第五十六話 クロトの誘い
第五十六話です。
どうぞよろしくお願いします。
宿の食堂で、俺たちは、久しぶりに、クロトを交えて、席を囲んでいた。
「随分、レベル、上がったな」
クロトが、俺のステータスを、値踏みするように、見た。
「お前も、成長してるだろ」
俺の言葉に、クロトは、少し、複雑な表情を、見せた。
「まあな。だが――正直、お前らの噂を聞くたびに、置いていかれてる気分に、なってたよ」
その言葉には、以前のような、純粋な負けん気とは、少し違う、翳りが、感じられた。
「何か、あったのか」
俺の問いに、クロトは、少し、間を置いてから、答えた。
「あの、創設理念の公開があってから、俺のパーティ――討伐特化で、組んでたやつらが、揉め始めてな」
「揉めた、というのは」
「LPの総量制について、改めて、詳しく、知ったんだ。俺たちが、日々、稼いでたLP、実は、誰かの、確かな時間を、削って、成り立ってたって」
クロトの声には、これまで、聞いたことのない、確かな苦悩が、滲んでいた。
「今更、当たり前のことなんだけどな。頭では、分かってたつもりだった。でも――具体的な、仕組みを、知ってしまうと、また、違う重さが、あった」
その言葉に、俺は、深く、頷いた。以前、自分が、初めて討伐に踏み込んだ時の感覚を、思い出した。
「それで、パーティは、どうなったんだ」
「解散した。俺以外の、全員が、討伐を、やめるって、言い出してな」
「クロトは、どうするんだ」
俺の問いに、クロトは、しばらく、黙り込んだ。
「正直、まだ、迷ってる。効率を、考えれば、討伐が、一番、早い。でも――」
クロトは、俺を、まっすぐに、見つめた。
「お前の、あのやり方、正直、ずっと、頭の片隅にあった。奪わずに、生きる道。俺には、選べないと、思ってたけど」
「今なら、選べるかもしれないと?」
俺の問いに、クロトは、小さく、笑った。
「分からん。だから――お前に、頼みが、ある」
「頼み?」
「俺と、一緒に、やってみないか。奪わない道と、奪う道、両方を、知ってる者同士で、この先、どうしていくべきか、答えを、探したい」
その申し出に、俺は、少し、驚きながらも、確かな、嬉しさを、感じた。
「もちろん、いいよ」
俺の答えに、クロトは、ほっとしたように、表情を、緩めた。
「ありがとよ。それと――もう一つ、話が、あるんだ」
クロトは、声を、少し、潜めた。
「実は、この村の周辺で、奇妙な、噂を、聞いた」
「奇妙な噂?」
「ああ。北の森の、さらに奥――以前は、誰も、足を踏み入れなかった一帯に、最近、これまで見たことのない、異質な反応が、あるらしい」
その言葉に、俺は、看破の瞳を、思わず、発動させたくなる、衝動を、覚えた。
「異質な反応、というのは」
「詳しくは、俺にも、分からん。ただ、あの、"始まりの記憶"の一件と、何か、関係があるんじゃないかって、噂されてる」
その可能性に、俺たちは、顔を、見合わせた。
「行ってみましょうか」
俺の提案に、ユイとタクトが、頷いた。
「私も、行くぜ。ここで、腐ってても、始まらない」
クロトの言葉に、俺は、頷いた。
翌朝、俺たちは、クロトを加えた、新しい編成で、北の森――以前、木材伐採の依頼で訪れた場所よりも、さらに奥へと、足を、踏み入れた。
「観察眼……看破の瞳」
俺は、慎重に、周囲を、確認した。
【解析中……】
【周辺環境】
生体反応:異常検出(未確認種)
「かなり、奥まで、来ましたね」
タクトの呟きに、俺は、頷いた。木々の密度が、次第に、増していく。以前は、決して、踏み込むことのなかった、深い森の、さらに奥へと。
しばらく進むと、俺たちは、これまで見たことのない、奇妙な、光景に、出くわした。木々が、まるで、時間が止まったかのように、淡い光を、纏っていた。
「これは……」
サーラがいれば、興味を持ちそうな光景だと、俺は、思った。
「観察眼……看破の瞳」
【解析中……】
【時間凍結領域(推定)】
反応:システムエラー相当の、異常空間
「システムエラー……?」
俺の呟きに、クロトが、緊張した表情を、見せた。
「ゲームの、バグ、みたいなもんか」
「多分、それとは、違う気がします。もっと、意図的な、何かのように、感じます」
俺たちが、慎重に、進んでいくと、光の空間の中心に、一つの、人影が、浮かび上がっていた。
【解析中……】
【???】LV:測定不能
「これは……」
その人影は、俺たちに、気づいたのか、ゆっくりと、こちらを、向いた。フードの奥から覗く、その顔立ちには、俺は、確かな、既視感を、覚えていた。
────────────────────
【ステータス】
名前:リョウ
LV:42
HP:248/248 MP:172/172
STR:160 VIT:132
AGI:145 INT:98
延命ポイント(LP):30.4日分
所持金:銀貨94枚
名声:1,010
満腹度:50/100
次のレベルまで:1,800/33,000
【冒険者ランク】
B
【装備】
胴:砂塵避けの軽装ローブ
武器:嵐風の双牙
足:革のブーツ
装飾:魔力の指輪
携帯品:長期保存食・船上用軽量ブーツ(ユイ)・耐水加工の籠手
【所持スキル】
・痛覚遮断
・看破の瞳
・植物知識・中級
・木工の心得・初級
・調合の心得・初級
・回復魔法・上級
・回避の心得・上級
・風纏・中級
・身体強化・中級
・文献解読・初級
・並列詠唱・上級
・対人戦の心得・初級
・灼熱耐性・初級
・風刃・初級
・調停の心得・初級
【称号】
・一線を越えた者
・世界の歪みを正した者
・簒奪者
────────────────────
最後まで読んでいただきありがとうございました。
クロトの葛藤、そして、森の奥に眠る、謎の存在。
ブックマーク・評価、応援よろしくお願いします!




