第6話 畑ができましたよ
「で、できた」
黄昏時の日は目の前の立派な畑に僕らの影を落としていた。
畑をつくり、種を植えたころには、もうすでに夕方。
三人とも土まみれである。
いやはや、大・満・足 である。
やはり、日々仕事に追われるよりも、こうして土をいじっているほうがいい。
少なくとも、僕は。
将軍は体中に噴き出している汗をぬぐって、じっとりとした目で僕を見た。
「もう日もくれてしまったな」
「そうっすね」
「夜は危ないよな」
「そうっすね」
「泊まっていい?」
その発言を聞いた部下さんは呆れた顔をして指摘する。
「はい? 将軍、将軍ならそこら辺の魔物くらいデコピンで……」
将軍は部下さんの肩をがっしと掴みながら、迫る。
「あ、ぶ、な、い、よな?」
「スゥー……あぶないっすよねー夜」
将軍、大人気ないぞ。
しかし、この掛け合いができる上下関係は貴重だ。
きっと、数々の戦場を渡り歩いてきた戦友なのだろう。
「全員分の寝床はあるんでありますか?」
「は?エレナも泊まるつもりなのか?お前は帰れよ」
「なぜゆえでありますか!?」
「誰が本部に報告するんだよ」
「た、確かに……」
「だから泊まっていい?」
前後の発言とのつながりが全くないが、まあ、ここまで働かせておいてそのまま帰らせるのも気が引ける。
「いや、まあいいっすよ」
「いいのか!」
「ええ、今日は助かりましたし」
実際、彼女たちがいなければ、畑を作って、種を蒔く段階までは到れなかっただろう。特に将軍のパワーによる土の掘り返しは見事だった。
「といってもご飯はないんですけどね」
「え、ないのか?」
「ないです」
「ど、どうするつもりだったんだ」
「そこらへんの雑草を食べるつもりでしたが」
雑草って食べられるんだよね。
野草を食べるのもまた、田舎生活の楽しみの一つだった。
別に田舎の人が常に野草を食べていると言いたいわけではないぞ?
単純に僕がやりたいだけだ。
「おいおい、やっぱり保護した方がいいんじゃないか」
「いえ、畑ができましたから。あとは収穫するだけです」
「う、うーーん。そんな一日とそこらで種から収穫できるまで成長しないと思うでありますけどね……」
するんだなぁこれが!
いや今日が初めてなので実際一日で収穫できるまで成長するかどうかはわからんが。
「じゃあ、とりあえず、私はそこらへんの魔獣を狩ってくるから、ここは任せたぞ」
「了解しました」
将軍は夜の森の中へと歩いて行った。
すると、再び部下さんが話しかけてくる。
「……先ほどは疑ってしまい申し訳ありませんでした」
「いえいえ、どうやら珍しいスキルらしいですし、疑うのも無理はありません」
流石神様製と言ったところか。戦闘経験が豊富そうな将軍でさえ知らなかったし。
「そう言っていただけると助かるであります。私が」
なんとも律儀な人だ。最後の言葉が余計だが。
「実はまだ謝らなければならないことがあります……」
「なんでしょう」
「うちの将軍がご迷惑をおかけしまして、すみませんでした」
再び部下さんが頭を下げた。
「いえいえ、お気になさらず、俺の方も畑づくりを手伝ってもらいましたし……」
「そう言っていただけると助かるであります。将軍が。まあ、悪い人ではないんですよ」
まあ、そうだろうな。
部下との距離が近くていい感じの関係そうだもの、悪い人には見えない。
「ただちょっと、熱血なところもありますし、むさ苦しくて汗臭いですが」
「そのようですね。あってまだ一日目ですが、それでも熱気が伝わってくるような気がします」
なんというか見た目は涼し気な人なのに、なかなか熱血な人だなと思った。
「実は将軍はですね……」
「ほう……?」
そのまま俺らは将軍が帰ってくるまで将軍の話題で盛り上がった。




