしれない。


 私とゼフィだけの特別の魔法なのかもしれない。


 そう思った。


 


 なのに――。




「なあ、ゼフィ。いいだろ? 俺とも、やってみようぜ!」




 ゼフィ、嫌だよね?


 やらないよね?


 


 だって、その魔法は私とあなただけの――。




「まあ、物は試しですね。やってみましょう」


「サチェル先生もそう思うの?」


「はい、私も大変気になりますから」


「っじゃあ、いいよ! やってみる!」


「では、魔法修練所に行ってみましょう」




 ——余計なことを言わないでほしい。


 ゼフィも。




 なんで、そんなにも楽しみでいるの?


 さっき、フィオーネ君の事嫌ってたじゃんか。


 


 そんな人となんて、上手くいくわけがない。


 そうだ、きっとそうだ。


 


 もし、フィオーネ君と失敗すれば、私との魔法が特別なんだということが示せれる。


 それなら――。




 ————————。




「では、二人とも。存分にどうぞ」




 きっと、失敗しちゃうんだ。


 それで、あのフィオーネ君も恥をかいちゃえばいい。


 私のことを――。水魔法使いのことをあんなに、悪口言ってしまった罰が今ここで――。




「よっし! 行くぞ! ゼフィ」


「うん」


 


 ————♪♬♪




 フィオーネ君のトランペット、そしてゼフィの歌声が修練所に響き渡った。


 そして――。




「おい、おいおいおいおい。こりゃぁ――」


「こ、この魔法は――」




 ドォォォォォォン!!




「きゃっ?!」


「うおぉっ?!」




 ――爆発。




 いや、違う。




 フィオーネ君の炎が、ゼフィの風に押し広げられて、修練所いっぱいに爆風を巻き起こしているんだ。




「すっげええええ!!」




 フィオーネ君が、子どもみたいに飛び跳ねた。




「ゼフィ! すげえ! すげえぞこれ! こんな威力! これなら、獄炎の騎士にも勝るとも劣らないぞ!」




「ほんと?! やったね、フィオーネ君! でも、フィアンマお兄ちゃんはもっともっと強いんだからね!」


「そりゃわかっとるけどさ! それくらい思ってしまうじゃんかよ! これだけの威力なら!」




 ……。




 成功、してしまった。


 


 いや、違う。


 これは、たまたま。


 たまたまなんだ。


 


 それに――。


 さっきの私の水との組み合わせとは全然違う。


 ただ、威力が上がっただけ。


 


 私のとは全然違うんだ。




 だから――。




「これは……想定以上です!」


「なるほど……水だけでなく、火とも成立するんか。とんでもないの、風というものは」


「そうですね……。一旦、仮ではありますがこの魔法。混合魔法とでも呼びましょうか。これは、いろいろとできますね」


「いろいろ?」


「例えば、僕の雷魔法と風。スオーロ君の土と風、それからサチェル先生の聖と風。と組み合わせは次第でどうなるか――ということですよ」


「そうなんだ」




 ――やめて。


 そんな仮説、要らない。




 私の水とゼフィの魔法こそが――。




「ね、ねえゼフィ――」




「なぁ! ゼフィ! 俺と、組まねえか? 俺と!」


「え? フィオーネ君と?」


「そうだよ! だってさ、見ただろ? あの魔法! さっきの水より何十倍もすごかったじゃねえか?! あれなら、いくらでも魔獣を倒せそうじゃんかよ!」


「で、でも……」




 そうだ。


 ゼフィ、断っちゃっえばいいんだ。




「いえ、ゼフィ。僕と組んでみませんか? 雷と風の混合魔法。興味はありませんか?」


「何を言うか、お主ら。ゼフィは、元々クライシスの家系じゃろうが。クライシスと言えば、土属性の家系じゃ。であれば、ワシと組むんが自然じゃろうが」


「た、たしかに。じいやは土の魔法を使っていたけど――」


「そうじゃろうが。であれば、ワシと組むんが自然じゃろうがい」




 だめ。


 だめよ。


 


 ゼフィは――。


 ゼフィは――。




「そ、そんな――。わ、私は。私は――」




「ゼフィ!」




「——フィウメ?」




 ——ぎゅっ。




 気が付いた時、私の身体はゼフィに引っ付いていた。




 だけど――。


 これが私の思いだ。




 その華奢で白い肌も。


 サラサラで白い髪も。


 そして、風の魔法も。


 


 全部、私のものだ。




「フィ、フィウメ?! え、えぇ!」


「……お願い」


「フィ、フィウメ……?」


「……選んで」


「え?」


「ウチを選んでよ、ゼフィ……」


「フィウメ、どうしたの? なんで、泣いてるの?」


「だって……」




 ゼフィは知らないんだ。


 


 私たちが、どれだけ虐げられ続けてきたのか。


 水魔法使いが、どれだけ見下され続けてきたのか。


 


 だけど、ゼフィは――。




 初めて、すごいって言ってくれた。


 初めて、私の魔法に価値を見出してくれた。


 


 それだけでなく――。




 私だけの魔法を作り出してくれた。




 だから――。




「ゼフィ、お願い。ウチには……ゼフィしかいないんっちゃ」




 声が震える。




 だけど――。




 この手は、絶対に離さない。

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