第六十四話 境界の奥
第六十四話です。
どうぞよろしくお願いします。
視界を覆っていた白い光が、少しずつ、収まっていく。
俺たちは、気づくと、これまで見た、どの場所とも違う、無数の光の粒子が、緩やかに、流れ続ける、広大な空間に、立っていた。
「ここが……」
サーラが、圧倒されたように、周囲を、見渡した。
「観察眼……看破の真眼」
俺は、慎重に、この場所を、確認した。
【解析中……】
【境界領域・中枢】
反応:Elysium全システムとの、直接接続点
「ここが、システム全体の、根幹……」
俺の呟きに、セリアが、緊張した表情で、頷いた。
「これほどの場所だとは……」
奥へと進むと、俺たちは、巨大な、光の柱を、見つけた。その中心に、人間の形をした、しかし、明らかに、人間ではない、存在が、静かに、佇んでいた。
「よく、ここまで、辿り着いた」
その声は、以前、対峙した、管理AIの声と、どこか、似ていた。だが、より、深く、より、複雑な、響きを、持っていた。
「あなたは……」
俺の問いに、その存在は、静かに、答えた。
「私は、Elysiumというシステムそのものの、根幹意識。お前たちが、"始まりの記憶"で見た、創設者たちの、理念そのものが、長い年月をかけて、一つの、意識として、結晶化した存在だ」
「システムそのもの、というのは……」
「創設理念の公開、そして、それに伴う、様々な変化――それらは全て、私自身が、進めている、"再定義"の、一部だ」
その説明に、俺は、深く、考え込んだ。
「なぜ、そんなことを……」
俺の問いに、根幹意識は、静かに、答えた。
「Elysiumは、今、大きな、岐路に、立っている。現実世界での、存続の危機。そして、この世界の内部での、様々な、歪み。私は、それら全てを、根本から、見直す必要が、あると、判断した」
「見直した、結果、どうなるんですか」
俺の問いに、根幹意識は、少し、間を置いてから、答えた。
「二つの、道がある。一つは、このまま、システムを、より、公正で、透明性のあるものへと、再構築する道。もう一つは――」
その存在の表情が、僅かに、翳った。
「あまりにも、多くの、矛盾と、リスクを、抱え込んだ、このシステムそのものを、完全に、終わらせる道」
その言葉に、俺たちは、しばらく、言葉を、失った。
「終わらせるって……それは、Elysiumに、ログインしてる、全ての巡礼者たちに、影響が、出るってことですか」
ユイの、震える声に、根幹意識は、静かに、頷いた。
「その通りだ。もし、システムを、完全に、終了させれば、現実世界の患者たちは、通常の医療に、戻されることになる。それが、より、安全な選択なのか、それとも――」
俺は、その言葉に、強い、危機感を、覚えた。
「待ってください。もし、システムが、終わったら……俺みたいに、あちらでの、成長が、現実の回復に、繋がってた人たちは、どうなるんですか」
俺の問いに、根幹意識は、静かに、答えた。
「その、恩恵は、失われる。だが――安全性という点では、確実に、リスクが、減る」
「安全か、可能性か。どっちを、選ぶかってことですね」
クロトの言葉に、根幹意識は、頷いた。
「その通りだ。だからこそ、私は、この、最終的な判断を、お前たちに、委ねたいと、思っている」
その言葉に、俺は、思わず、目を、見開いた。
「俺たちに……?」
「お前たちは、この世界で、誰よりも、深く、その矛盾と、可能性の、両方に、向き合ってきた。奪わない道を、選び続けた者。奪う道から、考え直した者。この世界の、裏側の真実を、暴いた者たち」
根幹意識は、静かに、俺たちを、見渡した。
「お前たちの、答えを、聞かせてほしい」
俺は、ユイ、タクト、クロト、サーラ、セリアと、それぞれ、視線を、交わした。全員の目に、確かな、覚悟が、宿っていた。
「俺は……」
俺は、静かに、口を、開いた。
「終わらせるべきじゃないと、思います」
「理由を、聞かせてくれ」
根幹意識の問いに、俺は、はっきりと、答えた。
「確かに、この世界には、たくさんの、矛盾があります。奪うか、削られるか。そんな、シビアなルールが、時に、悪意ある形で、利用されることも、ありました。でも――」
