第六十五話 選んだ場所
第六十五話です。
どうぞよろしくお願いします。
気づくと、俺たちは、あの、境界領域に向かう前に乗っていた、小型のボートの上に、戻っていた。
「戻って、こられたんですね」
ユイの言葉に、俺は、頷いた。遠くに、ノーラの船が、俺たちを、待っているのが、見えた。
船に、乗り込むと、ノーラが、驚いたように、俺たちを、迎えた。
「顔つき、随分、変わったな。何が、あったんだ」
「色々、ありました。詳しくは、また、道中で」
俺の言葉に、ノーラは、豪快に、笑った。
「まあいい。とにかく、無事で、良かった」
帰りの航海は、行きとは、まるで違う、穏やかなものだった。海棲生物の襲撃も、まるで、嘘のように、なくなっていた。
「システムが、落ち着いてきた、証拠かもしれませんね」
セリアの言葉に、俺は、頷いた。
数日後、俺たちは、ラシャールの港に、帰り着いた。サーラが、名残惜しそうに、俺たちを、見送った。
「この続きの、調査は、私が、責任持って、進めるわ。また、何か、分かったら、必ず、連絡する」
「ありがとうございます、サーラさん」
俺たちは、固い握手を、交わした。
セリアも、帝都へと、戻ることになった。
「これから、Elysiumの、再構築プロセスが、本格的に、始まります。私も、その、最前線で、力を、尽くします」
「よろしくお願いします」
俺の言葉に、セリアは、微笑んだ。
「あなたたちの、選択、本当に、誇らしく思います」
カレナを経て、俺たちは、再び、始まりの村へと、帰り着いた。ガラムが、俺たちの姿を見るなり、豪快に、笑った。
「おお、無事に、帰ってきたか! それに――」
ガラムは、俺たちのステータスを見て、目を、丸くした。
「Aランク、だと……!? とんでもねえことに、なってやがるな」
俺は、これまでの経緯を、簡潔に、報告した。ガラムは、深く、頷いた。
「そうか……。お前さんたちの、選択が、この世界の、これからを、決めたんだな」
その日の夜、俺は、久しぶりに、ログアウトすることにした。
――目を開けると、そこは、見慣れた、病室だった。
「稜」
母が、俺の目覚めに、気づき、駆け寄ってきた。その表情には、以前にも増して、確かな、明るさが、あった。
「母さん、どうしたの」
「先生から、正式な、報告が、あったの」
そこへ、佐伯先生が、病室に、入ってきた。
「稜くん、良い知らせだ」
先生は、深く、息を吸って、続けた。
「君の、腫瘍マーカーの数値は、ここ最近、劇的な、改善を、見せている。医療チーム全体で、慎重に、検討した結果――」
先生は、一度、言葉を、切った。
「余命宣告を、正式に、撤回する。今後は、通常の、治療計画に、移行できると、判断した」
その言葉に、俺は、しばらく、動けなかった。
「本当、ですか……」
「ああ。もちろん、油断は、できない。定期的な、経過観察は、必要だ。だが――君は、間違いなく、その、"三十日"という、宣告を、乗り越えたんだ」
その瞬間、俺の中で、これまでの、全ての旅路が、鮮明に、蘇ってきた。
始まりの村での、初めてのログイン。銀葉草の採取。ミラとの出会い。ユイとの出会い、カレナでの日々。帝都での、真実との対峙。異国での、大きな決断。そして、境界領域での、最後の選択。
「母さん」
俺は、震える声で、母に、呼びかけた。
「ここまで、来られたのは、母さんが、ずっと、支えてくれたから」
母は、涙を、堪えきれない様子で、俺の手を、強く、握った。
「よく、頑張ったわね、稜」
俺は、その言葉に、深く、頷いた。
しばらくして、俺は、再び、ログインの、準備を、整えた。
「まだ、あちらで、やることが、あるの?」
母の問いに、俺は、頷いた。
「うん。この世界は、まだ、再構築の、途中だから。仲間たちと、最後まで、見届けたいんだ」
「分かったわ。行ってらっしゃい」
母の言葉に、俺は、微笑んだ。
「行ってきます」
――目を開けると、そこは、始まりの村の、宿の一室だった。
「おかえりなさい」
ミラの声に、俺は、深く、頷いた。
「ただいま、です」
一階に降りると、ユイ、タクト、クロトが、俺の様子を、じっと、見つめていた。
「リョウさん……」
ユイの問いに、俺は、静かに、しかし、確かに、笑った。
「余命宣告、撤回されました」
その言葉に、皆が、しばらく、言葉を、失ったあと――弾けるように、歓声を、上げた。
「本当に、良かった……!」
ユイが、目に、涙を浮かべながら、俺の手を、握った。
「やりましたね、リョウさん!」
タクトも、興奮した様子で、俺の肩を、叩いた。
「お前らしいよ。奪わない道を、貫いて、こんな結果、出すんだからな」
クロトの言葉に、俺は、静かに、頷いた。
「皆さんが、いてくれたから、ここまで、来られました」
俺の言葉に、皆が、それぞれ、確かな、感慨に、浸っていた。
窓の外、始まりの村の夜が、これまでで、最も、穏やかな、静けさに、包まれていた。
奪わずに生きる道を、俺は、選び続けてきた。時には、その一線を、越えることも、あった。だが、その全ての選択が、確かに、今の、この瞬間へと、繋がっていた。
三十日という、当初の、余命宣告。その数字は今、俺の中で、単なる、過去の記憶へと、変わろうとしていた。
「これから、どうしましょうか」
ユイの問いに、俺は、少し、考えてから、答えた。
「まだ、この世界には、知らないことが、たくさんあります。Elysiumの、再構築が、これから、どう進んでいくのか。それを、見届けたいです」
俺の言葉に、皆が、それぞれ、力強く、頷いた。
住人と巡礼者、ゲームと現実、その、曖昧になっていく境界を、俺たちは、確かに、生き抜いた。
だが、この物語は、まだ、その先へと、続いていく。奪わない道を、選び続けた、一人の青年の、旅は――まだ、終わらない。
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【ステータス】
名前:リョウ
LV:49
HP:318/318 MP:222/222
STR:200 VIT:167
AGI:193 INT:125
延命ポイント(LP):31.4日分(現実の余命宣告、正式撤回)
所持金:銀貨182枚
名声:1,590
満腹度:72/100
次のレベルまで:8,200/53,500
【冒険者ランク】
A
【装備】
胴:砂塵避けの軽装ローブ
武器:嵐風の双牙
足:革のブーツ
装飾:魔力の指輪
腕:風霊の腕輪
携帯品:長期保存食・船上用軽量ブーツ(ユイ)・耐水加工の籠手
【所持スキル】
・痛覚遮断
・看破の真眼
・植物知識・中級
・木工の心得・初級
・調合の心得・初級
・回復魔法・上級
・回避の心得・上級
・風纏・中級
・身体強化・中級
・文献解読・初級
・並列詠唱・上級
・対人戦の心得・初級
・灼熱耐性・初級
・風刃・初級
・調停の心得・初級
【称号】
・一線を越えた者
・世界の歪みを正した者
・簒奪者
・世界の選択者
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
第4章「境界線の向こう側」、これにて完結です。
そして――余命宣告、撤回されました。
長らくお付き合いいただき、ありがとうございました。
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