↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
25/29

ーSister's Independence(フィール視点)ー

 ゼフィが歌い始めた。


 


 フィウメのフルートに乗せて。




 また、ゼフィが私の魔力を使うんだ。


 そう思ったが――。


 


 今、私の中から、いつもの魔力が抜けていく感覚が無い。


 いや、たぶん抜けたんだ。


 だけど――。


 いつもの魔力の抜け方に比べると、感じ方が違う。


 なんで??


 


 もしかして、ただ、ゼフィが歌っているだけ?


 それだけなの?




 ——ら~ららぁ♪




 ビュー!!




 あれ?


 


 ——風が大きくなっている。


 


 これは、間違いなくフィウメの魔法じゃない。


 


 じゃあ、どうやって?


 どうやって、ゼフィは魔法を使っているの?




「ゼ、ゼフィ。あなた、何を――」




 らーららららぁ~♬♪




 ポォォォォォン――♬




 ゼフィとフィウメ。


 二人の音楽が一つになって、壮大なハーモニーを奏でている。


 


 私自身も、別に音楽がわかるわけではないけど、これがすごい音色になっていることくらいは、わかる。




 そして――。




「お、おい――。なんだよ、これ……?!」


「これは――、先程のフィウメちゃんのアクア・ピオッツァとは大きく違いますね。一体——」


「バカモン! 感心しとる場合か?! はよ、ここから逃げんと!」




 目の前にできた大きな雲と、そこから生まれる風。


 スオーロ君の言う通り。


 ここに居てはまずいことくらいは分かる。


 


 でも――。


 どうして?


 


 どうしてか、身体が全く動けない。




 そして――。




 ドォォォォォォォン!!




 雲から大きな轟音を鳴らしながら、大量の雨が降り始めた。


 それが、ミスリル・サーペントを襲った。




 なのに――。




「——妙ですね」


「妙って、何がだよ! トゥオーノ! 明らかに魔法が暴走してるだけじゃねえか! 早く、ここから離れるぞ!」


「いいえ、暴走はありえません」


「なんでじゃ! なんで、それがわかるんじゃ!」


「もし暴走なら、これだけの魔法なら我々にも雲が覆われているはずです。ですが――」


「そ、そういえば――」




 そうだ。


 今の雲はミスリル・サーペントの上にしかない。


 だけど、この違和感——。




「ねえ、トゥオーノ君」


「なんですか? フィールちゃん」


「あの、ミスリル・サーペント。全く叫んでなくない? それどころか――」


「叫んでない? ——?! あ! ミスリル・サーペントが!」




 ——ドンッ!




 え?


 ミスリル・サーペントが倒れた?


 何も叫ばず、あの雨を受けて、倒れた?




「——ふぅ。フィールお姉ちゃん、蛇さんどうなった?」


「どうって――言われても」


「これって――どうなっちょるん。なんで、ミスリル・サーペントが倒れちょるの??」




 ゼフィはともかく、フィウメも分かってない?


 それじゃ、私に聞かれても分かるわけないじゃない。




 ただでさえ、私の事や、ゼフィの事もわかってないのに――。




「と、とにかく。ミスリル・サーペントを見て見ましょう」


「お、おい! トゥオーノ、危ないぞ! なに、近づいてんだよ!」


「大丈夫です。僕の魔法なら、防御はできます」


「その防御。ワシにも、使えるんか?」


「スオーロ君——。もちろんです」




 二人は、あの蛇に近づいた。


 そして――。


 


 二人は、ミスリル・サーペントの部位をあちこち調べ始めた。


 


「……ふむ」


「これは――。妙ですね」


「どう? トゥオーノ君、スオーロ君」


「まず、安心してほしいのですが――。ミスリル・サーペントが立ち上がることはもうありません。ですが――」


「どうしたの?」


「このミスリル・サーペント。確かに、呼吸も心臓も止まっています」


「ってことは、完全に死んでるってことじゃねえのかよ」


「えぇ、結果論はそうです。ですが――」


「水魔法にそんな、性質は無い。じゃのに、なぜこ奴の生命活動が止まったのか――じゃな」


「た、たしかに――。じゃあ、なんでこいつは死んだんだよ」


「おかしいのは、それだけじゃないぞい。見よ、このミスリルの鱗を――」




 見ろって言われても――。


 そんな、鱗の違いなんて分からないし。




「うわぁ……すっごい、綺麗な鱗!」


「ゼ、ゼフィ。 触っちゃダメでしょ?」


「だって、お姉ちゃん。こんなにも綺麗なんだよ?」


「そ、それは――そうだけど」




 たしかに、この鱗は綺麗だ。


 さっきまで、魔法を受けていたなんて信じられないほどに――。




「ゼフィ、お主は見る目があるようじゃな」


「どういうこと? スオーロ君」


「本来、ミスリルの鱗というものは、魔法を吸収すれば少し濁りが残るんじゃ」


「濁り?」


「そうじゃ。言ってみりゃ、魔力吸収による摩耗と言ったところじゃのう。じゃから、こんな綺麗な色で残っとるのはありえん」


「じゃ、じゃあ。どうしてミスリル・サーペントは死んだの?」


「それが分からんから、不思議なんじゃ」




 正直、この二人が何を感じていて、今どうなっているのか、私にはあまり理解できていない。


 だけど――。


 間違いなく、これは――。




「フィウメ! フィウメ!」


「な、なんなん? ゼフィ」


「これ、きっと! 私たちの力だよ! フィウメ!」


「そ、それってどういう――」


「だから! 倒せたんだよ! 私とフィウメの魔法で!」




 ——そう。


 その事実だ。


 たしかに、あの時。


 


 フィウメがフルートを吹き、ゼフィが歌った。


 そして、あの大嵐が吹き荒れた。


 その雨をモロに受けたミスリル・サーペントが倒れている。




 だれがどう見ても、二人の魔法でこうなったんだってわかる。




「やったやった! 私たち、やったんだよ! フィウメ!」


「そ、そそうなのかな?」


「そうだよ! やったね! フィウメ!」


「う、うん。ありがとう、ゼフィ」


 


 二人が笑いながら、手を握り合っている。




 ——初めてできた、ゼフィの友達。


 その友達との魔法。


 ゼフィにとっては、これ以上に無いくらい、嬉しい事なのだろう。


 それに、今回の魔法で、私の魔力もあまり取られてない。




 これがゼフィの――、妹の自立ってことなのかな。




 それは、お姉ちゃんとしては嬉しい事に違いない。




 だけど、なんでだろう――。




 なんだか、胸の中にとげが刺さっているみたいな――。


 すっごく――。




 息苦しい……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。