第六十九話 最後の依頼
第六十九話です。
どうぞよろしくお願いします。
帝都を発つ前日、俺たちは、ギルドの掲示板を、何気なく、眺めていた。
「せっかくだし、最後に、一つくらい、依頼、受けていきませんか」
ユイの提案に、俺は、頷いた。
「そうですね。この街での、最後の思い出に」
掲示板を、見比べていると、一枚の依頼書に、俺は、目を、留めた。
【新人巡礼者の護衛・育成】
報酬:応相談/協力依頼
難易度:★★
備考:ギルド新人研修プログラム
「これ、なんでしょう」
俺の呟きに、受付の職員が、説明を、加えてくれた。
「再構築プロセスの一環で、新しく始まった、プログラムです。新人の巡礼者様たちに、経験豊富な冒険者が、実地で、指導を行うという、試みなんです」
「俺たちで、いいんでしょうか」
俺の問いに、職員は、頷いた。
「もちろんです。Aランクの、皆さんなら、これ以上ない、適任者です」
俺たちは、顔を、見合わせ、頷いた。
「受けます」
翌朝、俺たちは、指定された、村の外れの、訓練場に、向かった。そこには、まだ、装備も、ぎこちない、数人の、新人巡礼者たちが、緊張した面持ちで、待っていた。
「はじめまして。今日、指導を、担当させてもらう、リョウです」
俺の挨拶に、新人たちは、それぞれ、緊張した様子で、頭を下げた。
「あの……本当に、あの、有名な……」
一人の、若い青年が、恐る恐る、そう、尋ねてきた。
「そんな、大したものじゃ、ないです。皆さんと、同じように、最初は、何も、分からないところから、始まりました」
俺の言葉に、皆が、少し、意外そうな、表情を、見せた。
「まずは、基本的な、戦闘の心構えから、始めましょうか」
俺は、ユイ、タクト、クロトと、それぞれ、役割を、分担しながら、丁寧に、指導を、進めていった。
「観察眼の使い方、こう、意識を、集中させると――」
俺は、実演を、交えながら、看破の真眼の、基本にあたる、観察眼の、使い方を、伝えた。
「わあ、本当に、見えます……!」
一人の新人が、驚いたように、声を上げた。
しばらく、基礎的な訓練を、続けていると、訓練場の外れ、森との境界あたりから、複数の、獣の唸り声が、響いてきた。
「観察眼……看破の真眼」
俺は、素早く、周囲を、確認した。
【解析中……】
【灰狼】
LV:15(複数)
「これは……」
以前なら、緊張感を、伴う相手だった。だが、今の俺にとっては、決して、脅威ではない、レベルだった。
「皆さん、良い機会です。一緒に、対応してみましょう」
俺の言葉に、新人たちは、緊張した表情を、見せた。
「え、俺たちも、ですか……」
「はい。俺たちが、しっかり、フォローします。安心してください」
灰狼の群れが、姿を、現した。新人たちは、明らかに、動揺していた。
「落ち着いて。観察眼で、まず、相手の情報を、確認してみてください」
俺の指示に、新人の一人が、震える手で、スキルを、発動させた。
「弱点、喉元……!」
「その通りです。狙う場所が、分かれば、あとは、冷静に、動くだけです」
俺は、あえて、自分から、攻撃することを、控え、新人たちの、動きを、見守った。
「タクトさん、後方から、援護を」
「はい」
タクトが、盾を、構えながら、新人たちの、後方支援に、回った。
一人の新人が、震えながらも、剣を、構え、灰狼へと、踏み込んだ。一撃は、浅かったが、確かに、当たった。
「やった……!」
「油断しないで。もう一撃、いきましょう」
ユイの声に、新人は、頷き、追撃を、加えた。
【灰狼を討伐しました】
【討伐経験値を獲得しました】経験値:+5
新人にとっては、大きな一歩だった。
俺自身も、危険な場面に、限っては、援護に、入った。
「危ない、そっちは、俺が!」
新人の一人が、体勢を崩した瞬間、俺は、風纏で、瞬時に、間に、割り込んだ。
「風刃!」
