第7話 でかい!うまい!
「おーい、取ってきたぞ!」
どうやら、将軍が戻ってきたようだ。
って、でっか!
あ、おっぱいではなく。
その肩に担いでいる大きな鳥のことだ
白い羽に、赤いとさか、見た目は鶏にしか見えない。が、普通の鶏との違いはその大きさだ。
でかい。とにかくでかい。
将軍もでかいが、その3倍くらいはありそうだ。
この森あんな奴がいるのか……そりゃ危険だわ。
「さて、今夜はこいつが主食だ。エリン、任せたぞ!」
「お任せください!」
部下さんは、地面に置かれたデカ鶏の前で腕まくりをした。
「え、これ捌けるの?」
「実家はお肉屋さんなので」
部下さんはドヤっと、どこか誇らしげだ。かわいい。
「それは頼もしい。今後のために是非近くで見せてください!」
「もちろんであります。私一人では難しいんで、手伝っていただき大変助かります! 将軍も手伝ってください」
「おう、任せろ」
動物を捌くのは初めてだな。
しっかし、もし今後、この鳥を捌く機会があったならば、この大きさの鳥を捌くのは一苦労で、一人では絶対にできないな。
三人でやってようやくと言ったところだ。
「猟師系のスキルがあれば違ってくるんですけどね……」
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「お疲れ様であります!」
「いやあ、大変だったな……」
「初めてにしては筋が良かったですよ!」
「ホントっすか?」
なかなか初めて体験したことだったし、元の世界でも見ないことだった。結構精神的にキているが……
「ええ、男子にしてはやはり肝が据わっているでありますよ!将軍に気に入られるだけはあります」
「そうだろう!」
と、将軍が腰に手を当て胸を張る。
「どうして将軍が満足気なんでありますか……」
「ところで……これはどう食べる?」
「ここは僕に任せて!唐揚げにしましょう!」
唐揚げ。
鶏肉と言ったらこれだろう。異論は認める。
チキン南蛮派もいるだろうからね。
まず鶏肉を一口大に切ります。
ほんで、醤油とニンニクとショウガと塩コショウを突っ込んで揉みこみます!
そしたら薄力粉と片栗粉をまぶします!
家の外に起こした焚火の上に持っている中で一番大きな鍋に油を投入。
箸をいれて泡が出てきたら頃合い。油の準備はオッケー。
高火力で一気に揚げる!
「う、うまそうな匂い……」
「将軍、よだれが出ているであります」
「おっとすまない」
お肉が浮かんで来たら揚がった合図だ。
鍋から出して、皿に盛り付ける。
「完成だ!」
「おお、見事だ!少年!いただきます!あ、ウマ!!」
「将軍、ちゃんと座って食べてください……あ、おいしい」
「それじゃ僕も失礼して、いただきます」
は、う、うますぎる!!
とにかく前世でも食べたことがないくらいうまい。
これは単純に素材がいいのではないのだろうか。
外はカリッと、中はジューシー!
噛んだ音が自分の耳で聞こえるくらいクリスピーに揚がっている。
肉は柔らかく噛めば噛むほどにアツアツの肉汁がそのワイルドな肉本来の香りとニンニクの香りと共に口いっぱいに広がる!
「いや、これ素材だけじゃないですよ……」
「流石私の嫁だ!毎日でも食える!」
「毎日は流石に飽きると思う……」
なんだかんだ毎日食えると思ったものでも、意外と三食は厳しかったりする。
カレーとか。
「いやあ、食ったな……」
「本当によく食べたな……この量を」
将軍はやはりその肉体を維持するためには、たくさんの栄養が必要なのだろう。
信じられないほどによく食べ、途中追加で唐揚げを挙げる羽目になった。
「余った肉はどうしますか」
あの大きさの鳥だ。
三人で食べたとしても、やはり余りが出てしまう。
「ああ、冷蔵庫に入れておきます」
「冷蔵庫だと?」
「なんでありますかそれ」
ああ、この世界に冷蔵庫は存在しないのか。
「保冷庫のことか?」
「保冷庫?あー、まあそんな感じ」
どんな感じだよ。自分で言っておいてなんだが。
おそらく、文字的に推測できることとしては、きっと冷蔵庫と似たようなものではなかろうか。
きっとそう。おそらくそう。
「じゃあ、運びますから、場所だけ教えてください。私たちでやっておくでありますから」
「え、いや僕も手伝いますよ」
そう言って立ち上がりかけた僕の肩を将軍はそっと抑える。
「いい、いい。男の子は座っておけ、力仕事は女の役目と相場が決まっている」
「そんなこと初耳ですが」
どういうこっちゃ、力仕事は女の役目? 聞いたこともない。
……まあ文化が違うということか。郷に入っては郷に従うことにしよう。
「やっぱり保冷庫は床下でありますか?」
「いや、この箱に入れてくれればいいよ」
そう言って僕はキッチンの横に置いてある冷蔵庫を指さす。
「え? これが保冷庫ですか?」
「随分とコンパクトだな」
将軍と部下さんは肉を持ったまま、冷蔵庫を興味深そうにまじまじと見ている。
「この小さな箱の中に冷気が閉じ込められているんでありますか?保冷庫よりもコンパクトなのに、かなり量が入りそうですね」
すると将軍はひらめいたようだ。
「なるほどそうか、君は賢者だったのか?」
「けんじゃ?」
「魔法に精通し、数々の見たこともない魔道具を作り出したとされる偉大な人だ。知らないのか?」
「知らない人ですね」
「本当か?そ、そうか……人間でも知っていると思っていたのだが……」
もしかして、俺が神様だと思っていた人は、実は賢者だったりするのか?
「まあ、ちょっと心あたりはありますが、賢者とは名乗っていませんでしたね」
「なるほど、もしかしたらその人は賢者様かもしれないな」
「へー」
賢者だろうが、神様だろうが、やってることは人間離れしているけどね。
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「では、将軍、私はいったん戻って事の顛末を伝えに行きます」
「ああ、頼んだ」
森の中に入っていく部下さんを将軍と二人で見送った。
「では、将軍。お風呂どっちから入りますか?」
「ふむ、君にしよう」
「いや、お風呂にする?ご飯にする?それともわたし?って聞いてないから」
「聞いたようなもんだろう」
なるほどすばらしい認識能力だ。病院に行った方がいい。
「ああ、行きつけの病院は決めておいた方がいいな。そのうち子供も生まれる」
「腹をさするな、そこに入っているのは鳥だろうが」
「ああ、わかった。寂しい思いをさせてしまったようだな、そうカリカリするな。一緒に入ろう」
「別にカリカリしてな……うん?今なんて?」
「だから、一緒に入ろうと」
「入りましょう」
「おお!?いきなり積極的になった……半分冗談だったのに」
即答も即答。即即答である。そんな誘いを断るバカがどこにいる。
文化の違い、万歳!




