ーSister Quarrelー
第14話ーSister Quarrelー
フィアンマお兄ちゃんの話は、難しすぎて私には、理解できなかった。
だけど――。
ただ一つだけ、私の胸を突き動かした。
「本当に? 本当にお外に出られるの?」
「あぁ」
「本当に、私とフィールお姉ちゃん、ラミアお姉ちゃんの学校に行けるの?」
「あぁ。お前にはその必要がある」
「私、魔法をお勉強できるの?」
「無論だ。むしろ存分にやるがいい」
——フィアンマお兄ちゃんの言葉を聞いて、暗い気持ちが一転した。
ようやく、夢が叶うんだ。
この世界に生まれてから、ずっと憧れていた。
もちろん、今の生活に不満なんてない。
大きな屋敷。
少し怖いけど、大好きなお父様。
頼りになるじいや。
優しい、フィアンマお兄ちゃんとラミアお姉ちゃん。
そして――。
いつも一緒に居てくれるフィールお姉ちゃん。
あの頃の私には、想像も付かないほど、幸せに満ち溢れている。
だからこそ、心のどこかでこれ以上を、求めてはいけないと思っていた。
――全てを失っちゃいそうで怖かったし。
実際に、私は魔法を知りたい・使いたいって思ってしまった。
だから、今はフィールお姉ちゃんは――。
もしも、そんな私がお外に出たい、ラミアお姉ちゃんの学校に行ってみたいなんて思っちゃうとどうなってしまうか――。
考えるだけでも、夜眠れなくなってしまいそう……。
『——その魔道具は、没収する』。
はっ!!
私とフィールお姉ちゃんの宝物——。
「フィアンマお兄ちゃん。でも、私……」
「お前の言いたいことは分かっている。父上の事だろ」
「う……うん」
「心配するな。父上のことは俺が説得する」
違う。
私が言いたいことはそれじゃない。
だけど――。
どうしよう。
言葉が出てこない。
フィアンマお兄ちゃんに、上手く伝えられない。
「そんな顔をするな。ゼフィ」
「——フィアンマお兄ちゃん」
「心配するな。父上は俺が必ず、何とかする。だから、ゼフィはフィールのところに行ってくれ」
「わかった」
私は、胸の中で抱きしめてるローブをぎゅっと抱きなおした。
――コンコン。
「ラミアお姉ちゃん、いる?」
「ゼフィちゃん?! ちょっと待っててね!」
——ガチャ。
扉の向こうから、ラミアお姉ちゃんの声が聞こえたと思ったら、勢いよくドアが開いた。
「ゼフィちゃぁん!」
「えっ、ちょっちょっと。ラミアお姉ちゃん?」
びっくりした。
突然、ラミアお姉ちゃんが私を抱きしめてきた。
しかも、なんだかとっても慌てている。
「ラミアお姉ちゃん、どうしたの?」
「どうしたの? じゃないわよ! どこにいたの? 心配したんだから」
「し、心配? あれ、じいやもいる」
「ゼフィお嬢様。ご無事で何よりでございます」
「う、うん。私は大丈夫だよ? いったい、何があったの?」
「先ほど、大きな竜巻が発生しました。その結果、塔の上が完全に破壊されてしまったのです」
「そう! それで、ゼフィちゃんがどこにもいないから……。もしかして瓦礫の下敷きになってしまったんじゃないかって。本当に、心配したんだよ?」
「そ、そうだったんだ。ごめんね、ラミアお姉ちゃん」
「ううん。でも、無事でよかった」
「……ゼフィ?」
「フィールお姉ちゃん? フィールお姉ちゃん、大丈夫なの?!」
奥のベッドから聞こえてきた声の主は、フィールお姉ちゃんだった。
しかも、ぐったりと横になっている。
もしかして、瓦礫にぶつかって――。
「大丈夫? フィールお姉ちゃん! もしかして、ケガとかしちゃったの?」
「ううん。それは大丈夫。ちょっと、疲れちゃっただけだから」
「本当に? でもぉ――」
「大丈夫、本当に大丈夫だから――コホッ、コホッ」
「?! フィールお姉ちゃん……」
「フィールお嬢様、こちらを」
じいやがフィールお姉ちゃんの口元に水を運んでくれているけど――。
「フィールお姉ちゃん、血が――」
「心配しなくていい。だから、あっち行ってなさい」
「そんな、私。せっかく――」
「ゼフィちゃん?」
「フィールお姉ちゃん。今日さ、私たちの誕生日でしょ? だからね。私」
最悪のタイミングだ。
だけど、今日はもうこのタイミングしかない。
そう、何となく感じた。
「フィールお姉ちゃんに似合うと思って、私すっごく頑張って作ったの」
「このローブを……コホッ。ゼフィが?」
「うん。それでね、フィールお姉ちゃん」
「何」
「フィールお姉ちゃん、それを着て、私と二人で魔法学園に行きたいんだ!」
「……え? ゼフィちゃん、それって、どういう」
「さっきね。フィアンマお兄ちゃんが言ってくれたの。二人で、ラミアお姉ちゃんの学校に行っていいって」
「フィアンマお兄様が?」
「うん」
「……私は、行かない」