俺の攻撃魔法が、迫っていた灰狼を、正確に、退けた。
【灰狼を討伐しました】
【討伐経験値を獲得しました】経験値:+8
「ありがとう、ございます……!」
新人が、震える声で、礼を、言った。
「大丈夫です。慣れない、うちは、こんなものです」
戦闘が、一段落すると、俺たちは、新人たちと共に、無事を、確認し合った。
「皆さん、よく、頑張りました」
俺の言葉に、新人たちは、それぞれ、達成感の滲んだ、表情を、見せていた。
「あの……最後に、一つ、聞いてもいいですか」
先ほどの、若い青年が、恐る恐る、尋ねてきた。
「はい、なんでしょう」
「リョウさんは、あの、討伐で、経験値を、稼ぐこと、あんまり、しないって、聞いたんですけど……本当ですか」
その問いに、俺は、少し、考えてから、答えた。
「はい、本当です。でも――今の、この世界なら、皆さんは、そこまで、無理に、こだわらなくても、いいと、思います」
「どういう、意味ですか」
「昔は、成長経験値の効率が、すごく、悪かったんです。だから、俺は、あえて、そっちを、選び続けました。でも、今は、システムが、変わって、討伐に、頼らなくても、十分、成長できるように、なってます」
俺の言葉に、青年は、少し、考え込んだ。
「じゃあ、俺は、自分で、決めていいってことですか。討伐するかどうか」
「はい。その選択が、できるってことが、この世界の、一番、大きく変わったところだと、俺は、思ってます」
俺の言葉に、青年は、深く、頷いた。
「なんか、少し、分かった気がします」
依頼を、終え、俺たちは、ギルドへと、戻った。
【依頼達成】
新人巡礼者の護衛・育成
報酬を獲得しました
・成長経験値:+300
・銀貨:50枚
・名声:+30
「これで、最後の、依頼、終わりましたね」
ユイの言葉に、俺は、頷いた。
「はい。誰かに、何かを、伝えられたっていうのも、良い、経験でした」
「リョウさんらしい、締めくくりでしたね」
タクトの言葉に、俺は、少し、照れくさくなった。
「そうかもしれません」
夕暮れの、帝都を、俺たちは、静かに、歩いた。この街での、最後の一日が、確かな、余韻とともに、終わろうとしていた。
「明日、始まりの村に、向かいましょうか」
俺の提案に、皆が、頷いた。俺たちの、この長い、長い旅の、最後の、区切りへと、俺たちは、確かな足取りで、向かい始めていた。
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【ステータス】
名前:リョウ
LV:49
HP:318/318 MP:222/222
STR:200 VIT:167
AGI:193 INT:125
所持金:銀貨232枚(+50)
名声:1,620(+30)
満腹度:60/100
次のレベルまで:8,500/53,500
【冒険者ランク】
A
【装備】
胴:砂塵避けの軽装ローブ
武器:嵐風の双牙
足:革のブーツ
装飾:魔力の指輪
腕:風霊の腕輪
携帯品:長期保存食・船上用軽量ブーツ(ユイ)・耐水加工の籠手
【所持スキル】
・痛覚遮断
・看破の真眼
・植物知識・中級
・木工の心得・初級
・調合の心得・初級
・回復魔法・上級
・回避の心得・上級
・風纏・中級
・身体強化・中級
・文献解読・初級
・並列詠唱・上級
・対人戦の心得・初級
・灼熱耐性・初級
・風刃・初級
・調停の心得・初級
【称号】
・一線を越えた者
・世界の歪みを正した者
・簒奪者
・世界の選択者
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
新人指導、そして、小さな戦闘。
教える側になった、リョウたちの成長を感じる回でした。
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