↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
22/29

ーFirst labyrinthー

 うーん。


 サチェル先生の言葉、なんか引っかかる。




「ねね、フィールお姉ちゃん」


「うん? どうしたの? ゼフィ」 


「なんか、ここって迷宮て感じしないね」


「え、えぇ。まぁ、そうね」


「なのにさ。なんで、サチェル先生は迷宮て言ったんだろう」


「さ、さぁ……」


「なに、しょうもねえこと言ってんだ。二人とも。さっさと行くぞ」


「え? あ、ごめんなさい。フィオーネ君」


「ったく、これだから従者の娘ってのはよぉ」


「……従者じゃないもん」




 あの、赤い髪の男の子。


 なんか、お腹の中がムカムカしてしまう。




「おいおい、フィオーネ。即席とはいえ、ワシらはパーティじゃぞ? パーティメンバーを愚弄ぐろうしてどうするというんじゃ」


「だってよぉ」


「まあまあ。ごめんなさい、ゼフィちゃん。彼は、ああいう人なので。どうか、見逃してあげてください」


「う、うん」




「ふんっ! じゃあ、行くぞ」


「ね、ねえ。フィオーネ君」


「なんだよ、聖・妹」


「聖・妹じゃなくて、私はフィール。ちゃんと名前で呼んで」


「お、おう。すまん。で、なんだよ」


「あ、うん。あの、フィオーネ君。さっきからどこに行こうとしてるの?」


「どこって。そりゃお前、出口に決まってんだろ」


「出口って、どこなの?」


「どこって、そりゃお前……」




 フィオーネ君の言葉が、つまった。


 もしかして、フィオーネ君も出口を知らないのかな。




「はぁ。やはり、ノープランでしたか。フィオーネは」


「うるっせえ! てめえは分かんのかよ。トゥオーネ」


「いいえ、ボクも別に分かっているわけではありません。ですが、ゼフィちゃんの言葉がヒントになっているのかもしれません」


「わ、私?」


「はい。サチェル先生は、ゼフィちゃんの言う通り。確かに、ここを迷宮と言っていました」


「なるほどの。迷宮か」




 うん?


 どういうこと?


 トゥオーネ君もスオーロ君も何を言っているのかさっぱり分からない。




「——ねえ、フィールお姉ちゃん。二人は何を言ってるの?」


「わ、私にも分からないわよ」


「たぶん、魔口まぐちの事やと思うよ」


「まぐち? なにそれ」


「こういうダンジョンは、必ず魔口と言って、この場所を作り出すための魔法の吐き出し口があるんちゃ。それが、出口にもなっちょるんよ」


「へぇ、そうなんだ」


「つまり、その魔口を探し当てればいいってこと?」


「そういうことっちゃろうね」


「じゃあさ。どうやって魔口を探すの?」


「安心せい。このパーティにはわしがおるのじゃからな」


「スオーロ君?」


「まあ、見ておけい」




 スオーロ君は、背中に背負っていた大きなケースを広げ始めた。


 そして、中から三つの黒色の管を取り出した。




「すっごい大っきい――。スオーロ君、それなに? めっちゃすごそう――」


「お? ゼフィとやら。こ奴の良さがわかるのか? こいつは、ワシ特製の魔道具じゃ」


「魔道具? 特製? もしかして、スオーロ君が作ったの?!」


「わしは、ドワーフじゃからな。自分の魔道具は自分で作るのは当然じゃ」




 そう言って、ドワーフは三つの管をつなぎ合わせていった。


 すると――。




「うわぁ……」


「これがわしの魔道具。テッラ・サクソフォンじゃ!」




 フォォォォーーン!!




 お腹の奥まで響くように重くて迫力のある音色——。 


 じいやの優しい音を作り出すオカリナとはまるで違う。




 そして――。




「うっうわ、地面が――揺れる?!」


「大丈夫です。慌てないで、ゼフィ君。これがスオーロの魔法ですから」


「ま、魔法?」


「ゼフィ。ほら、スオーロ君は爺と同じ。土属性だったでしょ?」


「え? あ、そっか。じいやの――」


「ふむ。なるほど、四時の方角じゃな」


「わかりました。では、向かいましょう」




 トゥオーノ君の言葉に従って、私たちはスオーロ君の示した方角へ歩き始めた。




 ——チュンチュン。




 空を見上げると、二匹の小鳥が飛んでいるのが見える。


 そして目の前の木々たちは、風に乗せられてゆらゆらと揺れている。




 そして、隣に流れている透き通った小川には――。




「あっ! フィールお姉ちゃん、お魚! お魚がいるよ!」


「ゼフィ、ちゃんと前を向いて歩きなさい。また、こけちゃうでしょ?」


「大丈夫だよ、お姉ちゃん。ここなら、どんなにこけても大丈夫だし。ね? フィウメ」


「え、ええ。でも、どんな怪我でも大丈夫というわけではないけん、気を付けるに越したことはないっちゃん」


「そ、そうなんだ」


「ほら、だから、気を付けて歩きなさい。ゼフィ」


「う、うん。わかった……」




「お前ら、ほんとピクニック気分だよな」


「だって、こんなに綺麗なんだよ?」


「綺麗って……。お前なぁ」


「まあまあ、フィオーネ君。怖がるよりは数倍マシですよ」


「気を抜きすぎるのも、問題じゃがな。っと、さっそくか」


「……え?」




 ギェエエエエ!!




