ーAdmissionー
「ここが……プラトン魔法学園」
マジアほどじゃないけど、それでも見渡す限り、大きな建物ばかり……。
「ふふっ、二人ともすっごく楽しそうね」
「わ、私は……、楽しいというか、驚いているというか……」
「わくわくするよね! フィールお姉ちゃん!」
「わくわく……。うん、そうだね」
「じゃあ、二人とも、先にギルドに行くわよ」
「ギルド?」
「えぇ。学園ギルドよ。そこで、二人のことを登録するの」
「わかった!」
——カラン、カラン。
「こ、ここが……」
「学園ギルド……」
扉を開けた瞬間、たくさんの人で賑わっている。
大きな掲示板の前で集まっている人たち。
テーブルの上で、コーヒーを飲みながら話し合っている人たち。
そして、奥にはじいやみたいな人が、コーヒーを作っている。
「ねえ、フィールお姉ちゃん。ここって、学校……なんだよね?」
「うん、そうだと思うけど――」
「なんかさなんかさ、絵本で呼んだ学校の雰囲気と違うね」
「うふふ、ここは学園ギルドだけど、喫茶店にもなってるのよ。それと奥の掲示板は、クエスト案内までやってるの」
「クエスト案内?」
「ええ、そうよ。いろんな、クエストがあって、おもしろいのよ? お金も稼げるし」
「そうなんだ! フィールお姉ちゃんフィールお姉ちゃん! 一緒にやってみようよ! クエスト!」
「もぉ、ゼフィったら。まず、私たちはちゃんと魔法を使えるようになってからでしょ?」
「あ、そうだった……」
「うふふ、じゃあ、まずはここで二人を登録するわよ」
「——二人の登録を、お願いいたします」
「かしこまりました、ラミアお嬢様。お二人の身分等がわかるものはございますか?」
「こちらの書類でよろしいかしら?」
「はい。確かに、お預かりいたしました。えっと――、フィール・メディアル様とゼフィ・クライシス様でございますね」
「あれ? クライシス?」
クライシスって、たしか――。
じいやの家の名前じゃ?
「それでは、こちらが二人の学生証章になります」
「学生証章?」
「ええ、こちらがプラトン魔法学園の生徒であることを証明するものであり、クエストを受ける上でも必要になってくるものです」
受付のお姉さんが差し出してくれたものは、手のひらに収まるほどの薄い銀板だった。
表面には、私の名前と紋章が刻まれている。
だけど――。
そこに刻まれている名前は――。
【ゼフィ・クライシス】
やっぱり、メディアルじゃない。
どうして……?
———————————————————————。
「さ、ここが今日から二人が暮らす部屋よ」
「こ、ここが――」
久しぶりのフィールお姉ちゃんと同じ部屋。
ベッドは上下に二つ。
そして、二つのそれぞれの窓に置いてある机。
さらには、真ん中に大きな丸い机——。
いつもだったら、楽しいはずはずなのに。
でも――。
さっきから――、ギルドの時からずっと気になっていることがある。
「ねえ、ラミアお姉さま」
「うん?」
「どうして、ゼフィの名前が【ゼフィ・クライシス】なの? ゼフィは、ゼフィ・メディアル。私とラミアお姉さまの妹じゃん」
——フィールお姉ちゃん。
「ふふっ。フィールちゃんの方が気にしていたのね、このこと」
「ラミアお姉ちゃん、どういうことなの?」
「大丈夫、二人にはちゃんと説明するつもりだったから。これはね、フィアンマお兄様の策略なの」
「——フィアンマお兄ちゃんの?」
「二人は、姉妹てわかるとまずいことになっちゃうの」
「どうして、それがわかるとまずいの?」
「——そっか、私とゼフィは双子」
「そう、二人は双子」
「——双子? 双子だと、どうなるの?」
「ゼフィ、忘れたの? 爺から習ったでしょ。本来、私たちのような双子は――」
「そう、双子はけっして生まれることはないの」
そうだった。
昔、じいやから教えてもらったことがある。
人から生まれる子供は、一人だけ。
同じ日に、同じお母さまから二人の子供が生まれることなんて――この世界ではありえないんだった。
「そして、二人には言ってなかったんだけどね。実は、二人が生まれた直後に、お母様は亡くなったの」
「——お母様が?」
「ええ、突然の事だったわ」
お母さま。
私には、ほとんど記憶がない。
ただ、フィールお姉ちゃんと同じ金色の髪をした人だったということくらいしか、知らない。
だけど――。
一つだけ覚えている。
私が――。
いや、私たちがまだ、お母様のお腹の中に居る時。
いつも聞こえてたあの声。
優しくて、どこかあたたかい声。
そんなお母様が――。
「もしかして、私たち……私たちが生まれたから?」
「違う!」
ラミアお姉ちゃんの声が、部屋に響いた。
「そんなわけない、そんなわけないじゃん! ゼフィちゃん!」
「ラミアお姉ちゃん……」
「少なくとも、私は。いいえ、私だけじゃないわ。父上も、フィアンマお兄様も爺も皆。あなたたちが産まれたからだなんて、これっぽちも思ってないわ。少なくとも私は嬉しいの」
「嬉しい?」
「だって、ゼフィちゃんにフィールちゃん。こんなに可愛い子たちが私の妹として産まれてきてくれたのよ? そんなわけないじゃない。ね? でも……」
「ラミアお姉ちゃん?」
「アナタたち二人のことが、双子だって世間にばれちゃったらどうなるか……、わからなかったの。特に、父上は悪いことにならないか。二人が連れ去られてしまうんじゃないかって、一番心配してたの」
「だから、私たちは屋敷から出られなかったの?」
「そう。それが、あなたたちを守る手段だったの。でも――」
「もしかして、ゼフィの魔法の事?」
「そう、ゼフィの魔法はさすがの父上やフィアンマお兄様でも分からないことが多すぎるの。だから、プラトンに行かせることを決めたの。そこで、フィアンマお兄様は、二人のことを隠すために、ゼフィちゃんを爺の娘にしたの」
「そうだったんだ。でも……」
私が、じいやの娘……。
それ自体が嫌というわけじゃない。
でも――。
「私……。フィールお姉ちゃんと呼んだらダメなの? ラミアお姉ちゃんのことお姉ちゃんて呼んだらダメ?」
「大丈夫よ、ゼフィ。たぶん、そのために爺の家名なんだと思うから」
「ええ、そうよ。爺は私たちの屋敷に住み込みでいるでしょ? ゼフィはメディアル家で一緒に過ごしてきた家族なのだから。私たちをお姉ちゃんと呼んでも何も不思議じゃないわ」
「そ、そうなんだ。よかったぁ――」
「でもね、ゼフィちゃん。これだけは、約束して。あなたは、私とフィールちゃんの愛しい妹であることに変わりないわ。だけど、絶対に、フィールちゃんと双子だということは隠してね」
「うん、わかった」