俺は、これまでの旅を、思い返しながら、続けた。
「俺は、この世界で、たくさんの、大切な出会いを、経験しました。ユイさん、タクトさん、クロト、サーラさん、セリアさん。ライアスさんと、フィリアさん。皆、それぞれの事情を、抱えながら、必死に、生きようとしてました」
俺は、深く、息を吸った。
「矛盾があるからって、可能性ごと、切り捨てるのは、違うと思います。俺は、この世界を、より良く、変えていく道を、選びたいです」
俺の言葉に、ユイが、頷いた。
「私も、同じ気持ちです。この世界がなければ、私は、リョウさんにも、皆にも、出会えませんでした」
「俺も、賛成です」
タクトの言葉に、続き、クロトも、頷いた。
「討伐一辺倒だった俺も、この世界で、色々、考え直すことが、できた。まだ、終わらせるには、早い」
セリアも、静かに、口を開いた。
「私自身が、この世界に、救われた一人です。その可能性を、信じたいと、思います」
サーラが、最後に、微笑んだ。
「私は、この世界の、まだ見ぬ真実を、もっと、知りたいです」
全員の答えを聞き、根幹意識は、しばらく、沈黙していた。
「分かった……。お前たちの、答えを、尊重しよう」
その言葉とともに、周囲の光が、大きく、強さを、増していった。
「これより、Elysiumは、"再定義"の、最終段階へと、移行する。より、公正で、透明性のある、しかし――確かな、可能性を、残した、世界へと」
視界に、これまで見たことのない、大規模な、システム通知が、浮かび上がり始めた。
【最終決定】
Elysium、再構築プロセスを、実行します
巡礼者の皆さんへ:
この選択に、深く、感謝します
「それと――」
根幹意識が、俺を、見つめた。
「お前たちの、この旅路そのものが、私にとって、大きな、指標となった。感謝する」
その言葉とともに、根幹意識の姿が、静かに、光の中へと、溶けていった。
視界の端に、新しい通知が、浮かんだ。
【特別功績が認定されました】
名声:+500
冒険者ランクが上昇しました
B → A
【称号「世界の選択者」を獲得】
その、通知の重みに、俺は、しばらく、動けなかった。
「Aランク……」
タクトが、震える声で、呟いた。
「本当に、ここまで、来たんですね」
ユイの言葉に、俺は、深く、頷いた。
周囲の空間が、少しずつ、収束を、始めていた。
「戻る、時間みたいですね」
俺の言葉に、皆が、頷いた。
視界が、再び、白く、染まっていく。俺たちの、この長い、長い旅――その、一つの、大きな結末に、俺たちは、確かに、辿り着いていた。
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【ステータス】
名前:リョウ
LV:49
HP:318/318 MP:222/222
STR:200 VIT:167
AGI:193 INT:125
延命ポイント(LP):31.4日分
所持金:銀貨182枚
名声:1,590(+500)
満腹度:42/100
次のレベルまで:8,200/53,500
【冒険者ランク】
A(NEW、B → A)
【装備】
胴:砂塵避けの軽装ローブ
武器:嵐風の双牙
足:革のブーツ
装飾:魔力の指輪
腕:風霊の腕輪
携帯品:長期保存食・船上用軽量ブーツ(ユイ)・耐水加工の籠手
【所持スキル】
・痛覚遮断
・看破の真眼
・植物知識・中級
・木工の心得・初級
・調合の心得・初級
・回復魔法・上級
・回避の心得・上級
・風纏・中級
・身体強化・中級
・文献解読・初級
・並列詠唱・上級
・対人戦の心得・初級
・灼熱耐性・初級
・風刃・初級
・調停の心得・初級
【称号】
・一線を越えた者
・世界の歪みを正した者
・簒奪者
・世界の選択者(NEW)
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
Elysiumの、根幹意識との対話。
そして――この世界の、未来を、託された。
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