「ひっ……?! お、お姉ちゃん。なに、あれ。きもい……」


「ゼ、ゼフィ。ちゃんと、私に捕まっていなさいよ」




 目の前に現れたのは、全身緑色で腰に布を巻き、右手には大きな棍棒を持った魔物だ。




「ふん。なんだと思ったら、ゴブリンかよ。ここは俺に任せろ」


「フィオーネ君?」


 


 フィオーネ君は、手に持っていたケースを開けて、ルビー色に光るトランペットを取り出した。




「行くぜ。炎舞!『フィアンマ・ヴォルティーチェ』!」




 フォーーーーーーン!!!




 トランペットから鳴り響く上質な音色が、炎の渦を作り出し、ゴブリンを襲った。


 


 そして――!




 ギェエエエエ!!




 炎に包まれてしまったゴブリンが悶え苦しんでいる。




「なんだか、ゴブリンさん。かわいそう――」


「ゼ、ゼフィ」


「かわいそう? 何を言ってんだ、お前。これが下等生物の末路なんだよ!」


「か、かとう生物?」


「あぁ、そうだ。こういう奴らは俺たち人間から、蹂躙される運命なんだよ。当然、それは人間の世界でもな!」


「——人間の世界? どういうこと?」


「わからねえのか? 力のない人間が力のある人間から搾取され、蹂躙される。それがこの世界の理なんだよ。たとえば、そこの水」


「わ、わたし?」


「お前の魔法は、こんなことできねぇだろ?」


「え、ええ。まあ、そりゃできんよ……」


「だろうな。それが水だ。お前もあれと同じ。価値の低い下等魔法使いなんだよ」


「ちょっと! フィオーネ君! なんで、そんなこと言うのさ!」


「事実だよ、事実」




 ——そうか。


 このムカムの原因が分かった。




 彼が、私のことを従者の娘って言った事じゃない。


 じいやのことを見下してるからなんだ。


 そして、今は――。 




「っちょ……フィオーネ君」


「んだよ、トゥオーネ。って――、なんだありゃ?!」




 ギャアアアアアア!!




 この鳴き声。


 一匹や二匹じゃない――。


 


 もっともっと多い!




 木々の向こうからゴブリンが次々と現れてくる。




「なんじゃ、あの数は――。尋常じゃないぞい!」


「どうなっとるんだよ! こんなの……」


「ま、まさか。ここは――」


「なんじゃ、トゥオーネ! わかっとることがあるんならはっきり言わんか!」


「憶測ですが……。おそらく、ここは集落なのだと思います。ゴブリンの」


「集落ぅ?! ってことはもしや――」




 ギュルァアアアアアア!!




「や、やはりですか――」


「ね、ねえ! みんな、あれ何なの?! さっきのゴブリンさんより、何倍も大きいよ??」


「ゴ、ゴブリンキング――」




 ゴブリンキング?


 ってことは、この魔物がゴブリンさんの王様ってこと――?!




「お、お、お、おい! 水!」


「な、なに?」


「なにじゃねえよ! 早く、足止めしろよ! それが水魔法の役目だろうが!」




 ——ま、また。




「う、うん。わかった」




 フィウメは、マントの裏に収めていた銀色のフルートを取り出した。


 そして――。




 ポーー♪




 ——すごい。


 今まで、聞いたことのない澄んだ音。




 そして――。


 甲高い音色と共に、現れた水が滝のような流れを持って、多くのゴブリンさんやゴブリンキングを襲った。




 ギュエエエエエ!!


 


「す、すごい。だけど――」


 


 ゴブリンさんたちは一匹も倒れることもなく、足を止めなかった。


 だけど――。


 なんとなくだけど、ゴブリンさんたちのスピードが落ちたような……。


 足元が濡れて、もつれちゃってるのかなぁ。




「っち。足止めつっても、この程度かよ。おい! スオーロ!」


「ったく、人使いが荒いのう。フィオーネは」




 ゴゴゴゴゴゴゴ!




 スオーロ君が、さっきのサックスを吹くとまた、地面が揺れ動いた。


 だけど、さっきと違う――。




「フィ、フィールお姉ちゃん――!」


「ゼ、ゼフィ! こっち!」




 ゴブリンやゴブリンキングの地面の下まで、ひび割れが起きると大きな穴が出来上がった。




 そして――。




 ギュアアアア!!




「ゴブリンさんたちが落ちていく――」




「クレーパ・テッラ。ワシの魔法じゃ」


「土属性の魔法は地殻操作。これこそが、スオーロ君の魔法の真骨頂です」


「そう! 魔法はこうでなくっちゃな! お前のと違って」




「そ……そうっちゃんね」


 フィウメは、笑っていた。




 さっきまで綺麗な音を出していたフルートを胸元に抱えて、いつもと同じように笑っている。




 なのに――。




 なんでだろう。




 その笑顔を見ていると、さっきよりもっと、お腹の中がムカムカしてくる。




「……フィウメ」


「ん? どうしたん、ゼフィ?」


「……なんでもない」




 私には、まだ分からない。




 フィオーネ君の言っていることが間違っているって、どうやって証明すればいいのか。




 だって実際、フィウメの魔法ではゴブリンさんを倒せなかった。




 だけど――。




だからって、フィウメまで自分のことをそんなふうに言わなくてもいいじゃん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。