第5話 頼むぞ神様!絶対結界!
「であれば、見せてもらおうか」
「え?」
「君はこの奇怪の森という極めて危険な森に住んでいる、そして君はスキルがあるから大丈夫だと言ったな。私はその証拠が欲しいのだ」
なるほど、確かにそうだ。
この危険な森の中(そうなの?)で、暮らすには証拠が欲しいと。
「そしてこれは私情だが、実はな、私は将軍なんだが、今だに修行中の身でね。後学のためにその君のスキルを体験してみたいんだ」
「はあ……」
「君の実力も見ることが出来るし、私も安心できる」
「とかなんとか言ってますけど、どうせ男の子の体に触りたいだけでありますよね?」
「そんなことないが?」
なんか部下の人、将軍に容赦ないな。
「君の絶対結界というスキルはおそらく防衛系のスキルだろう?私の剣を防ぐことが出来るなら、この森の魔物でも問題ないだろう。さ、外に出ようか」
将軍は二杯目のお茶をグイっと飲み干すと、立って外に出た。
僕もそれに続いて外に出る。
「とはいっても、本物の剣を男の子に使うのは憚られるな……ああ、これがいい」
将軍は近くに落ちていたいい感じの木の棒(かなり大きい)を拾って素振りを始めた。
そんな自分と同じくらいの身長の木の棒(もはや丸太)を片手でぶんぶん振るうなん て……一体どんな筋肉してるんだ。
「君も準備をしなさい」
「あ、はい」
と言っても、特に準備することはない。
一応、屈伸したり、手足をぶらぶらさせたりしていると、部下さん(エリンとかいったか?)が近づいてきた。
そしてこそっと俺に耳打ちする。
え、なんですか?距離近くないですか?好きになってしまいそうなんですが。
「男の子さん、見栄を張るための嘘ならやめた方がいいでありますよ……」
「いえ、見栄という訳ではなく……」
「男の子さんのことを心配していってるんです。将軍は素手でデュラハンを巴投げしたことがあるであります……」
「デ、デュラハンを巴投げ……」
な、なんかすごそう……
「あと、キマイラの尻尾でちょうちょ結びを……」
「キ、キマイラの尻尾でちょうちょ結び……!?」
な、なんかよくわからん……!
でもすごいことしてるのはなんとなくわかるよ。
「でも、大丈夫です。僕は信じることにしたので」
「自分を、でありますか?」
「いえ、縁を、です」
神様にあったのもこれもまた一つの縁であるが故。
「……そうですか、ではお気をつけて」
「こら!なにこそこそと話しているんだ!うらやま……間違えた、セクハラだぞ!」
「本音が出てるでありますよ、本音が」
僕は部下さんと離れた後、一通り思いついた準備運動を終わらせた。
「準備はいいかい?少年!」
「はい、大丈夫です。よろしくお願いします」
「うむ!礼儀が正しくてなにより!」
神様によれば、僕には絶対結界の効果によって、傷一つつかないらしい。
らしい、というのは、まだこのスキルの恩恵を身をもって実感したことがないからだ。
信じてるぞ、神様!
「では、行くぞ!」
将軍は、木刀を上段に構えて、消えた。
消えた、というのは、きっと語弊がある。
正しくは、早すぎて、僕の目には認識することが出来なかった、と表現するのがいいだろう。
気づいた時には、すでに、将軍は僕に向かって木の棒を振り下ろしていた。
「え、早……」
しかし、その木刀が僕に届くことはなかった。
当たる瞬間に閃光がはじけ、耳をつんざくような激しい音が聞こえると同時に、将軍の木の棒が反動で押し返された。
「なんと……!」
「将軍の剣を押し返した!?な、なんてこと……」
将軍は一度は驚いて僕と木の棒を交互に見ていたが、なにかを理解したようだ。
「……なるほど、そういうことか」
いや、どういうこと?自分の絶対結界が将軍の剣を防いだことはわかったが、僕自身はなにもしていないから、どうにも実感がない。
彼女は一体なにを理解したのか。
「見事なスキルだ。さぞ前世で徳を積んだのだろう」
「え、いやべつに……」
っていうか徳?前世で徳を積めば強いスキルがもらえる感じの世界なんですかここ?
「美しく、強い男よ。見事だ……」
将軍は僕の前に片膝を立てて座り、手を取っていった。
「どうだ。婿に来る気はないか?」
「え、じょ、冗談を」
「本気だ」
将軍の目には一切の迷いはなく、まっすぐで、真剣な目をしていた。
「私は私の隣に立てる男を探していた」
「どうだ」
「……」
いや、こんな美人に見つめられて求婚されたら誰でも堕ちてしまいそうですが……いや、まてよ。大事なことを忘れているぞ。
「結婚したらどうなるんです?」
「副官として一緒に戦場に出よう。私の背中を任せたい」
「いやです」
結構だ!もっと僕は庭を作って農業やってのスローライフがしたいんだ!
誰が好きで戦場なんかに赴くもんか!
「え?なんだって?」
「いや、だから、結婚はいいです」
「了承してくれたのか!」
「違う、遠慮するっていうこと!」
「なに?遠慮はするな。私は将軍だ、君一人くらい養えるぞ!」
通じねえ。
この人通じねえ。
であればこの状況、最大限に活かすとしようか!
「あのね、僕と結婚したかったらね、まず手伝ってもらおっかな!」
「手伝う?何をすればいいんだ?」
「今日は、畑を作ります!」
「は、畑?」
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「はい、もっと手を動かして!」
「ひぃー」
「おいおい、エレナ、そんなへっぴり腰ではなにもできんぞ!筋肉はどうした筋肉は!」
現在、畑づくりの最中である。
いやあ、これこれ!
これがやりたかったのよ!
鋤を使って、地道に土を耕していく。
この土に鋤を入れる感覚。
土を踏み締める音。
むせかえるような土と草の匂い。
体を照らす太陽!
「あー、健康になっていく……」
オフィスで毎日パソコンに向かって仕事しているより確実に健全!健康!
太陽の日を浴びて体が喜んでらぁ。
「今なら光合成もできる気分」
「え?結婚?」
「言ってない」
結婚自体はいいが、それに付属するものがやばすぎる。
戦場をこの人と一緒に駆け巡るなんて御免だ。
「……僕がなんのためにここにいると思ってるんだ」
「何のためにいるんだ?」
一人事のつもりだったが、どうやら声が大きかったか、将軍が地獄耳なのか、聞かれてしまったらしい。まあ、夢を語ってもバチは当たるまい。
「僕は、ここに自分の庭を作りたいんだ」
「庭?」
「そうだ、庭を作りたかったんです、昔からさ」
「ほーう、庭園が欲しいということか」
おそらく将軍の頭の中に浮かんでいるような庭園と俺が思い浮かべる庭園は違うだろうが、おおむね、広義の意味では同じなのでまあいいだろう。
「まあ、そうっすね」
「なら、私が業者にたのんでやろうか?」
「わかってない!ジブンでつくるのが楽しいんだろうが!」
自分で作らずして庭園をの乗るのはいかがなものか!
まあ、自分で出来そうもないところは業者を頼もうと思うけども。
「そ、そうか……」
「理想の庭ができるまでは、結婚はないな」
「むむむ、残念だ……しかし、君の選択を尊重しよう」
「将軍、口を動かさずに、手を動かすであります…」
僕らはもくもくと畑を作り、種を植えた。




